カサ・ミラを徹底解説 行き方、見どころ、見学コース、所要時間など

ガウディ バルセロナ
カサ・ミラの彫刻とファサード

本記事では、ガウディの民間建築最後の作品「カサ・ミラ」の観光情報を徹底解説致します。館内の見どころはもちろん、行き方、所要時間、モデルルート、歴史など、カサ・ミラを観光する上で役立つ情報が満載です。

カサ・ミラとは

カサ・ミラの外観

カサ・ミラは実業家「ペラ・ミラ」氏の依頼でガウディが設計・建築した個人邸宅兼賃貸アパートです。1835㎡の広大な敷地に、地上6階と地下1階、さらに屋根裏と屋上テラスまで備えています。

カサ・ミラは、日本語でミラ氏の邸宅「ミラ邸」と言う意味ですが、完成当時の外観があまりに斬新であったため、スペイン語で採石場や石切り場を意味する「ラ・ぺドレラ」と呼ばれました。地元民の間では、未だに「カサ・ミラ」より「ラ・ぺドレラ」の呼び名が一般的です。

現在のカサ・ミラは、現役の賃貸物件として機能する一方で、建物の一部を観光客に有料で開放しています。入場チケットさえ購入すれば、誰でも手軽に館内を見学する事ができます。

館内には、30基以上の彫刻が並ぶ「屋上テラス」をはじめ、「屋根裏」「中庭」「アパートメント(住居スペース)」など、見どころが満載です。

この円熟期のガウディの技術と経験が集約された建造物には一見の価値があります。

カサ・ミラの歴史

カサ・ミラが建設された20世紀初頭、ブルジョワ階級の間では、自身の財力誇示を目的に、豪華な邸宅を有名建築家に設計・建築させるのが流行りでした。

ガウディ作 カサ・バトリョ

カサ・ミラの施工主「ペラ・ミラ」も、そんなブルジョワ階級の1人で、1906年に完成を迎えたガウディ設計の「カサ・バトリョ(画像右)」に建設段階から強い衝撃を受けていました。

そして、カサ・バトリョの様な邸宅を持ちたいと考えていたミラ夫妻は、1905年にグラシア通り沿いに土地を購入し、その物件の建設をガウディに託しました。

この頃のミラ氏は、実業家として財を成していただけでなく、妻のルゼーにも前夫から相続した莫大な遺産がありました。また、依頼を受けたガウディ自身も、54才でキャリアの絶頂期にありました。

正に最高の条件下で着工されたかに見えたカサ・ミラの工事でしたが、ガウディは建設開始から完成後まで、多くのトラブルに見舞われます。

それは、工事期間の遅延よる予算オーバーにはじまり、建物の構造を巡る市役所からのクレーム、建物の造形を巡るミラ夫妻との争いなど、多岐に渡りました。

こんな状況に嫌気が差したガウディは、完成間近にも関わらず、ついに「カサ・ミラ」の工事から手を引いてしまいます。

最終的には、弟子のジョジュールが工事を引き継ぎ、カサ・ミラは1910年に無事完成を迎えますが、設計報酬を巡って法廷闘争に発展するなど、ガウディにとっては最初から最後まで踏んだり蹴ったりの仕事となりました。

しかし、完成当初こそ様々な批判を受けた「カサ・ミラ」でしたが、いつしか、その画期的な建設構造や、有機的で斬新なデザインは、ガウディの民間建築の最高傑作と評されるまでになりました。1984年には、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

カサ・ミラ 観光の基本情報

本項では「営業時間」や「チケット料金」など、カサ・ミラの基本情報をご紹介します。

営業時間・休館日

カサミラの営業時間と休館日、見学に関する補足情報などは以下のとおりです。

営業時間

カサ・ミラの営業時間は以下のとおりです。2月20日より営業時間が長くなります。

【〜2023/2/19】

9時〜18時30分(最終入場17時30分)

【2023/2/20〜】

9時〜20時30分(最終入場19時30分)

※ ナイトツアーやサンライズツアーに参加すると、上記以外の時間帯での館内見学も可能です。

休館日

休館日は12月25日のみで、それ以外の日は年中無休となっております。

※ 公式サイトで休館日が追加される場合があります。その場合は可能な限り迅速に更新致します。

チケットの種類と料金

カサ・ミラのチケットは、入場時間や優先入場の有無によって料金が異なります。また、同じチケットでも事前にWEB予約すると、現地購入より3ユーロ安くなります。

館内見学のチケットは、自由見学とツアー形式の2種類がありますが、ほとんどの方が自由見学ができるチケット「La Pedrera Essential」か「La Pedrera Open Date」のいずれかを購入します。

【La Pedrera Essential】

事前に日時指定の上で入場予約ができる最も一般的なチケットです。予約した日時にほぼ並ばずに入場できます。

見学方法
  • 自由見学
料金 【WEB予約】
  • 25.00 €(一般)
  • 19.00 €(65歳以上)
  • 19.00 €(学生)
  • 12.50 €(7〜12歳)
【現地窓口で購入】
  • 28.00 €(一般)
  • 22.00 €(65歳以上)
  • 22.00 €(学生)
  • 15.50 €(7〜12歳)
※ 6歳以下の子供は無料で入場できます。
その他
  • 日本語のオーディオガイドレンタル料金込

【La Pedrera Open Date】

ご自身のお好きな日時に専用の入口から優先入場できるチケット。カサミラへの訪問時間が読めない方にお勧め。

見学方法
  • 自由見学
料金【WEB予約】
  • 32.00 €(一般)
  • 12.50 €(7〜12歳)
【現地窓口で購入】
  • 35.00 €(一般)
  • 15.50 €(7〜12歳)
※ 6歳以下の子供は無料で入場できます。
有効期限購入日から6ヶ月
その他
  • 日本語のオーディオガイドレンタル料金込
  • カサ・ミラのビジュアルガイドブック付き

チケットの予約・購入方法

カサ・ミラのチケットは以下の何れかの方法で購入が可能です。

  1. 公式サイトで予約する(英語)
  2. GET YOUR GIDEで予約する(日本語)
  3. 現地のチケットオフィスで購入

上記のうち、①の「公式予約サイト(英語)」か、②の「GET YOUR GIDE(日本語)」で、チケットをオンライン予約(購入)しておけば、現地でチケット購入する手間を省く事ができます。

カサ・ミラのチケット予約・購入方法に関しては、以下の記事にて詳細に解説しております。

カサ・ミラのロケーションと行き方

「カサ・ミラ」は、グラシア通りという大通りに面して建っています。サグラダファミリアからだと、徒歩と地下鉄で18分〜20分ほど、「カサ・バトリョ」からなら徒歩5分ほどの場所に位置しています。

以下、カサ・ミラへのアクセス方法をおすすめ順に記載致します。

【地下鉄でのアクセス】

カサ・ミラは地下鉄駅の目の前に位置しています。地下鉄3号線(L3)と5号線(L5)が走る「ディアゴナル駅(Diagnal)」で降りて徒歩2分ほどです。

ただし、地下鉄5号線を利用した場合は5分ぐらい歩くと思います。カサ・ミラは、地下鉄3号線側の出口「Sortida Pg. de Gracia / Pau Claris」から出るのが最も近道です。

ディアゴナル駅 周辺マップ

地下鉄の利用方法や路線図に関しては以下の記事を参考にしてください。

【徒歩でアクセス】

カサ・ミラは出発地点によっては、徒歩でのアクセスもお勧めです。例えば、カタルーニャ広場周辺からであれば徒歩16分ほど、カサ・バトリョからであれば徒歩5分ほどになります。

【タクシーでアクセス】

グエル公園やカサ・ビセンスなどのやや離れた場所からアクセスする場合や、手っ取り早く楽にアクセスしたい方には、タクシーの利用もお勧めです。バルセロナのタクシーは欧州でもかなりリーズナブルな方です。

バルセロナ タクシー

バルセロナのタクシーは黒と黄色のツートンカラーが目印です。

料金は、曜日や時間帯によっても変動しますが、基本料金「2.2~2.3€」で、以後は1kmごとに「1.4~1.7€」づつ加算されます。

主要スポットからカサ・バトリョまでのタクシー料金目安
出発場所料金目安距離の目安
サグラダファミリア5〜10€約2.0km
カタルーニャ音楽堂5〜10€約2km
カサ・ビセンス7〜12€約2.5km
サン・パウ病院8.5〜13.5€約3.5km
グエル公園9.5〜14.5€約4.5km

【RENFE近郊線でのアクセス】

「パセジ・ダ・グラシア駅(Passeig de Gracia)」で降りて徒歩5分ほどです。

カサ・ミラの2つの入口

カサ・ミラの入口は大きく2つあります。一つはビル正面の「La Pedrera Open Date(オープンデートチケット)」保有者用の優先入場口。もうひとつは、当日券を購入する人と時間指定の入場チケット「La Pedrera Essential」を持った人の入場口になります。

優先入場ができる「La Pedrera Open Date(オープンデートチケット)」 をお持ちの方は、カサ・ミラの正面の入口(写真下)にてチケットを提示の上で並ばずに入場できます。

カサ・ミラの優先入場口

一方、入場日時指定のチケット「La Pedrera Essential」の予約者の方や当日券を購入される方は、カサ・ミラの建物東側「プルベンサ通り」沿いにある入口(写真下)から入場します。

当日はカサ・ミラの建物に沿って2つのレーンがあります。

カサ・ミラ 2つの入場列の説明画像

カサ・ミラ 2つの入場列の説明画像

予約者の方は、予約時間の10〜15分ぐらい前になったら、道路側の「Online Tickets(オンラインチケット)」と書かれた列に並んで入場します。一方、当日券を購入して入場する方は、建物側の「To buy tickets(チケット購入者)」の列に並んで、その先のチケットオフィス(画像下)でチケットを購入して入場します。

カサ・ミラ チケットオフィス

当日の入場の流れをもっと詳細に知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

カサ・ミラの見学コースと所要時間

本項では、カサ・ミラの「見学コース」と「所要時間」について解説します。

王道の見学コース

カサ・ミラは、順路に沿っていけば自然に見どころを網羅できる構造になっています。以下が最も一般的な館内の見学コースになります。

  • ↓ 中庭
  • ↓ 屋上テラス
  • ↓ 屋根裏
  • ↓ アパートメント

館内入場後、最初に訪れる「中庭」は、カサ・ミラの出入口に面しています。一般入場の方は「楕円形の中庭」から、優先入場の方は「円形の中庭」が見学開始地点になります。

カサ・ミラの 1Fフロアマップ

優先入場の方は中庭に入った瞬間に、係員にエレベーターまでエスコートされてしまうときがあります。その場合、屋上テラスから観光する形になりますが、最後に再び「中庭」に戻ってくるので、その際にゆっくりと見学が可能です。

また、一般入場の方が利用するエレベーターは混雑するので、入場直後は中庭をさっと通り抜けて、エレベータ-で先に屋上テラスから観光していった方がスムーズな場合があります。その方が観光の時間配分もしやすいと思いますので、状況に応じてご対応ください。

館内の歩き方

カサ・ミラ見学の基本は、館内の至る所にある「Visit」の案内に従って歩いて行くだけです。これが順路になります。

カサ・ミラ館内の案内板

Visitだけではなく「Apartment(アパートメント)」など、次の見学スポットを示す案内板もあります。とにかく案内板の矢印に従って見学して行けば間違いないです。カサ・ミラの館内構造は複雑ではないので見学しやすいと思います。

カサ・ミラ館内の案内板

所要時間の目安

上でご紹介した見学コースを回った場合の観光所要時間の目安は、1時間〜1時間30分ほどになります。

日本語のオーディオガイドをじっくり聞きながら見学しようとお考えの方は、所要1時間30分をみておいた方が間違いないと思います。

以下はあくまでも目安程度ですが、私が実際に各スポットの見学に要した時間になります。

  • ・中庭: 所要15分
  • ・屋上テラス: 所要25分
  • ・屋根裏: 所要15分
  • ・アパートメント(住居エリア): 所要25分

以上で所要1時間20分ほどでした。ただし、ギフトショップでお土産を物色していた時間なども含めると、所要1時間30分は超えていたと思います。

また、屋根裏はカサ・ミラの建築構造に関する展示があるので、興味のある方にとっては、所要15分では全然物足りないと思います。この辺りは皆さんの興味や嗜好によると思うので、うまく時間を配分しながら見学ください。

カサ・ミラ内部の見どころ

本記事内の「カサ・ミラの見学コースと所要時間」の項でもご説明しましたが、カサ・ミラの大きな見どころは「中庭」「屋上テラス」「屋根裏」「アパートメント(住居スペース)」の4カ所になります。

それ以外にもお好みで「ギフトショップ」での買い物、「企画展」の見学、併設「レストラン」での食事なども楽しむ事ができます。以下より、各スポットの詳細な見どころを解説してまいります。

中庭

カサ・ミラには、2つの中庭「円形の中庭」と「楕円形の中庭」の2つがありますが、形と大きさが違うだけで造りはほぼ同じです。

円形の中庭

上画像は、グラシア通り沿いの入口に面する「円形の中庭」の景観になります。高さ約30m、面積は90㎡あり、優先入場した方は最初にこの中庭に出ます。一方、一般入場の方はもう一つの「楕円形の中庭(150㎡)」に最初に出る形になりますが、見学の最後は「円形の中庭」に戻ってきます。

カサ・ミラの 1Fフロアマップ

中庭は、カサ・ミラ内の全ての住居に面する様に設計されており、各住宅への採光や換気の役割を担っています。

カサ・ミラ 円形の中庭

住宅内への採光を均等にするため、窓は自然光から遠くなる下階ほど大きく作られています。また、各窓の間にある柱の素材には、下階が石、上階には粗石(あらいし)が使用されています。

カサ・ミラ 中庭の窓と柱

入口を背にして右手側には、観葉植物で飾られたお洒落な階段があります。かつてこの階段はミラ家専用で、ミラ家の住居エリアへと繋がっていました。

カサ・ミラ 中庭の階段

物件オーナーの専用階段だけあって、一際豪華に装飾されています。現在、階段を上った先の2階は、企画展の会場となっています。

カサ・ミラ 中庭の階段

壁面の装飾は、花や神話をモチーフに油彩で描かれています。どことなくシャガールの油彩画を彷彿させます。

カサ・ミラ 中庭 壁面の装飾

階段の鉄製の手すりも、渦巻く様なデザインが特徴的です。

カサ・ミラ 中庭 階段の手すり

対面側の階段は付属のレストランへと繋がっていますが、確かここからは入場できないと思います。

カサ・ミラ 中庭に面するレストラン

入口はカサ・ミラの外、グラシア通り沿いにあります。そこまで値段設定も高くないので、気になる方はカサ・ミラ見学後に立ち寄ってみてください。

続いて、中庭の入口側に目を向けると、かつて住人の出入り口として利用されていた「鉄とガラスの扉」があります。

カサ・ミラ 中庭 鉄とガラスの扉

本来、上の写真で開いている扉の部分は車用で、右側の閉じている小さな扉部分が歩行者用になっています。扉のモチーフは、はっきりとした事は分かっていませんが、カメの甲羅、蝶の羽、細胞組織などに例えられます。

中庭の一角には「ガウディの胸像」も飾られています。

カサ・ミラ ガウディの胸像

中庭の見学終了後、優先入場の方は「円形の中庭」の奥にある専用のエレベーターで屋上テラスへ向かいます。エレベーターを降りた後、少しだけ階段を上ります。

一般入場の方は「楕円形の中庭」の奥にある、階段かエレベーターを利用して「屋上テラス」に上がります。

一般入場用のエレベーターと階段の登り口

▲一般入場の方(優先入場以外の方)が利用するエレベーターと階段の登り口

屋上テラス

エレベーターや階段を上って屋上に出ると、波打つ様にうねる彫刻の数々が目に飛び込んできます。

カサ・ミラ 屋上テラス

ガウディが手がけた民間建築の屋上テラスの多くには、どれも独特の彫刻や装飾がほどこされています。中でも最も後年に建築されたこの屋上テラスは、ガウディの屋上装飾の集大成とも言える傑作です。

屋上テラスの彫刻は全部で38基もあり、それぞれ「煙突」「換気塔」「階段出口の塔」の3グループに分ける事ができます。

カサ・ミラの屋上テラスの彫刻

各彫刻は、煙突が30基、換気塔が2基、階段出口の塔が6基という構成で配置されています。

煙突の彫刻(全30基)

3グループの中で最も多いのが、30基も配置されている「煙突」の彫刻で、捻れた支柱の上に兜の様なオブジェクトが置かれているのが特徴です。煙突の彫刻は、他の彫刻群よりも高さが少しだけ低く造られています。

カサ・ミラの屋上テラスの煙突

煙突彫刻にもいくつかのデザインがあります。上の煙突彫刻は、兜を被ったローマ兵士をイメージしたものです。ガイドブックにには、この彫刻を見たジョージルーカスが、スターウォーズの兵士デザインの参考にしたと書かれていました。

ご参考までに、サグラダファミリアの受難のファサードにも似た様な彫刻が彫られています。

サグラダファミリア 受難のファサードの彫刻

これは、受難のファサードを手がけた彫刻家「ジュゼップ・マリア・スビラックス」が、ガウディへのオマージュとして敢えて制作したものです。

こちら(画像下)も同じく「煙突」の彫刻です。唯一カラー装飾が施されており、表面の装飾にはガラス瓶の破片が用いられています。まるで海藻の様ですが、防水の役割もあるそうです。

カサ・ミラの屋上テラスの煙突

また、全ての煙突は飾りではなく、住宅で使用される暖房の排気口の役割も担っています。

換気塔の彫刻(全2基)

屋上テラスに全部で38個あるうち、2基の彫刻は高さ約5.5mほどの「換気塔」です。

カサ・ミラの屋上テラスの煙突

2基の換気塔もそれぞれデザインが異なっています。上の無数に穴が空いている方は、如何にも換気塔という感じのデザインですね。共に人間の形に着想を得てデザインされたそうです。

カサ・ミラの屋上テラスの換気塔

階段出口の彫刻(全6基)

屋上テラスの下を支えるアーチ状の柱は部分的に高さが異なるため、その形状の起伏に合わせて、屋上テラスも波打つ様に段差になっています。この段差の階段部分に設けられているのが「階段出口の彫刻」です。

階段出口の彫刻

下画像は、屋上テラスに展示されている地図です。赤丸で囲った部分が「階段出口の彫刻」が配置されている場所です。

屋上テラスの地図

この全6基の彫刻群は、3〜4パターンの異なるデザインで造られており、上部には全て貯水タンクが取り付けられているそうです。

階段出口の彫刻

中でも最も印象的なのが、高さ約8mもあるこちらの彫刻です。素材には、大理石や陶器などが使用され、全体的に白みを帯びているのが特徴です。胴体部分は螺旋状に捻れ、最頂部には十字架がデザインされています。

階段出口の彫刻

こちらの肌色っぽいタイプの方には、黄土色の化粧漆喰がほどこされています。

階段出口の彫刻

階段出口の彫刻に関しては、ガウディが何をイメージしてデザインしたかは諸説語られています。個人的には、モンセラートの山々をイメージしたという説が一番しっくりきます。

屋上からの景観

屋上テラスからの景観は絶景という訳ではありませんが、グラシア通りを一望できるほか、サグラダファミリアの受難のファサード側の景観も望む事ができます。

まずは、グラシア通り側の景観からご紹介致します。

カサ・ミラ 屋上テラスから見るグラシア通り

地上から屋上までの高さは約30m程度ですが、通りの奥の方まで見渡せます。

続いて、こちらは北東側に見えるサグラダファミリアの受難のファサードです。

カサ・ミラ 屋上テラスから見るサグラダファミリア

このアーチ越しにサグラダファミリアが見える場所は、人気の撮影ポイントです。日中は混雑していて、中々撮影が出来ませんが、アーチ越しのアングルに拘らなくても、下画像の様に十分に綺麗な写真は撮影できます。

カサ・ミラ 屋上テラスから見るサグラダファミリア

東側には、バルセロナの現代建築のシンボル「トレ・アグバル」も見えます。

カサ・ミラ 屋上テラスから見るトレ・アグバル

また、屋上テラスは下の地図の様に2つの中庭に面しています。

カサ・ミラ 屋上テラスの地図

中庭は地上から屋上まで吹き抜けになっているので、屋上から見下ろす事ができます。こちらは楕円形の中庭の景観になります。

カサ・ミラ 屋上テラスから見る中庭の景観

屋上テラスの見学を一通り終えたら「The Attic(屋根裏)」の標識に従って階段を降ります。次の見学スポットは「屋根裏」になります。

The Attic(屋根裏)への案内標識

屋根裏

屋上テラスと屋根裏を結ぶ螺旋階段

屋上から階段を下りると、レンガのアーチの連なりが見事な「屋根裏」に出ます。この屋根裏はその独特の景観から、洞窟や動物のあばら骨などに例えられます。

カサ・ミラ 屋根裏

20世紀中頃に「カサ・ミラ」が不動産会社の所有となった時、この屋根裏が住居スペースに改築された事がありました。しかし、その後に行われた修復作業によって、ガウディ本来の建築コンセプトが取り戻され、現在は「Espai Gaudí(ガウディ空間)」と呼ばれる展示スペースになっています。展示内では、カサ・ミラの構造や設計に関連した模型や資料を見学する事ができます。

屋根裏の景観

この屋根裏は元々ガウディが住人の共有スペースとして設計したものです。冬は暖かく、夏は涼しく機能的に造られており、かつては洗濯物置き場や物干し場として利用されていました。

この空間の絶妙な温度調節を可能にしている大きな要素が、屋根裏の外壁に設置された上下の窓(画像下)です。

カサ・ミラ 屋根裏の外壁

夏はこの窓を開け、冬は閉じる事で、最適な室内温度が保たれる様になっているそうです。下の窓が、上の窓よりも少しだけ大きく造られている点などにも、細かい工夫が感じられます。

続いて、屋根裏の構造について見ていきます。下画像はこのエリアに展示されている「構造模型」で、小骨の様に連なっているのが、この屋根裏を支える270本のアーチです。

カサ・ミラ 屋根裏の構造模型

通常、建物の各フロアは壁や梁(はり)なども使用されますが、ここでは壁や梁の代わりにカテナリーアーチ(放物線アーチ)が用いられています。上階の屋上テラスの地面が上下に起伏しているのは、上の模型の様に各アーチの高さが異なっているためです。

屋根裏の展示品もいくつかご紹介します。まずは、かなり精巧に出来たカサ・ミラの模型です。カサ・ミラ全体のフォルムが把握できますね。

カサ・ミラの模型

こちらは、ガウディが建築物の理想的な構造を知るために考えた「逆さ吊り実験」で、この実験によって生まれる各アーチを「フニクラ(カテナリーアーチ)」と呼びます。

屋根裏の展示品 逆さ吊り実験

この技法は、紐に重りをつけて逆さに吊るす事で、その形状が構造的に安定するかどうかを確認するために用いられました。ガウディは、この逆さ吊り実験で形造られたフォルムを撮影し、写真で逆さに見る事で、フレーム構造のデザインに役立てました。この実験模型は、サグラダ・ファミリアに隣接する博物館にも展示されています。

下は地下空間の構造模型になります。地下は住民用の駐車場、物置、暖房機の設置スペースとして利用されていました。

屋根裏の展示品 地下フロアの構造模型

屋上テラスと屋根裏を結ぶ螺旋階段周りの構造模型もあります。模型の上部は屋上の彫刻部分で、グレーの箇所は、実際に彫刻上部に設置されている貯水タンクだと思われます。

屋根裏の展示品 構造模型

ガウディは自然界のあらゆる物を建築装飾のモチーフとして利用しました。こちらは、骨、木の枝、木の実などの彫刻模型です。

屋根裏の展示品 彫刻模型

トウモロコシや松ぼっくりの彫刻模型もあります。自然が生み出した造形こそ最も美しく機能的であると考えていたガウディらしい建築資料です。

屋根裏の展示品 彫刻模型

カサ・ミラの装飾や建築素材に関する映像コーナーや、ガウディの手掛けた家具の展示コーナーもあります。

屋根裏の映像コーナー

屋根裏 ガウディがデザインした家具

屋根裏の展示ボリュームはそこまで多くありませんが、一つ一つの内容が結構濃いので、深掘りして見学し始めると30分ぐらいはあっという間です。

屋根裏の見学を終えたら「Apartment(アパートメント)」の標識に従って、次の見学エリアに移動します。

カサ・ミラ館内の案内板

屋根裏からアパートメントへの移動は階段を下っていきます。優先入場チケットで入館した方は、最初に屋上テラスにアクセスする際にも、この階段を通過します。

カサ・ミラ館内の階段

アパートメント(住居スペース)

カサ・ミラは、地上6階と地下1階、更に屋根裏と屋上テラスで構成されています。このうち実際にアパートメント(住居スペース)として貸し出されていたのは、3階~6階で、2階にはミラ氏とその家族が暮らしていました。

現在、見学可能なのはワンフロアの半分で、各部屋には家具や日用品などがおかれ、20世紀初めのブルジョア階級の暮らしが再現されています。

アパートメントの見学は、中庭に面する廊下を歩きながら、各部屋に出入りして行っていきます。

アパートメントの廊下

廊下の窓からは中庭とそこに面する住居の窓が見えます。窓幅は上階の方が若干だけ狭くなっているのが分かります。

アパートメントの廊下から見る中庭

廊下の床は大理石の様ですが、スペイン南東の海沿いの都市「ラ・セニア産」の石材が使用されています。

アパートメントの廊下

こちらは書斎になります。机の上には電話とインクセット、壁には肖像画と賞状の様なものが飾られています。

アパートメントエリアの書斎

机横のサイドテーブルにはタイプライターも置かれています。

書斎のタイプライター

書斎の奥はダイニングルームと居間になっています。三角形の寄せ木張りの床には、カシワとブナが素材に使用されています。

アパートメントエリア ダイニングルームと居間

20世紀初めは、日本で言うと明治の終わりか大正時代のはじめです。それと比較するとかなりモダンですね。

アパートメントエリア 寝室

居間と隣接するように寝室もあります。頭側のベッドの形状が蝶の様で非常にユニークです。

アパートメントエリア ダイニングルームと居間

ダイニングルームと居間に面してバルコニーも設置されています。リサイクル鉄を寄せ集めて造った手すりを間近で見る事ができます。残念ながらバルコニーに出る事はできません。

バルコニーの手すり

部屋の入口などに設けられたドアもガウディならではのデザインです。

ドアの鉄格子と取っ手

鉄格子の所はドアの覗き窓になっています。曲線でデザインされた取っ手はブロンズ製で、数種類のデザインがあります。

子供の遊戯室には、木馬や大きな人形が置かれ、子供服なども飾られています。写真の右手側には子供用のベッドも見えます。

アパートメントエリア 子供の遊戯室

アパートメントエリア 子供の遊戯室

続いてキッチンエリアです。手前が使用人の食堂、奥が調理場になっています。きっとカサ・ミラに住むブルジョワの方々は自分で調理はせず、使用人任せだったんでしょうね。

アパートメントエリア 使用人の食堂▲使用人用の食堂

▼調理場
アパートメントエリア 調理場

使用人の用務室には、アイロン台やミシンの機械が置かれています。

アパートメントエリアの用務室

使用人の寝室もあります。賃貸主の寝室と比べると、ベッドも狭めで装飾や家具も必要最小限です。

アパートメントエリア 使用人の寝室

カサ・ミラは、どの住宅もバスルームを3つ完備していたそうです。こちらは見た目からして使用人用のバスルームでしょうか。欧州の安いホテルのバスルームよりも十分な広さがありますね。

アパートメントエリア バスルーム

アパートメントの見学を終えたら、再び階段で地上階まで降ります。

カサ・ミラ 住居スペースの階段

当時、カサ・ミラの階段は基本的に「使用人」用という位置づけでした。賃貸住人は主に「エレベーター」を利用して、住居フロアまで上がる用に設計されていました。カサ・ミラはこのエレベーターや地下駐車場、優れた暖房設備など、当時としては最先端の住居設備を完備していました。

階段を降りる際は、住居エリアでも見た、鉄格子付きの扉の前を通ります。住居エリアで見た鉄格子と若干だけデザインが違っています。

カサ・ミラ 住居の扉と鉄格子

階段で地上階まで降りると、円形の中庭の奥にあるエレベーター乗り場付近まで戻ってきます。

一般入場用のエレベーターと階段の登り口

ここからは、再び中庭を見学するもよし、円形の中庭から2階の企画展(有料)に入場するもよし、出口から「ギフトショップ」に立ち寄って見学を終えるもよしです。見学時間の許す限りカサ・ミラを満喫してください。

企画展

カサ・ミラ 企画展の受付

カサ・ミラの2階は、季節ごとに内容が異なる企画展が開催されており、円形の中庭の階段から入場する事ができます。

ただし、通常のカサ・ミラの入場料金には、企画展の料金は含まれておりません。別途、企画展の入口でチケットを購入して入場する形になります。入場料金は企画展によって異なりますが、だいたい5ユーロぐらいの場合が多いです。ただし、日本人でカサ・ミラの企画展まで見学される方は少数だと思います。

カサ・ミラの企画展の情報に関しては、公式HPの「Activities」ページで随時確認可能です。

また、全く必要無いとは思いますが、上記HP上で企画展のオンラインチケット予約も可能です。

ギフトショップ

カサ・ミラは館内から出る際に必ず「ギフトショップ」を通過する構造になっています。

カサ・ミラのギフトショップ

お土産は陶器やグラス、マグカップ、文房具など様々ですが、カサ・ミラならではの商品よりも、カサ・バトリョやグエル公園でも見られる、ガウディ全般の商品が中心です。

カサ・ミラ ギフトショップの商品

こちらは、ガウディ関連スポットのギフトショップには必ずある粉砕タイル装飾のグッズです。マグカップやペンケース、コースターなどもありますね。

カサ・ミラ ギフトショップの商品 粉砕タイルの装飾グッズ

もちろん、カサ・ミラグッズもあります。こちらはカサ・ミラの置物と、3Dの書籍です。子供が喜びそうですね。

カサ・ミラ ギフトショップの商品 置物と3Dの書籍

ガウディの曲線デザインを活かした鉛筆、左手側はカサ・ミラの屋上の彫刻が描かれた「フュージングガラス」です。

カサ・ミラ ギフトショップの商品

屋上テラスの換気塔や地上階の鉄の扉風デザインの水筒もあります。

カサ・ミラ ギフトショップの商品 水筒

ガラスケースの商品はやや高額です。数珠の様なネックレスが90ユーロ、屋上テラスの彫刻を象った木製の置物は80~140ユーロもします。

カサ・ミラ ギフトショップの商品 数珠と彫刻置物

こういう置物が好きな男性の方って結構いそうですよね。私も嫌いじゃないです。

Tシャツや半袖シャツもありますが、正直デザインはイマイチでしょうか。あまり惹かれませんでした。どさくさに紛れてガウディと全く関連なさげな商品も販売されています。

カサ・ミラ ギフトショップの商品 Tシャツと半袖シャツ

他にもいろんなお土産がありましたが、当記事でご紹介するのは以上です。ギフトショップを出ると、プロベンサ通り沿いの出口に出ます。出口はこの一カ所だけになります。

プロベンサ通り沿いの出口

ギフトショップに再度入場する事はできますが、カサ・ミラの見学エリアに戻る事はできません。基本はこの時点で観光終了です。この後に食事やお茶をされる場合は、カサ・ミラ内にあるレストランがおすすめです。グラシア通り沿いに入口があります。

レストラン

カサ・ミラ付属のレストラン

カサ・ミラとは入口は別ですが、建物内にレストランも併設しています。店内は家族づれも多く、料金も比較的リーズナブルなので利用しやすいと思います。店内はカジュアルな雰囲気で、装飾や天井の形状などは、カサ・ミラ同様に曲線ベースで非常にユニークです。

ランチ、ディナー、軽食、カフェ的利用までOKです。メニュー料金などの記載はありませんが、店の雰囲気などは「公式HP」を参考にしてください。

カサ・ミラのファサード

カサ・ミラには2つの通りに面して3つのファサードがあります。

カサ・ミラの3つのファサード

下画像は3つのうち、グラシア通りとプロペンサ通りの交差部に面するファサードです。幅20m、高さは30mほどあります。

カサ・ミラ ファサード

ガウディならではの曲線的なフォルムは、まるで波打つ海の様です。ガウディが何をイメージしてこのファサードをデザインしたかは「大波」「山」「砂漠」など諸説ありますが、確かな事は分かっていません。

石の壁面と共に、このファサードの印象を決定づけているのが、バルコニーの鉄製の手すりです。

カサ・ミラ ファサードの鉄製の手すり

この鉄製の手すりは、くず鉄をリサイクルして作られたもので、弟子のジュジョールと共に完成させました。ファサードを大波に例えた場合、この手すりは海藻と考えると結構しっくりきます。

手すりの形は一見ランダムに見えますが、部分的には「ハト」や「仮面」「カタルーニャの紋章」などが象られています。肉眼だとちょっと判別は難しいと思います。

カサ・ミラ ファサードの鉄製の手すり

壁面の白と手すりの黒が織りなすコントラストが見事です。壁面の石材は白みの強いものを、スペイン国内の特別な産地から取り寄せて使用したそうです。

カサ・ミラのファサード

ファサード上部には、屋上テラスの彫刻や、屋根裏の小窓も見えます。

カサ・ミラのファサード

カサ・ミラに関する関連・参考サイト

  • カサ・ミラ公式ページ(英語)カサ・ミラの観光情報や歴史などが詳しく掲載されています。チケット予約もこの公式ページから可能です。

  • カサ・ミラ facebookカサ・ミラの公式facebookページになります。言語はスペイン語になりますが、動画や写真などが豊富に掲載されています。

  • カサ・ミラ instagramカサ・ミラの公式インスタグラムならではの美しい写真が満載です。

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