サグラダファミリアの塔を完全攻略 – 登り方、見学方法、景観、完成図
本記事ではサグラダファミリア 訪問時に、「生誕のファサードの塔」か「受難のファサードの塔」のどちらに登るべきかお悩みの方に向けて、それぞれの塔からの景観や見どころを詳しくご紹介いたします。
他にも、大聖堂内部からエレベーターで塔に上がるまでの流れや、専用のコインロッカーの使い方など、塔に登る上で役立つ情報が満載です。
記事の後半では、塔の全体像や配置図、サグラダファミリアの塔が何を表現しているかなどについても詳しく解説しております。
サグラダファミリアのチケット情報や予約方法に関して知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
塔の入口と登り方
塔の入口と登り方からご説明致します。生誕のファサードの塔も受難のファサードの塔も、エレベーターを利用して塔の上まで登ります。エレベーター乗り場は、サグラダファミリア大聖堂内部にあり、生誕のファサードと受難のファサードに登る場合のエレベーターは別になります。まずはこちらの地図でエレベーター乗り場をご確認ください。
①生誕のファサードの塔 エレベーター乗り場生誕のファサードの塔の入口(エレベーター)は、サグラダファミリア大聖堂の東側、教会内に入場してすぐの場所にあります。
②受難のファサードの塔 エレベーター乗り場受難のファサードの塔の入口(エレベーター)は、サグラダファミリア大聖堂の西側、入り口の生誕のファサードから見て、一番奥の出口側にあります。
さて、エレベーター乗り場のおおよその位置は把握できたと思いますので、以下より塔に登るまでの流れをご説明致します。
塔に登って降りてくるまでの流れ
ご自身がチケット予約時(購入時)に指定した塔の入場時間の5分〜10分くらい前になったら、エレベーター乗り場(画像下)の前に移動します。エレベーター乗り場には係員がいるので、ここでチケットを提示して待機します。
生誕のファサードのエレベーター乗り場こちらは「生誕のファサード」のエレベーター乗り場です。赤い矢印の方からしかアクセスする事ができませんのでご注意ください。基本的にいつも混雑しています。
受難のファサードのエレベーター乗り場「Passion towers」と書かれているのが「受難のファサード」のエレベーター乗り場です。常に生誕のファサードよりも空いています。
予約した塔の入場時間は、予約書、もしくはチケットに記載されています。下画像は公式サイトでオンライン予約した際のチケットになります。③が予約した塔の名前、④が塔の入場時間になります。
塔の入場時間はかなり厳密なので、あまり早く来すぎてもエレベーターに乗せてもらえません。ただし、リュックなどの荷物がある場合は塔には持ち込めませんので、エレベーター乗り場付近にある専用のコインロッカーに預ける形になります。その場合は、少し早めの10〜15分くらい前にはエレベーター乗り場に向かってください。
こちらがエレベーター乗り場付近にあるコインロッカーになります。
コインロッカーは、生誕のファサードと受難のファサードのエレベーター乗り場付近にそれぞれ設置されています。
コインロッカーを利用するには1ユーロが必要ですが、最後に返却されます。50セント2枚などは使えないので、コインロッカーを利用する方は、必ず事前に1ユーロ硬貨を準備の上でサグラダファミリアに入場してください。ないと結構困ると思います。
コインの投入口ですが、非常に分かりにくい事にドアの内側にあります。荷物を入れてコインを投入した後に、ドアを閉めて鍵をかける流れになります。鍵は絶対に無くさない様に気をつけてください。
さて、話をエレベーターに戻します。エレベーター乗り場の前に並び、ご自身の予約時間になると、係員に誘導されるのでエレベーターに乗り込みます。
生誕のファサードも受難のファサードも、エレベーターで約60mぐらいの高さ(下画像青枠付近)の展望エリアまで登ってくれます。
展望エリアから見える景観はこんな感じです。
塔からの景観は次項以降でたくさんお見せ致します。本項では塔に登って降りるまでの流れをさらりと解説しています。
エレベーターを降りて塔からの景観を十分に堪能したら、次は階段を少しだけ上がって行きます。これはどちらの塔に登った場合も同様の流れです。
塔の階段を登りきった後は、今度はひたすら階段を降りて行きます。階段を降りる際は、塔の隙間から見えるサグラダファミリアの装飾やオブジェクトを間近で見る事ができます。
階段を下まで降りきると、再びサグラダファミリア大聖堂内部に戻ってきます。サグラダファミリア内部の見学に時間制限はないので、時間の許す限り好きなだけ大聖堂内を見学してください。
次項より、生誕と受難のファサード、それぞれの塔から見える景観をご紹介します。
生誕のファサード 塔からの景観
生誕のファサードの塔からは、バルセロナの北東側の景観を望む事ができます。
この方角には、主要な観光スポットはほとんどないので、そこまで絶景という訳ではありません。住宅の様な建物がひたすら並んでいます。
この方角の唯一のランドマークと言えるのが、バルセロナの現代建築のシンボルとも言える超高層ビル「トーレ・アグバール」です。
このビルは、フランス建築家「ジャン・ヌーヴェル」が設計した物で、水道局のビルになっています。
続いて真下に視線を向けると、マリナ通りを挟んでガウディ公園と池を望むことができます。
今度は視線を頭上に向けると、2023年に4本全てが完成を迎えた「福音史家の塔」がそびえたっています。
高さは4本共に125メートルあり、最終的には中央にメインとなる「イエスの塔」が172.5メートルの高さで建設される予定です。
塔に上ると、鐘楼と鐘楼を結ぶ回廊も歩いて通ります。私もやや高所恐怖症ですが、塀も高く網も張られているので、そんなに怖くはありませんでした。
上を見上げると高さ100~118mの鐘楼を金網越しに見ることができます。鐘楼は12本のうち8本まで完成しており、残るは栄光のファサードの4本のみです。生誕、受難、栄光のファサードにそれぞれ4本づつの鐘楼が建つ予定です。
精霊と聖体と呼ばれるオブジェクトもこんなに間近で見学する事ができます。これらのオブジェクトは精霊と聖杯の2つのグループに分かれており、それぞれの形は、春や夏の果物、植物などが表現されています。「果実の彫刻」などとも呼ばれています。
こちらは生誕のファサードの塔側のみで見られる「生命の樹」です。
イトスギの鮮やかな緑の葉、十字架、大理石の白いハトのオブジェクト、赤い陶製のトレンカディス(ガウディ作品に頻繁にみられる破砕タイル仕上げの工法)などに注目してください。
塔の上からは随所で工事中の部分や塔の内部も見ることができます。
階段を下って行く途中の建物や窓の隙間からも様々な景観を望む事ができます。徐々に地上が近づいてきます。
塔の上部付近で見た精霊と聖体のオブジェクトの今度は下段側も見えてきます。このオブジェクトは日本の「外尾悦郎」氏が手掛けた部分です。
更にその下の外壁にはベネチアンガラスを素材にしたトレンカディス(破砕タイル仕上げ)の文字装飾もあります。
塔の中からは、こんな彫刻の裏側も見る事ができます。
塔の下りの最後は、巻貝をイメージした螺旋階段を降りていきます。
階段を降りきると、再びサグラダファミリア聖堂内部に出る事ができます。
受難のファサード 塔からの景観
受難のファサードの塔からは、バルセロナの南側「バレアス海」方面の景観を望む事ができます。
こちらはモンジュイックの丘側の景観です。
塔の装飾に関しては「受難のファサード」側ならではの色鮮やかなものを見ることができます。
赤と黄色の十字型模様が綺麗ですね。この十字架模様も、サグラダファミリア装飾で多様されているガウディお得意の「トレンカディス(破砕タイル仕上げ)」で制作されています。
こちらは鐘楼を飾るガラスモザイクのオブジェクトです。手前の青い方は「フリューロン」と呼ばれる花形装飾のオブジェクト、奥の赤い方は聖マタイの塔を飾る頭文字のMのオブジェクトです。
受難のファサード側の塔からは、とにかくカラフルで綺麗な装飾を楽しむ事ができます。
ピンク色の装飾も受難のファサード側ならではです。こんなに目の前で見ることができます。
この辺のカラフルな装飾は好みがわかれるところです。学園祭の様で安っぽいという方もいれば、色鮮やかで美しいという方もいると思います。
続いて共に建設中の「福音史家の塔(右側)」と「マリアの塔(左側)」です。
マリアの塔は、サグラダファミリアの後部に建つ塔で、最終的に130メートルの高さになります。一方、福音史家の塔は最終的に135メートルの高さになり、受難と生誕のファサード側に2本づつ配置されています。
階段を降りていく途中に、精霊と聖体のオブジェクトを再び間近で見ることができます。この辺りは生誕のファサードも受難のファサードも同じ感じですね。
こちらは塔をやや下の方まで降りた付近の景観です。ちょうど受難のファサード中央を飾る十字架の裏側あたりです。
このぐらいの高さからバルセロナ市内を撮影した方が建物が鮮明で綺麗な写真が撮れます。
壁面の彫刻や外壁も大事な鑑賞ポイントの一つです。生誕よりも、受難のファサード側の塔から見える装飾の方が、形や変化に富んだ物が多いので飽きがこない気がします。
塔の見学の最後は、生誕のファサードと同様に巻貝をイメージした螺旋階段を降りていきます。
階段を降りる途中に、少し塔の裏側に目をやると、エレベーターの動力部分も見ることができます。
螺旋階段を降り切ると、ドアがあります。
このドアを出ると再びサグラダファミリアの聖堂内部に出ます。
生誕と受難のファサード どちらの塔に登るのがお勧め?
一般的には、圧倒的に「生誕のファサード」側の方が人気が高いです。
理由としては、生誕のファサードの方が、ガウディの生前に彼自身によって造られた彫刻や装飾を間近で見る事ができるからです。生誕のファサードは、キリスト誕生の喜びを表現しており、全体的に明るいイメージの彫刻や彫り物が多く、特にこだわりがなければ、生誕のファサードを選択すれば間違いないと思います。
ただし、私個人としては「受難のファサード」側の塔に登る事をお勧めします。
確かに、受難のファサードは、キリストの最後の晩餐からキリストの磔刑、キリストの昇天までの場面を彫刻で表現しており、どことなく重い雰囲気のファサードです。そのため、やや暗いイメージがありますが、塔から見える装飾部分に関しては色鮮やかで明るいカラーのものがほとんどです。むしろ生誕のファサードよりも、受難のファサード側の方が色鮮やかでバリエーション豊かな彫刻や装飾を見る事ができます。市内を一望する景観にも大差はありません。
何より「受難のファサード」の方が混雑が緩やかでゆっくりと見学できる事が多いです。日中は流石に混雑しますが、夕方以降は結構ガラガラの時があります。
写真撮影に拘る方は、午前中が「受難のファサードの塔」側が順光に近く、午後は「生誕のファサードの塔」側が順光に近い形になるので、訪問可能な時間帯に応じて、どちらの塔に上るかを決めるのも良いかもしれません。
サグラダファミリアの塔に登るべきか
時間に余裕があるのであれば、サグラダファミリアの塔には登る事をおすすめします。
2つの塔からの景観は、正直な所、そこまで絶景という訳ではありません。料金的にも「SAGRADA FAMÍLIA AND TOWERS」という32€のチケットを購入する必要があるので、通常のチケットよりも15€ほど高くなります。
しかし、遥々バルセロナまでやってきて、たかだか数千円程度の料金を惜しんで、塔に登らない手はないと思います。
塔に登って後悔するか否かは登った人のみぞ知るです。私もバルセロナ訪問時は、毎回必ずサグラダファミリアの塔には登るようにしています。せっかくなら、大聖堂内部の見学だけでなく、予約の上で、是非塔にも登ってみてください。
塔に関する注意事項
サグラダファミリアの塔には、事前に知っておくべきいくつかの注意事項があります。
悪天候時の塔への入場制限
安全面における配慮から、天候の悪い日、特に雨風の強い日は、チケットを予約していても、サグラダファミリア付属の塔には上る事ができない場合があります。30分前までは塔に上れたのに、その後は天候の悪化によって塔に上れなくなってしまったという話も珍しくありません。
年齢制限
サグラダファミリア聖堂内への入場には年齢制限はありませんが、塔への入場は安全面への配慮から、5歳未満の子供は上る事ができません。また16歳未満の子供は大人の同伴がない場合には塔に上る事ができません。
塔への大きな荷物の持ち込みについて
サグラダファミリアの塔の上は、トランクなどの大きな荷物を持って上る事はできませんので、塔の入り口付近のコインロッカーに預ける形になります。ただし、トランク用の大きな荷物を収納できるコインロッカーは数も少ないので、基本的には、大きな荷物は持ち込まない事をおすすめします。コインロッカーに投入したコインは荷物を取り出すと戻ってきます。
塔の構造と完成イメージ
記事の前半では、塔の見学情報を中心に解説しましたが、本項以降では塔の全体図や構造、各塔が何を表現しているかなどについて解説致します。
サグラダファミリア全体には、全部で18本の塔が存在しています。18本の塔は、大きく「イエスの塔」「マリアの塔」「複音史家の塔」「12使徒の塔」の4グループに分類する事ができます。まずは以下のサグラダファミリアの3つのファサードと18本の塔の配置図をご覧ください。12使徒の塔は、3つのファサードにそれぞれ4本づつ配置され、それ以外の6本の塔は全て聖堂の中央に配置されています。
各塔は、イエス・キリスト、聖母マリア、4人の複音史家、12使徒を表現しています。
① イエス、② マリア、③ 聖ルカ、④ 聖マルコ、⑤ 聖ヨハネ、⑥ 聖マタイ、⑦ マタイ、⑧ ユダ、⑨ シモン、⑩ ベルナベ、⑪ 小ヤコブ、⑫ バルトロマイ、⑬ トマス、⑭ フィリポ、⑮ 大ヤコブ、⑯ パウロ、⑰ ペトロ、⑱ アンデレ
現在、18本のうち、生誕のファサードと受難のファサードの塔が8本、マリアの塔(2021年12月8日完成)が1本、複音史家の塔(2023年9月完成)が4本、合計13本完成しています。参考までに、イエスの塔は2026年に完成予定です。
参考までに下画像は、サグラダファミリア付属の博物館に展示されているパネル写真で、生誕のファサード側から見た完成イメージです。
【完成イメージ】
更に、一般公開されている動画にて、非常にリアルなサグラダファミリアの完成イメージを視聴する事ができます。こちらも是非ご視聴ください。
【完成動画】2026年の完成に向けて順調に工事が進んでいた「サグラダファミリア」ですが、コロナ下で観光収入が減少し、完成の見通しが立たなくなりました。
サグラダファミリアの工事責任者は、明言こそ避けておりますが、2026年の完成は難しくなったと正式にコメントしております。
18本の塔の概要と見どころ
本項ではサグラダファミリアの18の塔の概要や見どころをご紹介致します。
イエスの塔(建設中)
サグラダファミリアの全ての中心であり、最も太く高い塔がこの「イエスの塔(画像中央)」です。残念ながら、ガウディが生前に残したイエスの塔に関する資料は、スペイン内戦で多くを紛失してしまったため、現在ガウディのわずかに残るスケッチを元にこの塔の建設が進んでいます。
完成すれば、高さは172.5メートルになり、ヨーロッパで最も高い宗教建築物となります。ガウディはイエスの塔の高さを定めるにあたり、バルセロナで最も高いモンジュイックの山よりも1mだけ低くしました。これは人間界の建造物が、神が造った自然界の高さを越えてはならないと言う考えに基づいています。
最終的には塔の最頂部には全長15メートルの十字架が置かれる予定です。現在、バルセロナではイエスの塔、つまりサグラダファミリアへの敬意として、172.5メートルの高さを超える建物を建てる事は禁止されています。
イエスの塔の建築工法について
イエスの塔の建設にあたり、大きな技術的問題をクリアする必要がありました。イエスの塔は、現在完成している聖堂の高さ80メートルの屋上に土台を築いて建設します。これは地上に土台を築いて建物を建設する事とは訳が違います。重い素材を使用すれば屋根から下の聖堂がくずれてしまい、重量を軽くして薄い素材を使用すると、地震や強風に耐える事ができなくなります。
この問題をクリアするため、サグラダファミリアの建設チームは世界中から石を集めて、強度や重量をテストしたそうです。最終的には、ステンレスの棒でたくさんの軽い石を密着させて塔の壁を組み上げる工法が採用されました。これにより、薄くて強固な壁を造る事が可能になりました。この工法の場合、壁を組み上げる際に1mmのズレも許されないそうです。気の遠くなる様な予算と作業が必要となるため、潤沢な予算があるサグラダファミリアだからこそ成し得る工法ではないでしょうか。
イエスの塔の内部装飾ついて
イエスの塔の内部装飾を任されているのが、日本人彫刻家「外尾悦郎」氏です。外尾氏は、塔内部の装飾を神の恵みである「水」「土」「空気」「光」、つまり森羅万象で表現しようと考えています。
横尾氏は当初、様々なオブジェクトで内部を飾る事で「森羅万象」を表現しようとしましたが、生前のガウディの資料からのヒントによって、森羅万象を「グラデーション」で表現する事を決めたそうです。
これは、自然界は天然のグラデーションで彩られており、常に自然をお手本にしたガウディなら、色の境目がないグラデーションで表現するだろうという考えに基づいています。また、境目のないグラデーションは、人間は貧富や身分による差はなく(境がなく)全て平等であるという想いもこめられています。正に神の前で全ての人間は平等であると説いた「イエス・キリスト」の塔に相応しいテーマーだと思います。
実際に「コロニアグエル教会」の地下から、新たに莫大なガウディの資料6000点が発見された際に、グラデーションに関する研究資料も多数見つかっています。
マリアの塔(2021年12月8日完成)
イエスの塔を後方で支える様に教会後陣にそびえるのが高さ約138メートルの「マリアの塔(画像の左手側)」です。サグラファミリアの塔では、イエスの塔(172.5m)に次ぐ高さと太さを誇ります。
コロナ・ウィルスの影響で、サグラダファミリア全体の建設工事は中断しておりましたが、全ての予算と労力をこの「マリアの塔」に注ぎ込む事で、2021年12月8日に、遂に完成を迎えました。上の写真はマリアの塔が完成する前のものです。
完成に伴い、お披露目を祝うミサが開かれ、暗い話題の多い中で、希望のシンボルになってほしいと、多くの地元民がサグラダファミリアに詰めかけました。
ミサでは、「Juan José Omella(ジョアン・ジョセップ・オメラ) 大司教」の祝福に合わせて、高さ約138mの塔がライトアップされました。そして、塔最頂部の「暁の星」とよばれる星型のオブジェクトが点灯すると、市民と観光客から歓喜の声が湧き上がりました。
ライトアップ時の様子はAFP通信社による「YouTubeページの動画(外部サイト)」でもご覧頂けます。
最頂部の「暁の星」は、完成の1週間ほど前の2021年11月29日に設置されたばかりでした。直径7.5メートル、重さは5.5トンもあり、ステンレス鋼製ガラスでできたピラミッド型のオブジェクトが12個組み合わさって構成されています。
Estrella de la torre de María. by Canaan is licensed underCC BY 4.0
昼間はガラスが太陽に照らされ美しく輝き、夜は内側の基部に設置されたスポットライトが光る仕様になっています。
福音史家の塔(2023年9月28日完成)
「イエスの塔」を囲む様に建つ4本の福音史家の塔は、福音史家の4人「聖ルカ」「聖マルコ」「聖ヨハネ」「聖マタイ」を表しています。素材には光によって色合いが微妙に変化する軽量の「チタン」が使用されています。各塔の高さは等しく135メートルで統一され、サグラダファミリアの中では「イエスの塔」と「マリアの塔」に次ぐ高さを誇ります。塔の最頂部には、福音史家の各人物を象徴するオブジェクトが配置されます。参考までに福音史家とは、新約聖書の福音書を書いたとされる4人の伝道者です。
2020年の訪問時には、福音史家の上部を飾る彫刻(画像下)が展示されていました。
それぞれ左から「マルコ(獅子)」「ヨハネ(鷲)」「ルカ(牡牛)」「マタイ(天使)」。
「福音史家の塔」は、2023年9月に完成を迎えました。
12使徒の塔(一部建設中)
生誕、受難、栄光のファサードに、それぞれ4本づつ配置されるのが「12使徒の塔」で、既に8本まで完成しています。各塔の高さは均等ではなく、最大のもので120メートル、低いもので98メートルに設計されています。
全ての12使徒の塔上部には「ピナクル」と呼ばれる高さ25メートルのシンボルが置かれています。先端の飾りは、ミトラと呼ばれる司教冠を象徴する黄金の十字架で、その下部は各使徒の頭文字のオブジェクトで飾られています。装飾素材には、ベネチアのムラーノ島産のガラスモザイクが使用されています。
鐘楼(塔)の模様の境目にはラテン語で「聖なるかな」を意味する「Sanctus」の文字が刻まれています。
生誕のファサードの鐘楼
生誕のファサード上部にある4本の鐘楼(塔)は既に完成済みで、キリストの12使徒のうち向かって左から「ベルナベ」「シモン」「ユダ」「マタイ」の名前が付けられています。
生誕のファサードの鐘楼(塔)の中央には、イトスギをモチーフにした「生命の樹」というオブジェクトが飾られています。このオブジェクトでは永遠の生命や天と地の結び付きを表現しています。
生命の樹の表面には、雪花石膏(せっかせっこう)で制作された21体の白いハトのオブジェクトが配置され、上部には、ギリシャ文字で神を表す「タウ」をかたどった赤い十字架が飾られています。
これにより、「神(タウ)」「イエス・キリスト(十字架)」「キリスト教(聖霊を表すハト)」の三位一体を表現しているそうです。
受難のファサードの鐘楼
受難のファサードも生誕のファサード同様、上部には12使徒を表す4本の鐘楼が建っています。
左からそれぞれ「小ヤコブ」「バルトロマイ」「トマス」「フィリポ」と名付けられています。塔と塔を結ぶ橋の部分には、キリストの復活を示す「キリストの昇天」の彫刻がおかれています。
栄光のファサードの鐘楼(建設中)
今現在、塔の影も形もないのがこの栄光のファサード側になります。下画像は博物館に展示されている栄光のファサードの模型になります。完成すれば12使徒のうち、左から「アンデレ」「ペトロ」「パウロ」に捧げる塔が建ちます。
ただし、ファサード正面に暮らす住民の立ち退き問題もあるため、サグラダファミリアの中では完成が最も遅くなる部分の一つだと思います。
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