ミラノ大聖堂(ドゥオーモ)- 内部や屋上テラスの見どころを徹底解説
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本記事では、ミラノのシンボルであるドゥオーモの内部やテラスの見どころについて徹底解説いたします。内外の装飾や彫刻はもちろん、ステンドグラス、祭壇、尖塔などについても豊富な写真を交えて詳しく紹介いたします。
ドゥオーモ 大聖堂とは
ミラノのドゥオーモ大聖堂は聖母マリアに捧げられた世界最大級のゴシック建築です。
総面積は1万1700㎡(全長157m、幅92m、高さ108m)もあり、ゴシック建築の大聖堂としては、バチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂に次ぐ大きさです。だいたい東京ドームの4分の1ぐらいの大きさといえば想像しやすいと思います。
建築は1386年にミラノの領主「ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティ」と、大司教「アントーニオ・ダ・サルッツォ」の号令で着工。完成したのは、ナポレオン最盛期の1813年の事でした。実に500年近くの歳月が費やされています。
かつてミラノの人々は、決して終わらないものを指して「ドゥオーモの建設の様に長い」と言ったそうです。
2004年から2008年にかけては、長年のダメージや変色を修繕する大改修工事も行われ、現在の美しい姿を取り戻しました。
現在のドゥオーモでは、大聖堂の内部見学はもちろん、テラスに登って彫刻や景観を楽しむ事ができます。
観光の基本情報
営業時間 |
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入場料金 | ()内はオンライン予約した場合の料金です。
※1 テラス以外のドゥオーモ関連施設に入場可能 |
次項より、外観とファサードの見どころから順に大聖堂内部やテラスの見どころについて詳しくご紹介していきます。チケット料金について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
ミラノ ドゥオーモのチケットを手っ取り早く日本語で予約したい方は「ミラノ:ドゥオーモ&屋上テラス 入場券」のページからチケット予約すれば、公式サイトよりも、4〜4.5ユーロの手数料で、「ドゥオーモ大聖堂内部」と「屋上テラス」、更に「ドゥオーモ博物館・サン ゴッタルド教会」に入場できるチケットが入手できます。エレベーターか階段を利用するかは選択可能です。
ファサードとブロンズの大扉
ミラノ大聖堂(ドゥオーモ)の西側にあるファサードは、ドゥオーモ広場に面して堂々と聳え立っています。ドゥオーモを正面に左手側に見えるのは「ヴィットリオ・エマヌエレ2世ガレリア」です。こちらも見事な建造物です。
ドゥオーモのファサード建設は、聖堂内部の装飾も手掛けた建築家「ペッレグリーノ・ティバルディ」の指揮の下で16世紀末に開始されます。しかし、彼が造る事ができたのはファサード下部のみでした。その後、数回にわたる設計案変更や中断を経て、最終的には建築家「カルロ・アマーティ」と「ジュゼッペ・ザノイア」が1813年に完成させました。
ファサードの建築材料である美しい白大理石は、マッジョーレ胡近くのカンドリヤ採掘場で採れたものが使用されています。当時は水路を通って大聖堂近くの港まで運ばれました。
カンドリヤの大理石は特有の美しい白色を表現できる反面、非常にデリケートな素材です。大気によって灰色に変色しやすく、劣化が進行すると粉々に壊れてしまいます。そのため、ドゥオーモの起源と共に発足した管理委員会によって継続的な管理と修復が行われています。
数世紀に渡るドゥオーモの建設プロジェクトには、多くの芸術家たちの技術の粋が結集されています。壁や柱は、歴代の名だたる彫刻家たちが手がけた詳細な彫刻群で埋め尽くされています。
ドゥオーモ全体には、聖書の人物、聖人、預言者など、約3500体もの彫刻が存在しています。
上下の写真の中央2体は建築用語で「テラモン」と呼ばれる男像柱で、他の装飾や柱を支える役割もかねています。テラモンの名は、ギリシャ神話に登場する英雄の名前に由来しています。
テラモンはドゥオーモの至る所にあるので、是非探してみてください。いろんなポーズで柱を支えているので非常に遊び心があって面白いです。
この西側のファサードにはブロンズ製の5つの扉があります。元々これらは木製の扉でした。1908年に真ん中の一枚がブロンズ製に取り替えられると、残りの4枚も1965年頃に取り替えられました。この扉の完成を持って、ドゥオーモ建設が完全に竣工したとする見方もあります。
扉は現在も大聖堂内への出入り口として利用されており、見学時も一番右手側の扉より入場します。
5つの扉で必見なのが一際巨大な中央扉です。
青銅製のドアの表面には、イタリアの彫刻家「ルドヴィーコ・ポリアーギ」が手掛けたレリーフがあります。作中では花や果物、動物をモチーフにして聖母マリアの生涯が彫られています。
こちらは扉に向かって左側中央のレリーフです。天に召されたキリストを後ろで支える聖母マリアの姿が表現されています。
逆側の中央には、聖母マリアの非常に有名なエピソードの一つ「聖母マリアの被昇天」も彫られています。
大聖堂外観の見どころは以上です。続いてファサードに向かって右端の入口(画像下)から大聖堂に入場します。次項では大聖堂内部の見どころを徹底解説致します。
屋上テラスの入場がセットになったチケットをお持ちの方は、テラスから直接大聖堂内に入場できるので、混雑を回避できます。ドゥオーモを見学するならテラスとセットでのチケット購入がお勧めです。この辺りの詳しい情報に関しては以下の記事で詳しく解説しております。
大聖堂内の見どころ
ミラノのドゥオーモは、5つに分かれる身廊、翼廊、後陣から成るラテン十字型の大聖堂です。一度に最大4万人を収容する事ができるそうです。
大聖堂の5つの身廊は、1年の週数と同じ52本の柱で隔てられ、天井はゴシック建築特有の交差リブヴォールトと尖頭アーチ(先端が尖ってるアーチ)で支えられています。
柱頭のニッチ(くぼみ部分)には、聖人や殉教者たちの彫刻が並びます。
中央身廊の高さは約45mと他の身廊よりもわずかに高く、100mの長さ(奥行き)があります。
聖堂内で最も広い中央身廊(画像上)の幅は、側廊(画像下)2つ分に相当します。
大理石の床は最初のファサードを設計した「ペッレグリーノ・ティバルディ」がデザインしたもので、貝や花がモチーフになっています。
素材はイタリア各地で採れる大理石を使用する拘り用で、カンドリヤ採掘場で採れる白大理石をベースに、バレンナの黒大理石やアレッツォの赤大理石などがはめ込まれています。この床の製作は1585年に着工しましたが、完成したのは300年以上後の20世紀初頭の事でした。
ざっと、大聖堂内の概要をご紹介しましたが、本当の見どころはここからです。まずは以下の聖堂内マップにて、見学ポイントを確認ください。
※ 画像をクリック頂くと堂内図をPDFファイルにてダウンロード頂けます。
大聖堂内の見学ポイントは他にもたくさんありますが、全てをご紹介するのは難しいので、上の聖堂内マップに記した見学ポイントのみ、右側側廊から反時計回りでご紹介していきます。地下階の見どころは最後にご紹介します。
アリベルト・ダ・ インティミアーノ大司教の棺と十字架像
大聖堂に入ってすぐ右手側には、1018年から1045年までミラノの支配者であった「アリベルト・ダ・インティミアーノ大司教」の十字架像と石棺があります。
十字架は初期ロマネスクの貴重な美術品で、元々はアリベルト本人がサンディオニージ修道院(1783年に取り壊し)に寄贈したものです。残念ながらこちらはレプリカで、本物は大聖堂付属博物館に展示されています。
マルコ・カレッリの石棺
"Duomo di Milano. La tomba di Marco Carelli" by Carlo Dell'Orto is licensed underCC BY 3.0
この石棺の中には、羊毛取引などで莫大な財を成した商人「マルコ・カレッリ」が埋葬されています。カレッリはこのドゥオーモ大聖堂に莫大な寄付を行った人物で、その金額はなんと3万5千ドゥカート(現在の価値で数億円)にも上ると言われています。もちろん、これ以上の寄付を行った人物は後にも先にも存在しません。カレッリは非宗教者ながら、多額の寄付によってこの場所に埋葬される特権を得ました。
ゴシック様式の見事な石棺は、フィリッピーノ・デリ・オルガニによって製作されました。また、傑作と言われる石棺の彫刻は、15世紀初期にサヴォイア伯国などで活躍した彫刻家「ヤコビーノ・ダ・トラダーテ」の工房によって製作されたものです。
聖母マリアの礼拝堂
ドゥオーモの翼廊北側にある「聖母マリアの礼拝堂」は、イタリアのバロック彫刻家「フランチェスコ・マリア・リッチーニ」によって1614年に設計されました。設計者のリッチーニは、ミラノの大司教「カルロ・ボッロメーオ」にその才能を見込まれ、16世紀中頃には主任建築家も務めた人物です。
礼拝堂の中央に置かれている彫像は、幼子イエスを抱く「聖母マリア像」です。18世紀の彫刻家「イーリア ヴィンチェンツォ ブッツィ」によって後年に制作されました。その下のバロック様式の祭壇は16世紀〜17世紀にかけてカラヴァッジョ出身の彫刻家「ファビオ・マンゴーネ」などが手がけたものです。
メデギーノの記念碑(霊廟)
メデギーノの記念碑は、メデギーノの名で知られる傭兵隊長「ジャン・ジャコモ・メディチ(上画像中央)」に捧げられた記念碑です。参考までに、メデギーノは「小さなメディチ」を意味する言葉ですが、フィレンツェのメディチ家とは一切関係ありません。
この記念碑は、ミラノ出身のローマ教皇「ピウス4世」が、兄のメデギーノに敬意を表して製作を依頼したものです。1560年から1563年にかけて彫刻家「レオーネ・レオーニ」が手掛けました。レオーニはヨーロッパを放浪しながら彫刻を手がけた芸術家として知られています。
記念碑の3体のブロンズ像のうち、中央を飾るのが「メデギーノ像」です。彼は左足が悪かったため、その部分がマントで覆われていますが、
向かって左側で鎧をまとう像は「戦闘」を、向かって右側の女性像は「平和」を象徴するシンボルとして置かれています。
これら三体のブロンズ像のポーズは、ミケランジェロの作品に強いインスピレーションを受けて制作されたと言われています。
聖ジョヴァンニ・ボーノの礼拝堂
18世紀初頭に造られたこの礼拝堂には、7世紀のミラノ司教「ジョヴァンニ・ボーノ」が祭られています。
中央の像は「ジョヴァンニ・ボーノ」自身ではなく、6世紀頃にミラノ司教たちをジェノバから帰還させたとされる聖人の像です。
本作は、1763年に彫刻家「エリア・ヴィンチェンツォ・ブッツィ」によって製作されました。
礼拝堂上部を飾るステンドグラスは、画家でステンドグラス作家だった「ジョヴァンニ・バッティスタ・ベルティーニ」によって1846年に製作されたものです。天井には浅浮彫りでジョヴァンニ・ボーノの生涯のエピソードが彫られています。
両脇に置かれている像は、守護天使と聖ミカエルです。
聖バルトロメオ像
この大聖堂で最も有名な作品の一つが袖廊(身廊と交差する横長の部分)も飾られている「聖バルトロメオ像」です。本作は、ルネサンス期のイタリア人彫刻家「マルコ・ダグラーテ」が1562年に手がけました。
この像は筋肉組織がむき出しになっているかの様に表現されています。
これは、モデルとなっている12使徒の一人「聖バルトロメオ」が、皮剥ぎの刑で殉教したとされる聖人だからです。肩から腰にかけて巻かれているのは、布ではなくバルトロメオの皮膚を表しています。
彫刻の土台には、作者がこの像の出来栄えを自負する一文「プラクシテレスにも劣らない」と刻まれています。
プラクシテレスは、紀元前4世紀に最も有名だったアッティカの彫刻家の事です。
内陣の主祭壇と聖なる釘
大聖堂の奥にある内陣(ドーム部分の下)には、1418年にローマ教皇「マルティヌス5世」に聖別された主祭壇があります。この主祭壇はドゥオーモの前身となった2つの教会のうちの一つ「サンタ・マリア・マッジョーレ教会」のものがそのまま利用されています。
さらに主祭壇の後ろには「聖体用祭壇」と呼ばれる小神殿の様な建物があります。この建築家「ペッレグリーノ」が手掛けた「聖体用祭壇」は、金メッキが施された8本の円柱で構成されています。内部には貴重な聖体が保管されているそうです。
左右に並ぶ彫像は向かって右側が「聖カルロ」、左側が「聖アンブロシウス」です。
続いて、祭壇の遥か頭上に視線を向けると、後陣ドームのアーチの合間に赤い光が見えます。
この赤い光は大聖堂の最も貴重な聖遺物の一つ「聖なる釘」の場所を示しています。聖なる釘はこのドゥオーモの前身である「サンタ・テクラ聖堂」に元々あったもので、テオドシウス皇帝から聖アンブロージョに寄進されたとされています。この場所に保管されたのは1461年以降です。
聖書では、キリストが磔刑に処せられた十字架と釘は、コンスタンティヌス帝の母である「聖ヘレナ」がエルサレムからローマ帝国に持ち帰ったとされています。参考までに下はバチカン市国のサンピエトロ大聖堂にある「聖ヘレナ」の彫像です。
毎年一度(9月ごろ)、「ニヴォラ」と呼ばれる雲型のゴンドラに乗った大司教が「聖なる釘」を取り出す儀式が行われます。たくさんの信者が見守る中で取り出された釘は主祭壇に置かれ3日間展示されるそうです。
2台のパイプオルガン
主祭壇の左右には木枠に金メッキが施された2台のパイプオルガンが向い合せに置かれています。このオルガンは1938年に復元されたもので、15,800本のパイプと120のストップ(オルガンの音色選択機構)を持つ、イタリアで最大のものです。世界でもドイツのパッサウにある聖シュテファン大聖堂に次いで2番目の大きさを誇っています。
パイプ左右の扉には聖書のエピソードが両面に描かれ、オルガンの下には聖歌隊席が設けられています。更に土台部分には薄肉彫りの美しい彫刻も施されています。
下の観光客と比較してみると、このパイプオルガンの巨大さが分かると思います。大聖堂のパイプオルガンは現在も使用されており、日曜のミサや典礼儀式の際などに利用されています。
ステンドグラス
ドゥオーモの側廊や後陣の大窓は色鮮やかなステンドグラスで飾られ、旧約聖書や新約聖書、聖母マリアのエピソードなどが描かれています。
本大聖堂のステンドグラスは、製作年にバラつきがあるのが特徴で、古いものだと15世紀〜16世紀まで遡ります。この時代のものは予め着色したガラスペーストをパズルの様に組み立てて製作されています。下はその内の一つで左側側廊の4番目の柱の間にある「冠を戴く4人の聖人のステンドグラス」です。
このステンドグラスは彫刻家の「ペッレグリーノ」が考案し、ドイツのガラス細工師が16世紀に製作したものです。拡大している部分は「石工の奇跡」と「改宗した4人の彫刻家の牢獄内での洗礼」という場面を描いたものです。本作は彫刻家の守護聖人に捧げられており、聖堂の職人さんたちへの敬意を表しています。
細い縦長タイプのステンドグラスのほとんどは、側廊に並ぶ礼拝堂や記念碑の上部を飾っています。
こちら(下画像)は正面ファサードの裏側部分にある2枚のステンドグラスになります。上方側のステンドグラスでは、三位一体の場面などが描かれています。ハンガリー出身のイラストレーター「ヤーノシュ・ハイナル(1913〜2010年)」が1950年に手がけました。
下側の美しいステンドグラスは、19世紀半ばにイタリアの画家で版画家の「ルイージ・サバテッリ」によって製作されました。作中では、聖母マリアの被昇天の場面が描かれてます。
19世紀以降のステンドグラスは、ガラスに直接描画する新技法(グリザイユ)によって、より短期間で鮮やかなステンドグラスが作れるようになりました。ただし、この技法は旧技法に比べると透明度が損なわれるという欠点もある様です。
そして、この大聖堂で最も美しいステンドグラスは後陣(再奥部)の大窓を飾る3枚です。写真では一番左側のステンドグラスが隠れてしまっております。
この3枚のステンドグラスは、元々15世紀につくられたものを新たに19世紀に作り直したものです。製作は、ステンドグラス作家のベルティーニと彼の息子らが手掛けました。
まずは「新約聖書」の物語が描かれている後陣右側のステンドグラスからご覧ください。
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続いて中央の「黙示録」が描かれたステンドグラスです。上の一部にだけ15世紀のオリジナルが残っているそうです。恐らく左上6枚の水色ぽっくなっている部分だと思います。
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この後陣中央のステンドグラスの上部には「正義の太陽」と呼ばれるステンドグラスも飾られています。この太陽はミラノの領主「ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティ」 家のシンボルでもあります。
最後は左側「旧約聖書」を描いたステンドグラスもご覧ください。
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本記事でご紹介するステンドグラスは以上ですが、大聖堂内には約40点ほどのステンドグラスが存在します。また、堂内にはステンドグラスのパーツ部分を説明するパネルボードもあるので、こちらも合わせて見学ください。
トリヴルツィオの大燭台
{{PD-US}} - image source by Albertomos(Wikimedia)
このブロンズ製の大燭台に関する文献や資料はほとんど残っておりません。確かな事は、12世紀の終わりから13世紀初期にかけて、とある金細工職人が製作し、16世紀半ばにドゥオーモの司祭長「ジョヴァンニ・バッティスタ・トリヴルツィオ」によって寄贈されたという事だけです。
燭台の高さは5メートル、幅は4メートルほどあり、支柱や枝の部分には宝石が散りばめられています。土台から支柱下部にかけては、植物のつるやぶどうで装飾され、聖書にまつわるエピソードなども彫られています。
聖アンブロシウスの礼拝堂
この礼拝堂はミラノの守護聖人「聖アンブロシウス」に捧げられています。アンブロシウスはミラノが西ローマ帝国の首都だった4世紀末にミラノ大司教だった人物です。西方の四大教会博士の一人にも数えられています。
礼拝堂の製作は、カルロ・ボッロメーオ(16世紀の大司教)の依頼によって彫刻家で建築家の「ペッレグリーノ・ティバルディ」が手がけました。
祭壇の中央を飾る絵画はウルビーノ出身の画家「フェデリコ・バロッチ」が1633年に手がけた「テオドシウスに苦行を課すアンブロシウス」です。
作中では、ローマ皇帝「テオドシウス1世」が「アンブロシウス」に懺悔し謝罪する姿が描かれています。この出来事は、390年にテオドシウス帝が行った大量虐殺(テッサロニカの虐殺)に対して、アンブロシウスが謝罪と懺悔を要求した事に起因しています。この謝罪は、皇帝(帝国)に対する教会の優位性を示す非常に有名なエピソードです。
聖カルロの地下聖堂(CRYPT OF ST. CHARLES)
後陣の右手側(南側)には地下への階段があります。この階段は2つの礼拝堂がある地下聖堂(クリプト)へと通じています。
地下聖堂に入場後、恐らく最初に目にするのが「聖カルロのスクローロ」と呼ばれる八角形の礼拝堂です。
この礼拝堂には、16世紀にミラノの大司教だった「カルロ・ボッロメーオ(聖カルロ)」の遺骸が納められています。1606年にイタリアのバロック建築家「フランチェスコ・マリア・リッチーニ」の設計によって造られました。
"Interior of the Duomo (Milan)" by Darafsh is licensed underCC BY 3.0
堂内の大理石の壁にはボッロメーオ家の紋章などが描かれ、中央には天然のクリスタルと銀で製作された聖カルロの棺が置かれています。棺の一部は透明になっており、透けた部分から聖カルロの遺骸を見る事ができます。
「聖カルロのスクローロ」 の対面には、16世紀初期に「ペッレグリーノ・ティバルディ」の設計で造られた「円形の礼拝堂」があります。天井は漆喰に金メッキが施され、8本の大理石に囲まれた祭壇には、殉教した聖人たちの遺骨が納められています。
この地下聖堂への入場は無料ですが、一切の撮影は禁止となっています。また、地下聖堂の営業は大聖堂入場よりも遅い午前11時以降(曜日によってやや異なる)となりますのでご注意ください。
考古学エリア(サン・ジョヴァンニ・アッレ・フォンティ洗礼堂)
大聖堂の4m地下にある考古学エリアでは、4世紀後半に建てられた「サン・ジョヴァンニ・アッレ・フォンティ洗礼堂」の遺跡を見学する事ができます。
元々、この洗礼堂は14世紀に今のミラノ大聖堂を建てるために取り壊され、数世紀に渡って完全に忘れさられていました。1961年にミラノの地下鉄工事中に偶然に発掘されたそうです。
考古学エリアへは、大聖堂の入口付近ににある階段から降りる事ができます。「AREA ARCHEOLOGICA(考古学エリア)」と書かれた案内板(画像下)が目印です。
入場は有料となりますので、CULTURE PASS(カルチャーパス)やDUOMO PASS(ドゥオーモパス)など、考古学エリアへの入場を含むチケットの購入が必要です。チケットは自分で読み取り機にかざして入場します。読み取り機の奥にある階段を降りると見学エリアに出る事ができます。
遺跡内では、ローマ時代の貴重な壁画や棺、モザイク画、井戸などを見学する事ができます。
4世紀後半には、ローマ帝国の神学者「アウグスティヌス」が、この場所で「聖アンブロジウス」に洗礼を受けたそうです。
エリアの一部では、遺跡で発掘されたローマ時代の貴重な品々も展示されています。
屋上テラス
ドゥオーモで大聖堂内と共に必見なのが屋上テラスです。屋上テラスは19世紀より一般公開されるようになり、中央テラスとその両側の堀の部分を歩く事ができます。
屋上テラスは一部立ち入れないエリアもありますが、一般公開されているテラスとしては世界最大級の面積8000㎡を誇ります。
テラスの見学エリアは歩道も整備されており、ほぼ平坦な道を歩きながら見学する事ができます。
テラスの順路はメインの中央テラスへと続いており、途中の通路では様々な彫刻や装飾などを間近で見る事ができます。全部で3500体ある彫刻は全てデザインが異なっており本当に面白いです。
下画像の様な遊び心ある彫刻もあります。
詳細に彫り込まれた装飾は至る所にあり、迫力のある写真がたくさん撮影できます。
下の様な先端部分の飾り付けを「ファルコナトゥーラ(falconatura)」と呼ぶそうです。知識不足で恐縮ですが、このミラノ大聖堂以外では聞いたことがない専門用語です。
続いてこちらは、多くのゴシック建築に見られる「フライング・バットレス」と言う外壁補強の柱です。
屋外に張り出すかたちで斜めに設置されている柱全体が「フライング・バットレス」です。この補強が考えられる以前の建築(ロマネスク建築など)は耐久性の都合上、壁を分厚くせざるを得ず、ステンドグラスをはめ込む事は不可能でした。
テラスの見どころはまだまだあります。以下より、ここだけは必見というテラスの見学ポイントをピックアップしてご紹介致します。
135本の尖塔
屋上テラスでは、無数の尖塔が並ぶ圧巻の光景を間近で見る事ができます。尖塔は全部で135本あり、全ての尖塔上部は異なる彫像で飾られています。
最も古いのが1395~1404年にかけて制作された「カレッリの尖塔(画像下)」と呼ばれるもので、聖堂内に祀られている「マルコ・カレッリの石棺」の莫大な寄付によって建てられました。
尖塔上部の彫刻は、ジョージ・ソラーリ作の矛槍を手にする「聖ジョルジュ」です。写真だと見えませんが、顔は初代ミラノ公「ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティ」がモデルになっています。
尖塔の多くは、16世紀以降に作られたもので、19世紀製のものが最も多いです。
全ての彫像はまるで外敵から大聖堂を守る様に外側を向いて配置されています。
150体のガーゴイル
ドゥオーモ外観の装飾の中でも一際面白いのが、空想上の動物をモチーフにした「ガーゴイル」と呼ばれる排水溝です。
ガーゴイルは雨水を外部に排出するためのもので、全部で150体も設置されています。どれも職人たちの遊び心が詰まった面白いものばかりです。中には天使ををモチーフにしたタイプもあります。
中央テラスと黄金の聖母マリア像
屋上テラス見学のハイライトと言えるのがこの「中央テラス」の見学です。
「中央テラス」へのアクセスは、屋上に出た後「TERRAZZE(ROOFTOPS)」と書かれた案内板(画像下)に従っていけばたどり着けます。基本はほぼ一方向です。
下画像の階段を上りきった所が中央テラスです。
中央テラスにの面積は1500㎡と屋上の大部分を占めています。歩行可能エリアは傾斜になっていますが、小階段の様な段差によって滑らない様に工夫されています。ただし、女性の方はハイヒールで上がるのは避けた方が良いかもしれません。
中央テラスの左右には見事なシンメトリーで尖塔が並んでいます。奥に一際高くそびえる「グリアデルティブリオ(guglia del tiburio)」と呼ばれる大尖塔は、1769年にバロック彫刻家の「フランチェスコ・クローチェ」によって建造されました。
そして大尖塔の上を飾るのがこのドゥオーモのシンボルでもある「黄金の聖母マリア像」です。両手を広げて被昇天する姿が表現されています。
"Madonnina - Duomo" by © José Luiz Bernardes Ribeiro is licensed underCC BY 3.0
「マドンニーナ」の名で親しまれているこの黄金像は、高さ約4メートル、重さは700キロ以上もあります。ドゥオーモの高さはこの像の頂点までを含めて108mとされています。かつてはこのマリア像よりも高い建造物を建てる事は禁止されていました。
マリア像は1773年にイタリアの彫刻家「ジュゼッペ・ペレゴ」によって制作され、翌年に尖塔の上に置かれました。表面にほどこされた金箔は30年から40年ごとに張り替える必要があり、右手に持つ矛槍は避雷針の役目も担っているそうです。
残念ながら鉄製だった「マリア像」のオリジナルは錆びたため、1967年に付属の博物館に移設されました。現在のものは完全な鉄製ではなくステンレススチールが素材に使用されています。
テラスの出口
中央テラス見学後は「EXIT(USCITA)」か「CATTEDRAL(大聖堂)」と書かれた案内に従って下り専用の階段を降りていきます。
階段を降りきると、ドゥオーモの大聖堂内部に出る事ができます。本記事では「大聖堂内部」「テラス」の順で見どころをご紹介しましたが、本来は「テラス」「大聖堂内部」の順で見学するのが順路になります。
テラスへの入場は「DUOMO PASS LIFT(20ユーロ)」などのチケットを購入すれば可能です。また、階段とエレベーターのどちらで登るかによって料金も変わってきます。体力を使う階段のチケット「DUOMO PASS STAIRS(15ユーロ)」の方が料金は安いですが、屋上テラスまでは251段の階段があります。
チケット料金や予約方法については別記事の「ミラノ ドゥオーモ チケット予約・購入方法を徹底解説」にて詳しく解説しております。
まとめ
本記事では「大聖堂内部」と「テラス」を中心に見どころをご紹介させて頂きましたが、ドゥオーモには以下の通り複数の関連施設が存在しています。
- ・ドゥオーモ(大聖堂)-(CATHEDRAL)
- ・考古学エリア(洗礼堂)-(ARCHAEOLOGICAL AREA)
- ・ドゥオーモ博物館 -(DUOMO MUSEUM)
- ・サン ゴッタルド教会 -(CHURCH OF SAN GOTTARDO)
- ・屋上テラス-(ROOFTOPS)
見学時間に余裕のある方は「ドゥオーモ博物館」と「サン ゴッタルド教会」も是非見学してみてください。この2つの施設は館内で繋がっているので一連の流れで見学する事ができます。ドゥオーモ関連施設の位置関係や入り口、チケット売り場などは以下の地図を参考にしてください。
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