グエル公園を攻略 – 行き方、見どころ、所要時間、回り方
本記事では、バルセロナ「グエル公園」の行き方や見どころ、所要時間、モデルルート、歴史などについて詳しく紹介いたします。これからグエル公園観光をお考えの方に向けて、役立つ情報が満載です。
グエル公園のチケットを予約・購入したい方は、以下の記事にて詳しく解説しております。
グエル公園の歴史と成り立ち
グエル公園の成り立ちは、創設者の「エウゼビ・グエル」が、「田園都市論」という考え方に強い影響を受けた事に端を発しています。
「田園都市論」とは、イギリスの社会改良家「エベネーザー・ハワード」が1898年に提唱した人間の生活の在り方に関する理論です。ざっくり言うと、都市生活の良い点を残しながらも、自然と共生した生活が大事という考え方です。
グエルはこの「田園都市論」に基づき、豊かで広大な緑地の中に、富裕層向けの新興住宅地の建設を計画しました。これがグエル公園の前身になります。
そして、この壮大な建設プロジェクトに強く共感し、建設の仕事を引き受けた人物こそ「アントニ・ガウディ」です。
既に依頼主と建築家と言う関係以上に深い友情で結ばれていた2人は、夢の実現に向けて早速動きだします。
グエルはまず、当時モンターニャ ペラダ(禿山)と呼ばれていた広大な敷地を、プロジェクトの建設地として購入しました。
グエルとガウディの計画は、未来の居住者の新しい生活を想定した壮大なもので、当初は広大な敷地内に60戸の建設を予定していました。
さらに、市場や礼拝堂、雨水をろ過して貯蔵する貯水槽、イベント広場、車道や歩道の整備など、人間のコミュニティに必要なあらゆるものが想定されていました。
しかし、買い手として考えていたブルジョアジーの興味を引く事が全くできず、60戸のうち建設が実現したのはガウディとグエルが住んだ二戸のみでした。
1900年からスタートした建設プロジェクトも、最初の数年間はスムーズに進みましたが、複雑な分譲条件や閉鎖的なロケーションであった事に交通の便の悪さなども相まって、1914年に計画を中止せざるを得ませんでした。
以後、ガウディとグエルの生前に建設プロジェクトが再開される事はありませんでした。
1918年にグエルが亡くなると、建設地はバルセロナ市庁によって買い取られます。4年後の1922年には「グエル公園」として、一般公開が開始され、1984年にはユネスコの世界遺産にも登録されます。
現在、グエル公園は「お菓子の家」や「大階段とトカゲの像」「波型のベンチ」など、多くの見どころを有する人気観光地となっています。
グエル公園の基本情報
本項ではグエル公園観光の基本となる見学エリアの概要や営業時間、チケット料金などについてご紹介いたします。
無料エリアと有料エリアについて
2013年9月以前までは、グエル公園への入場は完全に無料でしたが、2013年10月より敷地内の一部が「有料エリア」となりました。
グエル公園全体の総面積「19ヘクタール」のうち、有料エリアは「12ヘクタール(全体の64%)」と、半分以上を専有し、ガウディの「大階段(トカゲの像)」をはじめとするほぼ全ての主要モニュメントは「有料エリア」内にあります
有料エリアと無料エリアの境に関しては、公式サイトに掲載されている以下のマップにてご確認ください。赤枠内が有料エリアになります。
有料エリア内を見学するには必ず「入場チケット」の購入が必要となります。
営業時間
グエル公園の入場時間は時期によって異なります。一般観光客の方が入場可能な時間帯は以下のとおりです。
期間 | 営業時間 |
---|---|
2022/10/27~12/31、 2023/1/1~2/10、 | 9:30~17:30入場まで |
2023/2/11~3/25 | 9:30~18:00入場まで |
2023/3/26~6/30 | 9:30~19:30入場まで |
2023/7/1~8/31 | 9:00~19:30入場まで |
2023/9/1~10/28 | 9:30~19:30入場まで |
2023/10/29~12/31 | 9:30~17:30入場まで |
グエル公園敷地内の営業時間は朝7時から22時までとなっておりますが、上記表で記した以外は、地元住民とバルセロナ市民の方が有料エリアに無料入場できる時間帯となります。一般の方は有料エリアへ入場できません。
チケットの種類と料金
グエル公園のチケットは、自由見学、団体ツアー、少人数ツアーの3種類がありますが、一般の方の9割以上が「自由見学」で園内を見学します。以下の表は自由見学のチケット「Admission ticket」の概要や料金情報をまとめたものです。
Admission ticket(一般入場チケット)
グエル公園に入場して自由に見学できる最も一般的なチケットです。予約は90日先まで可能です。
見学方法 |
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料金 | ■ 一般(13〜65歳)
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料金に含まれるもの |
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年齢の若い方やシニアの方には割引特典があります。
チケットの予約・購入方法
グエル公園のチケットは以下の何れかの方法で購入が可能です。
- ① グエル公園の公式サイトでチケット予約
- ② GET YOUR GIDEでチケット予約(日本語)
- ③ 現地のチケットオフィスで購入
上記のうち、①の「グエル公園の公式サイト(英語)」か、②の「GET YOUR GIDE(日本語)」で、チケットを事前にオンライン予約しておけば、予約特典である無料シャトル「グエルバス」の利用が可能になります。また、観光当日はチケット購入の混雑に巻き込まれる事なく、予約した日時にスムーズに入場が可能となります。グエル公園観光は事前のオンライン予約が絶対にお勧めです。
グエル公園のチケット予約・購入方法に関しては、以下の記事にて詳細に解説しております。
グエル公園のロケーションと行き方
グエル公園はバルセロナの北側、他の観光スポットとはやや離れた場所に位置しております。まずは以下のグーグルマップで他の観光スポットとの位置関係をご確認ください。
バルセロナ市内からグエル公園へのアクセス方法はいくつかありますが、以下4通りのいずれかの方法でアクセスするのがお勧めです。
- ① タクシーでアクセス
- ② カタルーニャ広場から市バスでアクセス
- ③ Lesseps(レセップス駅)から徒歩かバスでアクセス
上記はおすすめ度の高い順に上から記載しています。各アクセス方法の概要については、後ほど詳しく紹介致しますが、まずはグエル公園の有料エリア入口をご確認ください。
地図上にピンク丸で記した5箇所が公式サイト上で案内されている「グエル公園入口」になります。
どの入口から有料エリアへ入場するかは自由ですが、アクセス経路によって、到着位置が異なってきますので、基本は到着した地点から最も近いグエル公園の入口から入場してください。
① タクシーでアクセス
サグラダファミリアやサンパウ病院付近から、グエル公園にアクセスする場合は、タクシーを利用してしまった方が手っ取り早いです。バルセロナのタクシーは黒と黄色のツートンカラーが目印です。バルセロナ市内からグエル公園までは所要約15分ほど、運賃も10~15€ほどでアクセスできると思います。タクシーを利用した場合は、グエル公園の南側、メインエントランスの前あたりで下ろしてくれます。グループ旅行の方などは、タクシーを利用した方が割安な場合があります。
料金は、曜日や時間帯によっても変動しますが、基本料金「2.2~2.3€」で、以後は1kmごとに「1.4~1.7€」づつ加算されます。
以下はあくまで目安ですが、主要スポットからグエル公園までの距離と、おおよその料金を記したものになります。タクシー利用時の参考にしてください。
出発場所 | 料金目安 | 距離の目安 |
---|---|---|
サグラダファミリア | 7〜12€ | 約3km |
カサミラ | 7.5〜12.5€ | 約3.2km |
サンパウ病院 | 8〜13€ | 約3.5km |
カサバトリョ | 10〜15€ | 約4.9km |
カタルーニャ広場 | 11〜16€ | 約5.6km |
ピカソ美術館 | 13.5〜18.5€ | 約6.3km |
グエル邸 | 15〜20€ | 約7.2km |
上記は、グーグルマップで取得した距離を元に算出した、おおよその料金目安になります。実際は交通状況などによっても変動しますので、料金感覚にはある程度のバッハを持ってご利用ください。
② カタルーニャ広場から市バスを利用してアクセス
カタルーニャ広場から市バスの24番を利用して、グエル公園の東側の入り口から入場する方法を解説します。24番のバスは、グエル公園前に停車しないという情報もありますが、グーグルマップや、停留所のルートを確認する限りでは、まだ利用可能な様です。ただし、確認はしておりませんので、念の為、乗車時に「トゥー グエルパーク?」と尋ねるのが無難です。
この方法の場合、グエル公園までは徒歩も含めて所要30分ほどになります。以下よりステップ別に、行き方の流れを簡単にご説明します。
STEP1 カタルーニャ広場の東口からバス24番に乗車
24番の市バスは、カタルーニャ広場の北西側「El Carmel 停留所」から発着します。以下のグーグルマップで場所をご確認ください。
24番のバス乗り場は、大型デパート「エル コルテ イングレス」を目印にすると見つけやすいです。
奥に見えるのが大型デパート「エル コルテ イングレス」です。このアングルを覚えておけば、すぐに24番バスの乗り場を見つける事ができます。
STEP2 「Ramiro de Maeztu - C N Catalunya停留所」で下車
カタルーニャ広場のバス停留所「El Carmel」から、グエル公園東側の「Ramiro de Maeztu - C N Catalunya 停留所」までは16駅目、所要27分ほどです。以下にカタルーニャ広場からグエル公園までの停留所名を記しましたので、参考にしてください。
- El Carmel(カタルーニャ広場)
- Pg de Gràcia - Gran Via
- Pg. de Gràcia - Aragó
- Pg. de Gràci Mallorca
- Pg de Gràcia - Diagonal
- Gran de Gràcia - Jesús
- Gran de Gràcia - Trav de Gràcia
- Gran de Gràcia - Metro Fontana
- Gran de Gràcia - Pl Trilla
- Gran de Gràcia - Lesseps
- Trav de Dalt - La Granja
- Trav de Dalt - Torrent de les Flors
- Camèlies - Pau Alsina
- Av Mare de Déu de Montserrat - Sanllehy
- Ramiro de Maeztu - Pl Sanllehy
- Ramiro de Maeztu - Miquel Sants Oliver
- Ramiro de Maeztu - C N Catalunya(グエル公園の最寄り停留所)
STEP3 バスを下車して徒歩でグエル公園にアクセス
グエル公園の最寄り停留所で下車後、グエル公園敷地内への入口までは徒歩2分〜3分ほどです。市バスを利用した場合も「グエルバス」を利用した場合と同様に、グエル公園東側の入り口(画像下)から敷地内に入場します。
バスの下車場所からグエル公園までのルートは以下のグーグルマップにてご確認ください。
③ Lesseps駅から徒歩かバスでアクセス
グエル公園には、地下鉄 L4線「Lesseps(レセップス駅)」からも、徒歩かバスでアクセスする事ができます。
徒歩でアクセスする場合
「Lesseps 駅」から徒歩でアクセスする場合、西側からのアクセスになるので、グエル公園南西側の入口までは徒歩15分ほどになります。
レセップス駅からの徒歩でのグエル公園アクセスは、極力交通機関を利用したくない方にはお勧めですが、往路はかなりの坂道になります。
バスでアクセスする場合
「Lesseps 駅」から24番のバスを利用した場合は、グエル公園東側の入口まで約15分ほど、116番のバスを利用した場合は、グエル公園西側の入口まで約10分ほどです。116番のバスの方が乗車時間は短いですが、バスはグエル公園西端の入口付近に停車するので、有料エリアに出るまで無料エリアをかなり歩く羽目になります。
グエル公園の見どころを一覧形式で簡単に紹介
敷地内の「所要時間」や「モデルコース」「各スポットの詳細」などについては、順を追って解説していきますが、まずは敷地内の見どころを一覧形式で簡単にご覧ください。
画像をクリックすると拡大し、「詳細解説へ」ボタンをクリックすると、その見学ポイントの詳細解説部に移動します。
- 守衛小屋と管理事務所
グエル公園のメインエントランスを飾る2棟のメルヘンチックな建物。
- 大階段とトカゲの像
ユニークな3つの噴水が設けられた大階段とグエル公園のシンボル「トカゲ像」。
- 市場とドーリス式の列柱
大階段の上部に設けられた「市場」と呼ばれる広いエリアで、高さ5メートルの列柱が86本並んでいます。
- ラ・ナトゥーラ広場と波形のベンチ
楕円形をした総面積は2694㎡の広場。有名なフォトジェニックポイント有。
- 洗濯女(ブガデラ)の回廊
女性像の柱「カリアテッド」が並ぶ回廊。「洗濯女」と呼ばれる柱があり、頭上に洗濯道具を持っています。
- 高架橋
ガウディの支援者グエルの邸宅だった場所で、現在は学校となっている。
- カルヴァリーの丘
グエル公園の最も高台に位置する展望スポット。
- ガウディの家(ガウディ博物館)
かつてはガウディの家だった建物で現在は博物館として利用。入場は別途チケットが必要。
- 高架橋
敷地内の移動通路の役割を担う地元産石材を使用した高架橋。
所要時間とモデルコース(回り方)
グエル公園観光の所要時間は、有料エリアだけなら60分、無料エリアの一部を含めると所要90分ほどが目安になります。
グエル公園観光のモデルコース
以下よりご紹介するモデルコースは、「グエルバス」を利用して、グエル公園東側の「❸ 有料エリア入口」から入場する事を前提としています。ただし、他の入口から入場される方も参考になるルートとなっておりますので、多少だけ見学順序を変えるなどしてご調整ください。所要時間的にはさほど変わらないと思います。
所要60分の見学コース
所要90分の学コース
モデルコースの各スポットの詳細は次項の「グエル公園の見どころ」より詳しくご紹介していきます。
グエル公園の見どころを徹底解説
本項では、有料エリア内にあるグエル公園の見どころを詳しく紹介致します。
お菓子の家 - ①守衛小屋 と ②管理事務所
グエル公園の中でも一際イマジネーション溢れるのが、グエル公園のメインエントランス左右に設けられている「守衛小屋(写真左)」と「管理事務所(写真右)」の2つの建物です。
ガウディはこの2棟のメルヘンチックな建物を、敢えてメインエントランスに配置する事で、グエル公園の敷地外と敷地内は別世界である事を強調しました。「サルバドール・ダリ」が「まるで砂糖をまぶしたタルト菓子の様だ」と言った事から「お菓子の家」とも呼ばれています。
グエル公園は元々、集合住宅エリアとして構想されていたため、2つの建物は訪問客を迎えたり、敷地を管理する建物として機能的に設計されました。
現在の守衛小屋(画像下)はバルセロナ市の歴史博物館となっており、日中は行列ができる人気の見学ポイントとなっています。
下写真は歴史博物館の入場待ちの行列です。
看板にはこの場所から45分待ちと記載されていますが、実際はもう少し早く入場できると思います。この場所に時間をかけるよりも、グエル公園の敷地内をくまなく散策する方がお勧めです。
メインエントランスに向かって右側の高い方の建物が「管理事務所」です。
管理事務所は、この場所を訪問するお客様を迎えたり、待合室として利用するために建てられました。現在はギフトショップとしてお土産や書籍などが販売されています。ギフトショップの商品に関しては、本記事の後半でご紹介します。
高さは29メートルある塔の頂部には「四本腕の十字架」と呼ばれるオブジェクトが飾られています。この十字架は1936年の内戦で破損しましたが、後年に修復されました。
屋根には、まるでお菓子の様に可愛い装飾オブジェクトがおかれています。
③ 大階段とトカゲの像
1903年に完成したこの左右対称の大階段は、誰もが手軽にアクセスできる様に公園内で最も低い位置に設置されました。段数もわずか45段ほどで傾斜も緩く、非常に上りやすい構造になっています。
階段は4つの区画に分かれており、そのうちの3つの階段には、デザインの異なるユニークな噴水が設けられています。上下写真の草が生い茂る部分が最下部の「第1の噴水」で、木の幹や鍾乳石ような素材で造られています。噴水の枠組は、完成したパーツを現地で組み立てるプレハブ工法が用いられました。
この噴水は、ガウディがピレネー山脈を旅した時にインスピレーションを受けた自然の景観がベースになっています。
続いて、第1の噴水の後部にそびえる「第2の噴水」には、ヘビの頭部とカタルーニャの紋章を組み合わせたメダイヨン(円形の装飾オブジェクト)がおかれています。ヘビのモチーフについては、諸説語られていますが確かな事はわかっていません。一説では、旧約聖書の中で「モーゼ」が海を二つに分けた時に、杖に巻き付いていた青銅のヘビ(ネフシュタン)だと言われています。
ヘビの周りの細かい茶色の装飾は、健康の象徴であるユーカリの実を表現しています。
また、階段の最上部付近には、ヘビのしっぽもひょっこりと突き出しています。
そして、このグエル公園のシンボルにもなっているのが「第3の噴水のトカゲ像」です。
この全長2.4m程ある像のモチーフに関しては諸説あり、ガイドブックなどによってはドラゴンとして紹介されている場合も多いです。個人的には、インドネシアに生息するオオトカゲ科の生物「コモドドラゴン(コモドオオトカゲ)」にそっくりだと感じました。
このトカゲ像は、薄いレンガをベースにプレハブ工法で現地で組み立てられ、表面にはガウディお得意のトレンカディス(粉砕タイル装飾)が施されました。参考までに「トレンカディス」とは、サグラダファミリアなどにも多様されている、陶器の破片や瓦礫などの不要素材を組み合わせた装飾の事です。まるで龍のウロコの様な質感が見事に表現されています。
トカゲ像の口には排水口の役割があり、貯水槽に溜まった雨水はここから排水されます。
噴水だけでなく階段左右の壁面に目を向けて見ると、いくつもの正方形の中に、トレンカディスによる色鮮やかな模様が施されています。
各正方形内の装飾は全て異なっており、多くの観光客がこの壁面前で記念撮影をしていました。絶好のインスタ映えスポットです。
大階段上部の踊り場には、曲線フォルムが美しい「半円型のベンチ」が置かれています。記念撮影や日よけ休憩をするには絶好のスポットです。
階段下部の横手には、テラスがあるカフェも併設しています。一休みにはもってこいの場所です。
④ 市場とドーリス式の列柱
大階段の上部に設けられているのがこの「市場」と呼ばれる広いエリアです。この場所は敷地内に住む住人のための「市場」として設計されました。
市場には高さ5メートルのドーリス式の列柱が86本も並んでいます。柱は土地の傾斜に合わせて、わずかに内側に傾いています。 ドーリス式とは、古代ギリシアの神殿建築などに用いられる建築様式で、ガウディが全作品の中でこの様式を取り入れたのはこの場所だけです。これにはグエル氏の強い要望があったと言われています。
この列柱は、モルタルとリサイクル資材で造られており、柱の基部には白いトレンカディスが施されています。柱の内側には、雨水を通す管が入っており、市場の真上にある「中央広場」の砂を通ってろ過された雨水が、柱の管に流れ込む仕組みになっています。市場の下には1200㎡の巨大な貯水槽が設けられており、柱の管を通った雨水は、この貯水層に貯えられていきます。いわば巨大なろ過装置と言えます。
続いて、市場の天井部分に目を向けて見ると、トレンカディスの装飾が見事な「メダイヨン」と呼ばれる円形のオブジェクトが飾られています。
メダイヨンは複数ありますが、大きくは2種類に分類されます。一種類目は直径3メートルの四つの「太陽のメダイヨン(画像上)」で、四季それぞれの太陽を表しています。もう一種類は太陽のメダイヨンを囲む様に配置されている直径1メートルの「月のメダイヨン(画像下)」です。
月のメダイヨンは全部で14個あり、全てデザインが異なっています。これらのメダイヨンは、ガウディの協力者でカタルーニャ地方出身の建築家「ジュゼップ・マリア・ジュジョール」が手がけました。素材には、廃材皿やピンなどが使用されています。
⑤ 中央広場(ラ・ナトゥーラ広場)と波形のベンチ
市場の真上に位置するのが、この「中央広場(ラ・ナトゥーラ広場)」です。元々このエリアは木々が生い茂る丘陵地帯でしたが、その一部を削ってこの広場が造られました。
総面積2694㎡あるこの広場は、縦83メートル、横43メートルの楕円形をしています。ガウディはこの広場を敷地内の住人が、様々なアクティビティや行事を行うための憩いの場として設計しました。また、市場の所でも触れましたが、この広場の地面は「ろ過機能」を備えており、降り注いだ雨は地下の貯水槽に流れ込む仕組みになっています。
広場の南側には、観光客が最も集中する見学ポイント「波形のベンチ」があります。
ガウディはベンチの設計段階で、石膏が乾く前のベンチに人を座らせて型取りするなど、座りやすいフォルムを徹底的に研究し、最終的にこの波形の形状に辿り着きました。
また、雨が降った際の雨水誘導などの役割も考慮しており、ベンチに降った雨水は、ベンチを伝ってベンチの外側にあるガーゴイル像の口から排出される仕組みになっています。
ベンチ表面の美しいトレンカディスの装飾は、グエル公園の制作の中では最も後年の1910年から1914年にかけて行われました。担当したのは、市場の装飾も手がけた「ジュジョール」です。装飾の素材には、廃棄された陶器や、タイル、食器の破片などあらゆるものが用いられました。
ベンチの外側の装飾は12星座がモチーフになっています。
波形のベンチがある広場南側は、公園内やバルセロナ市内を見渡す絶好の展望スポットにもなっています。
上の写真は広場南側からの景観です。グエル公園を紹介する記事や本などで頻繁にこのアングルの写真が使用されています。日中は、この写真を撮るためによく行列が出来ています。
このラ・ナトゥーラ広場は、グエル公園の有料エリアと無料エリアの境になっており、広場北側の左右2カ所にはチケット確認ブースがあります。
写真奥のテント屋根がある所がチケット確認ブースです。一端ここから外に出てしまうと、同じチケットで再び有料エリアに入る事はできないので、ご注意ください。逆に、グエル公園の北側に到着した場合は、ここから有料エリアに入場して、見学をスタートする事が可能です。ちなみに私も、この広場の入口から有料エリアに入場して観光をスタートしました。
⑥ 洗濯女(ブガデラ)の回廊
中央広場の波形のベンチ(南側)を背にして、左の壁側沿いにある階段を下ると「洗濯女(ブガデラ)の回廊」があります。
この回廊は、ギリシャやローマなどの初期建築に見られる女性像の柱「カリアテッド」で支えられています。その柱の一つに、このスポットの名前にもなっている「洗濯女」と呼ばれる柱があり、頭上に洗濯道具を持っています。高さはカゴの頂点まで(土台を含まない)で約2.4m程あります。
回廊と柱の素材である「石」には様々な種類のものが加工なしの状態で用いられています。これらの石は全て建築工事の際に出た砕石を利用し、周囲の自然と調和するように造られています。是非、石表面の素材感を注視しながら見学してみてください。
ガウディは、回廊内の柱を傾斜させたり螺旋状の形状を用いたりと、土地の構造や環境に合わせて、機能面とデザイン面を合わせ持つ様々な工夫を行いました。回廊の奥、曲がり角付近から柱の形状が明らかに変わっているのが分かります。
上写真手前側の柱は、太く傾斜したものと細いのが組み合わせって構成されています。強度が高そうな柱ですね。
もう一種類の柱は、見た感じだと細くて折れないか心配ですが、形状を螺旋状にねじる事で強度を高めています
⑦ 学校(グエル邸)
洗濯女(ブガデラ)の回廊から道なりに正門方面に進んでいくと、邸宅の様な赤い建物があります。この建物は、かつて「グエルの邸宅」だった場所で、建物自体は、グエルがこの敷地を買い取る前からあったものです。ガウディによって門と屋上が改装され、礼拝堂が造られました。
グエルは、ガウディに造らせたバルセロナ市内の「グエル邸」を大いに気に入り、そこに20年ほど住みましたが、その後はこの家に1918年まで住んでいました。現在、この建物は学校になっており、立派な校庭も完備されています。
⑧ カルヴァリーの丘
グエル公園の最も高台に位置するこの「カルヴァリーの丘」は、ヘブライ語の呼び名である「ゴルゴダの丘」と言った方が聞き覚えがあるかと思います。
元々、この場所に礼拝堂を建てる予定でしたが、計画は頓挫し、代わりにカルヴァリーの丘が造られ、3本の石碑が置かれました。写真では2本しか見えませんが、実際は3本の石碑が置かれています。カルヴァリーの丘へのルートは公園にいくつかありますが、中央広場から洗濯女の回廊を進んで、その先のスローブの様な道(画像下)から上って行くのがお勧めです。
ガウディは、メインエントランスの装飾性の高い2棟の建物で世俗世界を表現し、そこからこのカルヴァリーの丘へ至るまでの道で巡礼路を表現しています。
途中の道では、お菓子の家やグエル公園内の一部を高台から望む事ができます。また、カルヴァリーの丘の上に登り切ると、バルセロナ市内やサグラダファミリアを一望する事ができます。
景観的には中々ですが、このカルヴァリーの丘は、グエル公園の西端に位置しており、他の見学スポットからは結構はなれています。そこまで興味がない方は、時間をかけて訪問するほどの場所ではありませんので、スルーしても良いと思います。
⑨ ガウディの家(ガウディ博物館)
グエル公園の西側には、ピンク色とグリーンで装飾された教会の様な建物があります。これは、かつてガウディの家だった建物で、実際に20年ほどこの場所で暮らしていました。
元々この建物は、敷地内で販売する住居のモデルハウスとして、ガウディが弟子の「フランシスコ・ベレンゲール」に造らせたものでした。しかし、全く買い手が無かったため、ガウディが買い取って自身の居住地としました。
現在この建物は、ガウディ博物館となっており、グエル公園とは別のチケットで入場する事ができます。
この博物館の混雑は緩やかなので、敷地内でチケットを購入しても問題ありませんが、「サグラダファミリアの公式サイト」から事前に購入する事が可能です。サグラダファミリアの入場がセットになったチケットを購入すると、料金的に少しだけお得になります。
営業時間9:00~20:00(4~9月)、10:00~18:00(10~3月)
10:00~14:00(1/1、1/6、12/25、12/26)
入場料5.5ユーロ
⑩ 高架橋
ガウディはグエル公園内に、地元産の石材を使用して、様々な高架橋を造りました。周囲の自然と調和した石材で橋を造る事で、橋は周囲の自然と違和感なく溶け込み、高低差のある敷地内もスムーズに行き来できる様にしました。
自然との一体感が素晴らしいです。
また、高架橋の上部には、楕円形をしたプランターが置かれました。各プランターには乾燥地帯で育つリュウゼツラン科の植物が植えらています。
ギフトショップ
見どころの所で少し触れましたが、グエル公園の「管理事務所」は、ギフトショップになっています。
館内の1階と2階では、グエル公園やガウディに関連した商品を購入する事ができます。
以下より、ギフトショップで販売されている商品の何点かをピックアップしてご紹介致します。
まずはこちら、グエル公園内で使用されている装飾(トレンカディス)をあしらった、マッグカップ、Tシャツ、トートバッグです。
マグカップは部屋に飾るだけでお洒落な雰囲気になりそうです。Tシャツやトートバックはシンプルコーディネートのアクセントに使えそうですね。
グエル公園のお菓子の家やトカゲ、サグラダファミリアなどの陶器置物も販売されています。
お土産の定番ポストカードも各種揃っております。
グエル公園のポストカードだけでなく、ガウディ作品全般のポストカードが販売されています。
ガウディがデザインしたと思われる「椅子」も販売されています。
値段はなんと3950€、日本円で約47万円ほどです。一般庶民の我々にはとても手が届かない金額です。
こちらは椅子の模型になるので、料金はグッと下がりますが、それでも約3万円ぐらいはします。
他にもマグネットやコースター、カレンダーや書籍なども幅広く販売されています。お時間のある方は是非立ち寄ってみてください。
まとめ
グエル公園の観光情報を簡単に概要をまとめると以下の様な形です。
- ・グエル公園の営業時間は季節によって若干だけ異なる
- ・グエル公園には有料エリアと無料エリアがある
- ・グエル公園の有料エリアには4つある入口のどこからでも入場できる(要チケット)
- ・グエル公園の主要スポットは有料エリア内に集中している
- ・有料エリアに入場するにはチケットが必要
- ・グエル公園の一般入場チケットの正規料金は10€(ユーロ)
- ・チケット予約特典の無料シャトル「グエルバス」はコロナウィルスの影響で運休中
- ・有料エリアに一度入場すると、営業時間内であれば見学時間の制限はない
- ・一度有料エリアから出てしまうと、再入場はできない
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