サグラダファミリア 内部とステンドグラスを徹底解説
本記事では、サグラダファミリア大聖堂内部の美しさを余すことなくご紹介致します。
サグラダファミリアの外観は、中世と近代芸術が融合した詳細な彫刻群が見事ですが、大聖堂内部は、まるで自然の中にいる様な幻想的空間が広がっています。次項以降ではその魅力を豊富な写真と解説を交えてお伝えしていきます。
サグラダ・ファミリアの内部見学には入場チケットが必要となります。入場までの流れ、チケット予約、料金の詳細などは以下の記事にて詳しく解説しております。
まるで森の様な空間!大聖堂内部を紹介
最初に大聖堂に入ると、自然光で美しく輝くステンドグラスの数々に目をうばわれます。この聖堂内部は、ガウディが1922年に作成した設計図案に基づいて建設されており、自然界の森を表現しています。確かにまるで森に木漏れ日が指すかの様な幻想的な世界が広がっています。
大聖堂内部の総面積は4,500㎡、中央身廊と左右に2つづつの側廊を持つ5廊式で構成され、教会の形状は、十字の中心がやや上方にある「ラテン十字型」の形状をしています。ちなみに縦と横の長さが等しい形状の場合はギリシャ十字型と言います。
5つの身廊
初代設計主任であった「ビリャール」は、3廊式のラテン十字型の教会を構想していましたが、ガウディが設計主任になると、3廊式から5廊式に拡張した新たな設計を行いました。
中央身廊の幅は15メートル、床からヴォールト(アーチを平行に押し出した形状の天井)までの高さは教会の5つの身廊幅と同じ45メートルに設定されています。
側廊の上部には聖歌隊席が設けられています。
通常、聖歌隊席は、教会後陣の前方あたりに設けられる事が多いですが、サグラダファミリアでは信者との一体感を出すために、側廊側に聖歌隊席が設けているそうです。参考までに聖歌隊とは、礼拝やミサで賛美歌や聖歌を歌う合唱団の様なものです。
翼廊
教会の縦の回廊(身廊)と交差して十字型を形成する横長の部分を翼廊と言います。翼廊の左右の端では「生誕のファサード」と「受難のファサード」の内側を見ることができます。
写真左側の「生誕のファサード」は全体的に丸みを帯びているのに対して、反対側の「受難のファサード」は全体的にパーツが角ばっているのが対照的です。
生誕のファサード側には、サグラダファミリアの創設者とも言える「ブカベリャ」が信仰する「ヨセフ」の像が、生誕のファサード側には「聖母マリア」の像が飾られています。
生誕のファサード側と受難のファサード側を結ぶ(東西を結ぶ)翼廊の長さは60メートルあり、生誕側のイエスの「誕生」から「死」、そして「復活」までの「イエス・キリストの道」を表現しています。下の聖堂内地図の黄色の部分が「キリストの道(翼廊)」です。
この翼廊の中央部分は教会内部で最も天井が高く、60メートルの高さがあります。そして、その真上にはサグラダファミリア最大の塔となる、高さ172.5メートルの「イエスの塔」が建設中です。上の図で言うと①の部分にあたります。
中央祭壇(聖壇)と後陣
続いて、教会の後陣部分、教会で最も重要な中心核となるのが中央祭壇(聖壇)です。
中央祭壇の上部には祭壇を覆う様に大きな天蓋が吊されています。この天蓋は、ガウディが以前にマヨルカ大聖堂の改修プロジェクトで制作した天蓋が元になっています。
天蓋からは、高さ1.9mのキリストの磔刑像が吊されています。この像は実際の人のポーズを元にして形作られました。更にその真下には中央祭壇が置かれ、中央祭壇に向かって右下の白い綿の様な部分には、生まれたばかりの「キリスト」が横たわっています。
中央祭壇の右手側の通路から後陣に向かって歩いて行くと、祭壇側に「地下礼拝堂」が見える窓があります。
この礼拝堂には、初代建築主任「ビリャール」と、2代目建築主任「ガウディ」の遺体が眠っています。
地下礼拝堂は受難のファサード側、チケット売場の左手側に入口があります。地下礼拝堂の入口は有料エリアの外になるので、ミサ以外の時間は無料で入場する事ができます。
聖堂内の最奥部には、後陣の半円形の外周に沿って7つの小聖堂があります。これらは全て「聖ヨセフ」に捧げられた聖堂になります。
樹木の様な柱
サグラダファミリア大聖堂内部は柱の形状とデザインだけを取っても非常に独創的です。ガウディは自然界の摂理に従った研究を行い、天井に近づくほど内側にカーブを描く「樹木の様な柱」を、自らが死去する2年前の1924年に考案しました。
先が枝分かれした柱は自然界にある木々の幹にインスピレーションを受けて設計されたものです。これはデザイン的な面だけでなく、天井の荷重を分散させるという機能的な役割も果たしています。
サグラダファミリアの聖堂は全部で36本の柱で支えられており、それぞれの柱が支える重さによって「斑岩」「玄武岩」「花崗岩」「モンジュイック産の石」の4つの素材を使用しています。各柱の配置や本数などは、聖堂内の説明ボード(画像下)で確認する事ができます。
最も太い柱は、ラテン十字の交差部分を支える4本の斑岩素材の柱で、直径は2.1メートルあります。
この4本の柱上部の交差部には楕円形の光源が飾られています。
これらは福音史家を象徴するテトラモルフォで、左から福音史家の「マルコ(獅子)」「マタイ(天使)」「ルカ(牡牛)」「ヨハネ(鷲)」を現しています。
ステンドグラス
樹木の様な柱と共にサグラダファミリア大聖堂内の神秘的な景観を造り出している源が、色鮮やかに輝くステンドグラスです。
通常、教会のステンドグラスは、暖色系と寒色系が1つのステンドグラス内に混合していますが、サグラダファミリアでは、暖色と寒色のステンドグラスを明確に分けているステンドグラスが多いです。
また、ステンドグラスには宗教画を用いず、曲線と直線を中心とした抽象的なフォルムだけでデザインされています。
これらのステンドグラスは、バルセロナの画家でありガラス職人の「ジュアン・ビラ・イ・グラウ」が全て手がけました。
自然光がステンドグラスを通して床さえも美しく照らします。
ステンドグラスはサグラダファミリア大聖堂内の至る所に飾られています。
【生誕のファサードのステンドグラス】
【受難のファサードのステンドグラス】
【後陣のステンドグラス】
聖堂内部 その他の見どころ
聖ゲオルギオスの彫像
大聖堂のメインエントランスとなる「栄光のファサード側(建設中)」の上部には、大聖堂を見渡すかの様に「聖ゲオルギオス(聖ジョルディ)の彫像」が飾られています。
聖ゲオルギオスは、竜殺しで有名なカタルーニャ地方の守護聖人です。この彫像は、受難のファサードを手がけた「スビラックス」の作品です。
栄光のファサードのブロンズ扉
上でご紹介した「聖ゲオルギオスの彫像」の真下あたりには、栄光のファサード完成後に取り付けられる「ブロンズの扉」が展示されています。
この扉には世界中のあらゆる言語が記述されており、中にはスラムダンクとバガボンドで有名な漫画家「井上雄彦」さんの文字「われらの父」も刻まれています。
鏡のテーブル
聖堂内、栄光のファサード側の「ブロンズ扉」前方付近には、いつも人だかりが出来ている「鏡のテーブル」があります。
鏡を覗き込むと、聖堂のヴォールト天井部分が綺麗に写し出されています。
この天井の景観自体は、わざわざ鏡越しに見なくても、上を見上げれば同じ景観が見えますが、自撮りする際に鏡を利用すると便利です。
螺旋階段
サグラダファミリアの大聖堂内には4か所の螺旋階段があります。下画像は聖堂の最奥部の後陣にある螺旋階段です。
観光客は利用できませんが、各螺旋階段は聖堂の聖歌隊席から側廊上部の通路、地下礼拝堂までを一つに結んでいます。
回廊と聖具室
大聖堂内から受難のファサード側に出る手前には、「聖具室」へと続く長い回廊があります。この回廊の一部ではガウディが生前に作った作品や聖具などが通路に沿って展示されています。
展示が行われている回廊の入口は、受難のファサードのエレベーター乗り場を背にして、反対側の奥になります。
展示品をいくつか紹介します。まずこちらは地下礼拝堂用の「可動式説教壇」のレプリカで1943年に制作されました。説教壇とは聖職者が信者に向けて説教を行う壇上の事です。
こちらも1943年に制作されたレプリカで、地下礼拝堂のミサなどで使用される椅子と祈祷台になります。
この地下礼拝堂のキャンドルスタンドは、主にイースター(復活祭)の際に使用されていたそうです。
ガウディが「コロニア・グエル教会」用に制作した椅子も展示されています。
この椅子は、ガウディの支援者「グエル」運営の織物工場で使用されていた「鉄」と「木材」が材料になっており、背もたれは後年になってから追加されました。
回廊の奥は「聖具室」に繋がっています。聖具室内では、ガラス越しにガウディが制作した貴重な聖具を見学する事ができます。
恐らくこちらは、信者が神父に懺悔や告白をする「告解部屋」とその扉だと思われます。この告解部屋はガウディが1897年に制作したオリジナルで、スペインの市民戦争で一度は深刻なダメージを受けましたが、後年に修復されました。
下の写真はこの聖具室の外観になります。
展示が行われている回廊の入口は、受難のファサードのエレベーター乗り場を背にして、反対側の奥になります。
展示品をいくつか紹介します。まずこちらは地下礼拝堂用の「可動式説教壇」のレプリカで1943年に制作されました。説教壇とは聖職者が信者に向けて説教を行う壇上の事です。
こちらも1943年に制作されたレプリカで、地下礼拝堂のミサなどで使用される椅子と祈祷台になります。
この地下礼拝堂のキャンドルスタンドは、主にイースター(復活祭)の際に使用されていたそうです。
博物館
サグラダファミリアの全ての入場チケットには、博物館の入場が含まれております。博物館では、ガウディの生前のスケッチや写真、模型、関連資料などが展示されています。
博物館の入口は、サグラダファミリアの生誕ファサードと受難のファサード側の両方にありますが、受難のファサード側の入り口から入場するのが順路になっています。入口近くの「Museu」と書かれた看板が目印になります。
博物館に入場する際は、特にチケット確認などはありません。入場すると、ガウディのパネルが我々を迎えてくれます。
順路に沿って進むと、サグラダファミリアの歴史が写真とパネルで年代順に紹介されているエリアに出ます。
写真パネルの展示エリアを抜けると、サグラダファミリアの模型などが展示されているエリアに出ます。
塔の先端や装飾パーツの模型なども数多く展示されています。
このガウディがデザインした塔の鐘は、細長い管の形状をしているのが特徴的です。
模型の制作現場も、ガラス越しに見る事ができます。訪問タイミングによっては、実際に作業をしている姿を見ることができます。
右奥には現在建設中の「イエスの塔」や「福音史家の塔」の模型も見えます。栄光のファサードの建設に取り掛かるのは、これらの塔が完成してからになりそうですね。
その栄光のファサードの模型も展示されています。
受難のファサードの模型もあります。
こちらのガウディの顔模型は、受難のファサードの彫刻を手がけた「スビラックス」の作品です。受難のファサードの彫刻同様に、角張ったフォルムが特徴的です。
塔や壁面に使用されている装飾パーツの説明エリアもあります。ベンチもあるので休憩場所としてもお勧めです。
これは「逆さ吊り実験」と呼ばれるガウディの有名な実験技法を再現したものです。
この技法は、紐に重りをつけて逆さに吊るす事で、その形状が構造的に安定するかどうかを確認するために用いられました。
ガウディは、逆さ吊り実験で形造られたフォルムを撮影し、写真で逆さに見る事で、フレーム構造のデザインに役立てました。この実験で生み出される一つ一つのアーチは「フニクラ(カテナリーアーチ)」と呼ばれ、物理的学的に安定した構造である事が証明されています。
下画像は、ガウディが「コロニア・グエル教会」の建設の際に、実際に逆さ吊り実験を用いた時の写真です。ガウディはこの実験だけで十年の歳月を費やしました。
2010年11月、ローマ法王「ベネディクト16世」をサグラダファミリア大聖堂に招いた時の写真パネルも展示されていました。
この時のミサによって、サグラダファミリアは正式にキリスト教会に認定されました。
出口付近のパネルには、サグラダファミリアの歴代建築家の名前が年代順に並んでいます。
参考までに、ガウディがサグラダファミリアの2代目建築主任に就任したのは、1883年になります。
サグラダファミリアの建築の歴史については以下の別記事にて詳しく解説しております。
博物館を出ると、生誕のファサード側にあるギフトショップ付近に出ます。
ギフトショップ
サグラダファミリアは生誕のファサードと受難のファサードの両方に出口がありますが、生誕側の出口は「ギフトショップ」を必ず通過する構造になっています。
以下より、おすすめのサグラダファミリアグッズをご紹介していきます。
まずはこちら、サグラダファミリアのステンドグラス模様をあしらったグッズ各種です。マグカップや食器、トートバックから眼鏡ケースまでそろっています。デザイン的にもおしゃれ雑貨という感じでお土産としても喜ばれそうです。
サグラダファミリア大聖堂や塔のイラストが入ったマグカップは、陶器からガラスまで、いろんな素材のタイプがあります。
サグラダファミリアやガウディの解説本も種類豊富です。日本語の解説本も多く、しっかりとした翻訳のものも結構あるのでお勧めです。
定番のポストカードもラインナップは豊富です。
鐘楼の先端部分を象ったオーナメントは70ユーロとかなり高額なグッズです。
ガウディお得意の破砕タイルのモザイク模様をあしらった商品も各種揃っています。
文房具からコースター、折り畳み傘、グエル公園のトカゲのオブジェクトまであるので、サグラダファミリアグッズというよりはガウディグッズに近い感じです。
中にはサグラダファミリアのイラストが入ったショールなども販売されています。メモ帳、ノート、マグカップは異なるデザインのものがギフトショップの至る所にあります。
サグラダファミリアの置物も、高級そうな素材からすぐに壊れそうなものまでバリエーション豊かです。
サグラダファミリアに限らず、バルセロナの観光スポットのショップでは扇子がかなりの確率でおかれていました。
棚の中の商品は、植物や昆虫、果物など、ガウディが装飾のテーマーとして扱っているものをあしらったグッズ各種です。
まとめ
大聖堂内部やステンドグラスの紹介は以上です。サグラダ・ファミリアは外観の迫力だけでも圧倒的なので、内部入場せずに満足されてしまう方もいますが、バルセロナまで足を運んだのであれば、絶対に内部見学もお勧めです。是非、事前にチケット予約の上、幻想的空間に心を奪われてください。
また、サグラダファミリアは内部見学以外にも「付属の塔」の見学も可能です。サグラダ・ファミリアについてより詳しく知りたい方は以下の記事なども参考にしてください。
この記事をシェアする