カサ・ビセンスを徹底解説 – チケット、料金、行き方、見どころなど
本記事では、ガウディ最初期の建築作品である「カサ・ビセンス」のチケット予約・購入方法をはじめ、行き方、入場料金、見どころなどの観光情報を解説致します。
他にも、観光所要時間や歴史など、これから「カサ・ビセンス」観光をお考えの方に向けたお役立ち情報が満載です。
カサ・ビセンスとは - 現在までの建築の歴史
カサ・ビセンスは、バルセロナに10区ある行政区のなかでも最小面積(4.19 km²)のグラシア地区というエリアに建築されたムデハル様式の建築物です。
ムデハル様式とは、イスラム教建築とキリスト教建築を融合したスペイン特有の建築様式で、幾何学模様を多用しているのが特徴です。
この建築を手掛けたのが、当時まだ建築資格を取って5年目、31歳のアントニ・ガウディでした。
カサ・ビセンスは、ガウディにとって初めて設計・建築を手掛けた、個人宅の建築プロジェクトでした。
依頼人はタイル製造業者であった「マヌエル・ビセンス・ムンタネール」と言う人物で、自身の夏の別荘を造るために、カサ・ビセンスの建築を依頼しました。
そして、依頼から2年後の1880年にガウディは設計を仕上げました。しかし、依頼主ビセンスの金銭的な事情などもあり、工事着工は1883年、完成したのは1888年の事でした。
1925年になると、物件所有者の変更に伴い、カサ・ビセンスの拡張化計画が持ち上がります。
この時に建築依頼を受けた「ガウディ」は、サグラダファミリアのプロジェクトで手一杯だったため、代わりに友人の建築家「ホアン バプティスタ セラ デ マルティネス」を依頼主に紹介します。
マルティネスは、ガウディのコンセプトを最大限に尊重しながら、カサ・ビセンスの拡張工事を完成させました。
2014年には、MORABANK(モラバンク)という銀行系グループが、一般公開を目的にカサ・ビセンスの所有権を取得します。
それから約3年ほどの改修期間を経た2017年11月、遂にカサ・ビセンスの一般公開がスタートしました。現在、カサ・ビセンスは、入場チケットを購入すれば、誰でも館内の見学が可能となっています。
カサ・ビセンスの基本情報
営業時間・休館日・その他
営業時間 | 【11月1日〜3月31日】
※ 最終入場は営業時間の1時間20分前までになります。 |
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休館日 | 1月6日、1月13日〜19日、12月25日、 |
公式サイト | https://casavicens.org |
入場料金(チケット料金)
カサ・ビセンスの一般大人の入場料金は16ユーロです。
- ・16ユーロ - 一般大人
- ・14ユーロ - 学生(12-25歳)
- ・14ユーロ - 障害者の方
- ・無料 - 子供(11歳以下)
ガイドツアーに参加する場合は、プラスで3ユーロとなります。ただし、日本語のガイドツアー はありませんので、自由見学が基本になります。
入場チケットの予約・購入方法
カサ・ビセンスの入場チケットは、以下のいずれかの方法で予約・購入する事が可能です。
① カサ・ビセンスの公式サイトで予約する(英語・スペイン語 )
正規ルートである「カサ・ビセンスの公式サイト」からオンライン予約(購入)する方法です。サイトのシステムや造りはしっかりとしているので、英語サイトでの予約に慣れている方であれば、簡単に予約可能です。
公式サイトにアクセスしたら、いくつかチケットの種類が並んでいますが、自由見学の最も一般的なチケットは「Casa Vicens Visit」になります。ガイドと回るガイドツアーなどもありますが、日本語には対応していません。自由見学のチケット予約がお勧めです。
赤いボタン「BUY TICKETS」をクリックすると、チケットが選択できます。その後、予約日時、予約人数、予約者情報などを入力して、クレジットカード決済(JCBも可)が完了すれば予約完了です。
予約完了後は、メールアドレスに「PDFファイルのチケット(画像右)」が添付されてきます。
観光当日は、このプリントアウトした「チケット」を提示すれば、カサ・ビセンスに入場して観光をスタートできます。
もちろん、チケットをスマートフォンの画面上で提示する「モバイルバウチャー」にも対応しています。
現在はチケットのデザインが変更になっている可能性がございます。
② GET YOUR GIDE経由で予約する(日本語)
GET YOUR GIDEというオプショナルツアーサイトの「ガウディ建築 「カサ ビセンス」優先入場」ページ経由でチケットを予約すれば、手数料なしの正規料金でカサ・ビセンスのチケット予約が可能です。
しかも、予約から完了まで日本語で完結できるので、このサイトを利用しない手はないと思います。公式サイトでの予約と同様に、メールで送られてくる「チケット(PDF)」をプリントアウトかモバイルバウチャーとして利用可能です。当日はチケットオフィスに立ち寄る必要もありません。
③ 現地のチケットオフィスで購入する(英語・スペイン語 )
カサ・ビセンスの入場チケットは、現地のチケットオフィスで当日に購入する事ができます。カサ・ビセンスの入口からチケットオフィスに入るまでの流れは、本記事後半の「カサ・ビセンスの入口とチケットオフィス」を参考にしてください。
上記の予約・購入方法のうち、①と②の方法は事前予約になるため、予約時に入場日時を指定する必要がありますが、当日はチケットオフィスに立ち寄る事無くスムーズに入場する事が可能です。
カサ・ビセンスは、2017年に見学が可能となった事もあり、まだまだ旅行者に認知されていない部分があります。そのため「カサ・ミラ」や「カサ・バトリョ」などに比べると混雑はかなり緩やかです。
ただし、サグラダファミリアの2026年の完成が近づくに連れて、間違いなくガウディの初期作品として、注目度が高まって行く事は間違いありません。ここ数年で当サイトの様なブログ記事もかなり増えてきていますので、今後は間違いなく混雑が予想される観光スポットの一つです。
上で紹介した「GET YOUR GIDE」を利用すれば、日本語で手軽に手数料なしの16ユーロで予約できます。しかも、予約完了後は、メールアドレスに送られてくる「PDFファイル」をプリントアウト、もしくはスマートフォン上の画面で表示すれば、チケットとしてそのまま利用できます。
事前準備を怠らない慎重派の方は、是非予約の上で「カサ・ビセンス」を訪問ください。
ロケーションと行き方
カサ・ビセンスは、バルセロナの中でもやや北西側に位置する「グラシア地区」というエリアにあり、観光スポットが集中するエリアからは少々離れております。
地下鉄でのアクセスがお勧めです。
バルセロナの中心部から「カサ・ビセンス」にアクセスする場合は「地下鉄」を利用するのが一般的です。地下鉄の「L3」線の「Fontana 駅 」で降りて徒歩3分(250m)ほど、「Lesseps 駅」で降りて徒歩4分(280m)ほどになります。
カサ・ビセンスの入口とチケットオフィス
カサ・ビセンスの入口は建物の南側「カルリネス通り」に面しています。入口は以下の引きとアップの写真でご確認ください。
入口から敷地内に入ると、細い通路が続いています。
通路の突き当たりを左手に曲がると、チケットオフィス入口があり、正面にはチケット確認係がいます。
事前に公式サイトや、GET YOUR GIDEなどのオプショナルツアーサイトでチケットを予約済(購入済)の方は、正面の係員にチケットを提示して、後は自由に見学をスタートします。ただし、フロアマップ(英語)などはチケットオフィス内のインフォメーションで配布されています。必要な方は入手の上で観光をスタートしてください。
当日にチケットを購入される方は、左手側の入口からチケットオフィスに入り、チケットを購入します。
チケットオフィスは、ちょっとしたお洒落カフェの様な雰囲気です。チケットを購入したら、外の係員にチケットを提示の上で観光をスタートしていきます。
カサ・ビセンスの見学順路と見どころ
カサ・ビセンスは、地下を入れると全部で5階層で構成されています。見学順路は、庭園からスタートして、地上階にあたる0階、1階、2階、屋上の順で観光していきます。屋上見学後は、階段かエスカレーターでギフトショップと出口がある地下1階に降りて見学終了です。本項ではこの順路に沿ってカサ・ビセンスの見どころをご紹介していきます。
庭園と0階の見どころ
見学ゾーンに入って、誰もが最初に目にするのがこの緑豊かな「庭園(The garden)」です。カサ・ビセンスの庭園は、完成当初の19世紀頃と比較すると、最も大きく変わった場所の一つです。かつては、円形の噴水や櫓(やぐら)などもありましたが、住宅が売却されたタイミングで取り壊されました。それでも、2014年からスタートした改修工事によって、当時の景観は可能な限り再現されました。
庭園では、カサ・ビセンスの外観と装飾をいろんな角度から撮影できます。
エキゾチックでオリエンタルな雰囲気が満載です。
庭園の一角にはカフェも併設されています。
カフェは観光終了後にも必ず通過するので、見学後の休憩スポットとして利用すると良いと思います。
庭園をさらに奥に進んで行くと、館内への入口があります。この入口はかつては玄関の窓でしたが、1925年の拡張工事に伴い、玄関のドアに改修されました。
入口右手の鉄格子は「ヤシの葉の門(The fan palm grille)」と名付けられており、ガウディと非常に親交が深かった彫刻家「ロレンソ・マタマラ」の作品です。
元々この門は、正面玄関にアクセスするための出入り口として設置され、後年は敷地全体を囲う様に置かれていました。現在は、建物の南側のみに設置されています。
館内に入場し、エントランスホールを通って奥に進むと「ダイニングルーム(The dining room)」があります。
部屋の中央には暖炉が置かれ、家具は全て取り外しができない「作り付け」になっています。また、部屋内には全て同じバルセロナ画家による34点の油彩画も飾られています。
ダイニングルームを抜けて奥に進んで行くと「喫煙ルーム(Smoking room)」に出ます。
色彩タイルの装飾が見事なこの部屋は、その名の通り「喫煙ルーム」として造られた部屋で、写真中央の扉は庭園へと通じています。部屋内の色彩タイル装飾は、オリジナルに忠実に復元されたものです。壁面の青と黄色の一松模様タイルにはマリーゴールドがあしらわれています。
壁面の建築素材の一部には、18世紀頃からヨーロッパを中心に使用されていた「パピエマシェ」が使用されています。
続いて、階段を登り1階(日本の2階)に上がります。ガウディ中期以降の建築作品と比べると、階段のデザインがまだ直線的です。
1階の見どころ
カサ・ビセンスの1階で最も広いスペースを占有するのが、同フロア中央に位置する「寝室(The bedrooms)」です。奥のテラスから降り注ぐ太陽光が部屋に癒しを与えています。
寝室の壁面上部には植物模様があしらわれ、床の壁面はローマンモザイクで覆われています。
寝室の奥の扉は「テラス(The terrace)」へと通じています。
テラス外側の壁面に沿って、金網の柵と一体になった木製のベンチが配置されています。
テラスは敷地内の植物を見渡したり休憩するには持ってこいの場所です。
寝室の隣には「丸天井の部屋(The domed room)」と呼ばれる部屋があり、大きな天井画が描かれています。
この天井画は立体的に見えますが、実際は完全に平面で「トロンプ・ルイユ」と呼ばれるだまし絵の手法が用いられています。
丸天井の部屋の隣には、隙間がないほどの植物模様が見事な「青い部屋(The blue room)」があります。
恐らくこの植物模様は「木蔦(きづた)」がモチーフになっています。この木蔦模様は、カサ・ビセンスの至る所で見ることができます。
この青い部屋に面してトイレもあります。ちょっと落ち着けそうもないトイレです。
2階の見どころ
カサ・ビセンスの2階は、屋根裏部屋となっています。元々は使用人のための部屋でしたが、現在はオープンスペースとなっており「常設展示」が行われています。展示内では、カサ・ビセンスで行われた改築工事や建築の歴史はもちろん、装飾に用いられている技法や素材についても知ることができます。
以下より展示内容の一部をご紹介致します。こちらは、カサ・ビセンスの歴史を解説付きのパネルで紹介しているコーナーです。完成直後からの建築の変換や修復過程が詳しく解説されています。
カサ・ビセンスの模型も展示されています。
実際にカサ・ビセンスの室内や外壁に用いられている装飾タイルの展示コーナーもあります。このタイルは同時期にガウディが建設を担当していた「エル・カプリチョ」でも同様のものを見ることができます。
タイル装飾の写真付きリストの様なものもあります。
カサ・ビセンスの見どころを紹介した映像コーナーも完備されています。座席もあるので、映像を見ながら一休みできます。
3階(屋上)の見どころ
カサ・ビセンスの屋上は展望フロアとなっています。通路内側の壁は暖かみのある赤色で、外側の黄色と緑のタイル装飾をコントラストで際立たせています。屋上通路の角や屋根付近に建つドーム付きの塔は、アラブや東洋建築の影響が強く見られます。
屋上は、一周できる訳ではなく、通路として歩けるのは、建物の東側一角のみです。所要10分もあれば十分観光できる見学スポットです。
また、壁越しに景色を見渡す事もできますが、4階建てなので絶景という訳ではありません。
ギフトショップ
地下一階(-1階)の出口に向かう際には、必ず併設のギフトショップも通過します。カサ・ビセンスのギフトショップは、お土産屋というよりは小洒落た雑貨屋という感じです。以下より、いくつかご紹介します。
こちらは、カサ・ビセンスのタイル装飾をあしらった商品です。
タイル柄のコースター、花瓶のカバー、電気スタンドカバーなど、珍しい商品があります。
続いて、カサ・ビセンスのイラストが書かれた商品各種と扇子です。扇子には植物模様があしらわれています。
ばらまき土産の定番「マグネット」は種類豊富です。中央の丸形のマグネットはメイドイン「バルセロナ」の木製品です。
解説本各種も充実していますが、日本語のものはありませんでした。また、カサ・ビセンスというよりは「ガウディ」に関する書籍がほとんどです。
個性的でお洒落な花瓶なども販売されていますが、もはや「カサ・ビセンス」とは関連性がほとんどありません。
ギフト商品の紹介は以上です。ギフトショップの商品は数も少なめなので、5分~10分もあれば一通り網羅できると思います。
ギフトショップの奥に、入場時に通過した「庭園」へと通じる「出口」のドアがあります。
外観と装飾の見どころ
個人的な意見ですが、カサ・ビセンスの一番の魅力は外観に施された美しい装飾の数々だと思います。館内見学中も、庭園や屋上などから間近に見える美しい装飾群に目を凝らしてみてください。
カサ・ビセンスの建築素材には、石材、レンガ、セラミック、錬鉄、木材などが使用され、素材本来の質感が最大限に活かされています。建物自体の構造は非常にシンプルですが、そこに鮮やかな装飾を施す事で「カサ・ビセンス」ならではの個性が発揮されています。
装飾には植物や動物のモチーフを多用し、依頼主がタイル業者であった事を最大限に生かし、装飾に色彩タイルをふんだんに使用されています。そして、装飾の中で特に多用されているのが「マリーゴールド」模様のオレンジタイルです。これは、建設前の敷地内にマリーゴールドの花が咲き乱れていたためだと言われています。
カサ・ビセンスの装飾は、赤色がキーカラーになりながら、他の色も際立たせています。また、ガウディ作品の代名詞でもある曲線的なデザインは見られず、全体的に直線的なデザインとなっているのが特徴的です。
観光所要時間の目安
カサ・ビセンスの、見学所要時間の目安は、60分〜70分ほどです。
カサ・ビセンスは、-1階〜3階の5フロアで構成されています。日本式に言えば、地下1階〜4階で構成されています。
カサ・ビセンスで配布されているパンフレットには、0階から3階までの4フロアに全部で16箇所の見学ポイントがあり、地下1階はギフトショップになっています。見どころをひと通りじっくりと見学してギフトショップにも立ち寄ると、所要60分ぐらいはあっと言う前だと思います。
ただし、見学ペースは皆さん次第なので、所要30分でも一通りの見学は不可能ではないと思います。ご自身の予定に合わせて随時ご調整ください。
まとめ
本記事の中で何度か触れましたが、この「カサ・ビセンス」は2017年に一般見学が可能になったばかりの見学スポットです。
日本のガイドブックなどでもさらりと触れられている程度なので、ガウディの作品の中では知名度は低めではあります。しかし、ガウディの集大成が「サグラダファミリア」とするなら、最初期に手がけられたこの「カサ・ビセンス」はガウディの原点とも言える作品です。
是非、サグラダファミリアとセットでこの「カサ・ビセンス」にも足を運んでみてください。見応えは十分なので、非常にお勧めできる観光スポットです。
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