ウィーン美術史美術館 見どころと展示作品を徹底解説
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ウィーン
本記事では、ウィーン美術史美術館で絶対に見逃せない作品をはじめ、フェルメール、ブリューゲル、ラファエロ、カラヴァッジョなどの名画40作品を写真付きで詳しく解説します。
さらに、館内マップを参考に、クリムトの壁画やクンストカンマー、古代美術、コインコレクションなどの見どころもご紹介します。
1891年にウィーンで開館した「美術史美術館」には、ハプスブルク家が数世紀にわたって収集した膨大な美術コレクションが収蔵・展示されています。
コレクションは絵画だけにとどまらず、古代エジプトやギリシャ・ローマの美術品、豪華な美術工芸品、コインなど多岐にわたり、その質と規模は世界有数です。
以下より、クリムトの壁画や絵画の名作はもちろん、美術史美術館の見どころを、5章に分けてご紹介していきます。
見どころ① メイン階段ホールの装飾とクリムトの壁画
美術史美術館の建物に入って最初の大きな見どころとなるのが、金色の装飾や大理石の彫像、天井画などで彩られた「大階段ホール」です。
大階段の正面を飾る巨大な彫像は、イタリアの彫刻家アントニオ・カノーヴァ作「ケンタウロスと闘うテセウス」です。
この大理石像は、もともとウィーンのフォルクスガルテン(国民庭園)にある「テセウス神殿」に展示されていましたが、1890年に美術史美術館へ移され、現在も大階段ホールを飾っています。
階段を少し上り、視線を天井に向けると、ハンガリー出身の画家ミハーイ・ムンカーチが手がけた壮大な天井画を見ることができます。
豪華な装飾を眺めながら大階段を上っていくと、1階の「絵画コレクション」へアクセスできます。
大階段ホールでは天井画だけでなく、柱の間や上部の半円部分などを飾る絵画にも注目してください。
なかでも見逃せないのが、グスタフ・クリムトが手がけた大階段の装飾画です。1890年から1891年にかけて、グスタフ・クリムト、弟のエルンスト・クリムト、フランツ・マッチによって制作されました。

大階段を飾る40点の装飾画は、古代エジプトから19世紀までの美術史をテーマとしており、このうち13点をグスタフ・クリムトが手がけています。美術史美術館でクリムト作品を見られる貴重な場所なので、絵画コレクションへ向かう途中にぜひ注目してみてください。

大階段ホールの豪華な内装とクリムトの装飾画を見学したら、続いて美術史美術館最大の見どころとなる1階の「絵画コレクション」へ進みましょう。
見どころ② 1階の絵画ギャラリー
1階の絵画ギャラリーには、「ブリューゲル」「フェルメール」「ラファエロ」「ルーベンス」「ティツィアーノ」「カラヴァッジョ」など、西洋美術を代表する画家たちの名作が数多く展示されています。
なかでもピーテル・ブリューゲル(父)の絵画は12点を所蔵しており、世界最大規模のコレクションとして知られています。
必見6作品
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バベルの塔(Room X)ピーテル・ブリューゲル(父)作
天まで届く巨大な塔を緻密に描いた、美術史美術館を代表する名画。
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雪中の狩人(Room X)ピーテル・ブリューゲル(父)作
雪に覆われた村と狩人たちを描いた、ブリューゲル屈指の風景画。
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農民の婚礼(Room X)ピーテル・ブリューゲル(父)作
農民たちの婚礼の宴を、生き生きとした人物描写で表現した作品。
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絵画芸術(Room XII)ヨハネス・フェルメール作
画家がモデルを描く場面を、精密な光と空間表現で描いたフェルメールの代表作。
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草原の聖母(Room I)ラファエロ作
聖母マリアと幼子イエス、洗礼者ヨハネを穏やかな風景の中に描いた名作。
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ロザリオの聖母(Room V)カラヴァッジョ作
劇的な明暗表現によって聖母と人々を描いた、カラヴァッジョの大作。
ここからは、美術史美術館の絵画ギャラリーで見逃せない名画40作品を厳選してご紹介します。
絵画芸術
「絵画芸術」は、現存作品が少ないことで知られるフェルメールの代表作の一つです。画面にはアトリエで制作する画家と、青い衣装をまとった女性モデルが描かれています。
背景には、南北に分裂する以前の「ネーデルラント17州」を描いた大きな地図が掛けられています。女性は歴史を司るムーサ「クリオ」とされ、頭に月桂冠をかぶり、ラッパと本を手にしています。単なるアトリエの情景ではなく、「絵画」という芸術そのものを寓意的に表現した作品です。
草原の聖母
「草原の聖母」は、ラファエロが20代前半に描いた代表的な聖母子画です。穏やかな草原を背景に、聖母マリア、幼子イエス、幼い洗礼者ヨハネの3人が描かれています。
聖母マリアの頭部を頂点として3人を三角形に配置した安定感のあるピラミッド型の構図が大きな特徴です。幼子たちが手にする十字架は、後のキリストの受難を暗示しています。
同じ時期にラファエロが描いた「ヒワの聖母」にも、聖母と2人の幼子を三角形にまとめるよく似た構図を見ることができます。「ヒワの聖母」は現在、フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。
バベルの塔
美術史美術館を代表する作品の一つが、ピーテル・ブリューゲル(父)の「バベルの塔」です。旧約聖書「創世記」に登場する、天に届くほど高い塔を建設しようとする人々の物語を題材としています。
旧約聖書では、人々は同じ言葉を話し、天まで届く塔を築こうとします。しかし神によって言葉を混乱させられ、互いに意思疎通ができなくなったことで、塔の建設は中断されます。人間の傲慢さを象徴する物語として広く知られています。
巨大な塔の周囲には、港や街並み、働く人々が驚くほど細かく描かれています。背景の港町は16世紀のフランドルを思わせる景観で、巨大な塔との対比によって、その圧倒的なスケールが表現されています。
塔の円形で何層にも重なる外観は、ブリューゲルがイタリア旅行で目にしたローマのコロッセオを思わせる構造です。一方で細部には古代建築やロマネスク建築など、さまざまな建築要素が取り入れられています。
塔を近くで見ると、石材を運ぶ人々や建設作業を行う職人など、無数の人物が非常に細かく描き込まれているのが分かります。
暗い日(早春)
ブリューゲルは1565年、1年を2か月ずつ6つの季節に分けて描いた連作を制作しました。「暗い日」は2月から3月頃の早春を表した作品とされています。
この6作品のうち現存しているのは5作品で、美術史美術館には「暗い日」「群れの帰還」「雪中の狩人」の3作品が所蔵されています。続く4月から5月を描いた作品は失われ、現在は見ることができません。
群れの帰還(秋)
「群れの帰還」は、ブリューゲルが描いた季節画のうち、10月から11月頃の秋を表した作品です。牛の群れを連れて山から戻る農民たちと、冬の訪れを予感させる暗い空が描かれています。
連作のうち、8月から9月を表す「穀物の収穫」はニューヨークのメトロポリタン美術館、6月から7月を表す「干し草の収穫」はチェコのロブコヴィッツ・コレクションに所蔵されています。
雪中の狩人(冬)
「雪中の狩人」は、6つの季節を描いた連作のうち、12月から1月頃の冬を表した作品です。
猟犬を連れて村へ戻る狩人たちの姿を手前に大きく描き、その奥には雪に覆われた村や凍った池でスケートを楽しむ人々が広がっています。白い雪景色の中に人々の日常生活を細かく描いた、ブリューゲルを代表する風景画です。
農民の婚礼
「農民の婚礼」は、納屋で開かれている農民たちの婚礼の宴を描いた作品です。食事を運ぶ人、酒を注ぐ人、楽器を演奏する人など、多くの人物が登場し、16世紀の農村の祝宴を生き生きと伝えています。
緑色の布を背景に座っている女性が花嫁とされています。一方、花婿がどの人物なのかについてははっきりしておらず、さまざまな説があります。ブリューゲルらしい細かな人物描写を、一人ずつ追って見るのも面白い作品です。
ゴルゴタの丘への行進
「バベルの塔」の翌年にブリューゲルが描いた作品で、キリストが十字架を背負ってゴルゴタの丘へ向かう場面を題材としています。画面いっぱいに無数の人物が描かれていますが、主役であるキリストは画面中央付近に非常に小さく描かれているのが大きな特徴です。
宗教画でありながら、遠景まで広がる群衆や日常の風景を細密に描くことで、聖書の出来事をブリューゲルの時代の世界へ置き換えたような作品となっています。
農民の踊り
「農民の踊り」は、村の祭りで踊りや酒を楽しむ農民たちの姿を描いた作品です。人物を遠くから眺めるのではなく、画面のすぐ手前に大きく配置した躍動感のある構図が特徴で、踊る人々の動きや表情まで生き生きと描かれています。
「農民の婚礼」と並び、ブリューゲルが得意とした農村の暮らしや祝祭の様子を伝える代表的な作品です。
子供の遊戯
「子供の遊戯」は、広場や通りを埋め尽くすように、数多くの子供たちが遊ぶ姿を描いた作品です。輪回しや木馬、かくれんぼなど、当時のさまざまな遊びが画面のいたるところに描き込まれているため、一つずつ探しながら見るのも楽しみ方の一つです。
遠くまで続く街並みと無数の人物を細かく描写する、ブリューゲルらしい作品です。
木製容器の花
作者のヤン・ブリューゲル(父)は、「バベルの塔」などで知られるピーテル・ブリューゲル(父)の息子です。父とは異なり、花や植物、風景などを精密に描く作品を得意としました。
「木製容器の花」は、約130種類もの花を緻密に描き分けた大作で、実際の一つの花束をそのまま描いたというより、珍しい花々を一堂に集めたような構成になっています。17世紀初頭に発展した花の静物画を代表する作品の一つです。
サムソンの捕縛
旧約聖書に登場する怪力の英雄「サムソン」が、恋人デリラの裏切りによって捕らえられる場面を描いた作品です。
サムソンの力の秘密が髪にあることを知ったデリラは、その秘密を敵であるペリシテ人に伝えます。眠っている間に髪を切られ、力を失ったサムソンが捕らえられる瞬間が、激しい動きと人物たちの複雑な感情とともに描かれています。
磔刑トリプティーク(三連祭壇画)
キリストの磔刑を中心に描いた、初期ネーデルラント絵画を代表するロヒール・ファン・デル・ウェイデンの作品です。
現在は三連祭壇画の形になっていますが、もともとは一枚の板絵として制作され、後に3つに分割されたと考えられています。磔刑の場面と聖人、寄進者たちを一続きの風景の中に配置した、当時としては革新的な構成が特徴です。
エレーヌ・フールマン「毛皮の女」
ルーベンスが再婚した妻エレーヌ・フールマンを描いた、非常に私的な雰囲気を持つ肖像画です。エレーヌは毛皮を身体にまとい、自らの裸体を隠すような姿で描かれています。
ルーベンスが妻をモデルに描いた作品の中でも特に有名で、柔らかな肌の表現と毛皮の質感の対比が印象的な一作です。
スザンナの水浴
16世紀ヴェネツィアを代表する画家ティントレットが、旧約聖書の「スザンナと長老たち」の物語を描いた作品です。
水浴の準備をするスザンナの背後では、2人の老人が物陰からその姿をのぞき見ています。明るく描かれたスザンナと、暗がりに潜む老人たちを対比させた構成が印象的です。
諸聖人の祭壇画(ランドアウアー祭壇画)
「諸聖人の祭壇画」は、ニュルンベルクの商人マテウス・ランドアウアーが、十二兄弟の家に付属する礼拝堂のために依頼した祭壇画です。
画面上部では父なる神が十字架上のキリストを支え、その周囲を聖人や天使たちが取り囲んでいます。下部には聖職者や世俗の人々が描かれ、地上と天上のすべての人々が聖三位一体を礼拝する壮大な構図となっています。
画面右下には、作者デューラー自身も小さく描かれています。
十字架を担うキリスト
「十字架を担うキリスト」は、幻想的で謎めいた作品を多く残したヒエロニムス・ボスによる作品です。
この板絵はもともと小型三連祭壇画の左翼部分で、表面には十字架を担うキリスト、裏面には幼子キリストが描かれています。キリストの受難へと続く物語を一枚の板の表裏で表現した作品です。
寄進者から崇拝される聖ユスティーナ
パドヴァの守護聖人として知られる「聖ユスティーナ」を描いた作品です。中央に立つユスティーナのそばには、彼女を象徴する一角獣が描かれ、その前では寄進者の男性がひざまずいて崇拝しています。
穏やかな風景と銀灰色を帯びた落ち着いた色彩が特徴で、モレット・ダ・ブレシアを代表する宗教画の一つです。
レオポルト・ウィルヘルム大公の画廊
スペイン領ネーデルラント総督を務めたレオポルト・ウィルヘルム大公の膨大な絵画コレクションを描いた作品です。作者のダフィット・テニールス(子)は、大公の宮廷画家として仕えていました。
画面には大公やテニールス自身、宮廷の人々とともに、大公が収集した51点のイタリア絵画が所狭しと描かれています。レオポルト・ウィルヘルムが集めた約1,400点の絵画は、現在の美術史美術館の絵画コレクションの重要な基礎となりました。
個人的には「バベルの塔」に次いで、この美術館で特に好きな作品の一つです。
皇帝マクシミリアン1世
ハプスブルク家の皇帝マクシミリアン1世を描いた、デューラーの代表的な肖像画です。マクシミリアン1世は婚姻政策などによってハプスブルク家の勢力を大きく拡大した人物として知られています。
デューラーは皇帝から複数の制作を依頼しており、この肖像画はマクシミリアン1世が亡くなった1519年に制作されました。皇帝の特徴的な横顔と豪華な毛皮の衣装が印象的な作品です。
アダムとイヴ(堕罪)
旧約聖書「創世記」に登場する最初の人間「アダム」と「イヴ」を、2枚の板絵に分けて描いた作品です。善悪の知識の木の前に立つ2人が描かれ、イヴは禁断の果実を手にしています。
作者はドイツ・ルネサンスを代表する画家ルーカス・クラナッハ(父)の工房とされています。クラナッハは「アダムとイヴ」を題材とした作品を何度も制作しており、美術史美術館に所蔵されているこの作品は1520年頃に制作されたものです。
薔薇色の衣装のマルガリータ王女
スペイン国王フェリペ4世の宮廷画家「ディエゴ・ベラスケス」が、幼いマルガリータ・テレサ王女を描いた肖像画です。王女はフェリペ4世と王妃マリアナ・デ・アウストリアの娘として1651年に生まれました。
マルガリータ王女は、後に神聖ローマ皇帝となるレオポルト1世との結婚が予定されていたため、成長する姿を伝える肖像画がウィーンへ送られました。美術史美術館には、王女の成長をたどることができる複数の肖像画が所蔵されています。
白いドレスのマルガリータ王女
幼いマルガリータ王女を白いドレス姿で描いた肖像画です。白を基調とした豪華な衣装に、赤いリボンや背景のカーテンが鮮やかなアクセントを加えています。
王女は1666年、15歳で神聖ローマ皇帝レオポルト1世と結婚し、ウィーンへ移りました。ベラスケスの代表作「ラス・メニーナス」の中央に描かれている王女も、このマルガリータ・テレサです。
青いドレスのマルガリータ王女
マルガリータ王女を青いドレス姿で描いた、ベラスケス晩年の肖像画です。幼少期の肖像と比較すると顔立ちも成長し、王女らしい落ち着いた雰囲気が感じられます。
大きく広がった青いドレスと銀色の装飾が印象的で、背景には大きな時計なども描かれています。同じ王女を描いた複数の肖像を見比べられるのも、美術史美術館の絵画ギャラリーの見どころです。
若きヴェネツィアの女性
ドイツ・ルネサンスを代表する画家アルブレヒト・デューラーが、2度目のヴェネツィア滞在中に描いた女性の肖像画です。
モデルとなった女性の身元は明らかになっていませんが、柔らかな表情や髪の毛、衣装などが繊細に描かれています。ドイツで培った精密な描写と、ヴェネツィア絵画から受けた影響を感じられる作品です。
ユディト
「ユディト記」に登場するユダヤ人女性ユディトを描いた作品です。ユディトは敵将ホロフェルネスに近づき、酔って眠った隙にその首を切り落とすことで、故郷の町を敵軍から救いました。
画面では豪華な衣装をまとったユディトが、剣とホロフェルネスの首を手にしています。クラナッハはユディトを題材とした作品を何度も制作しており、英雄的な女性を宮廷女性のような優雅な姿で表現しています。
火
「火」は、果物や植物、動物などを組み合わせて人物の顔を表現した作品で知られる「ジュゼッペ・アルチンボルド」の代表作の一つです。
古代から世界を構成すると考えられた「火・水・大地・空気」を表現した連作「四大元素」の一作で、燃える薪やろうそく、火打ち金、武器など、火に関係するさまざまな物を組み合わせて人物の横顔を作り上げています。
水
「火」と同じ連作「四大元素」の一作で、魚や貝、カニなど水に生息するさまざまな生き物を組み合わせて人間の横顔を表現しています。
近くで見ると一匹ずつの生き物が驚くほど細かく描かれている一方、少し離れて見ると一人の人物に見えてくる、アルチンボルドらしい遊び心にあふれた作品です。美術史美術館には「火」と「水」の両作品が所蔵されています。
皇帝ルドルフ2世の肖像
神聖ローマ皇帝ルドルフ2世を、宮廷画家ハンス・フォン・アーヘンが描いた肖像画です。華美な演出を抑え、皇帝の顔立ちや表情を写実的に描いているのが特徴です。
ルドルフ2世は宮廷をプラハに置き、芸術家や学者を積極的に庇護したことで知られる皇帝です。その膨大な美術品収集は、後のハプスブルク家のコレクションにも大きな影響を与えました。
白いカーテンの前の若者
ヴェネツィア・ルネサンスの画家ロレンツォ・ロットが、若い時期に描いた肖像画です。モデルの若者は白いカーテンを背景に、こちらへ視線を向けています。
ロットは宗教画だけでなく肖像画でも高く評価された画家で、人物の表情や視線を通してモデルの内面まで感じさせるような肖像表現を得意としました。
聖イグナティウス・デ・ロヨラの奇跡
イエズス会の創設者の一人「イグナティウス・デ・ロヨラ」が起こしたとされる奇跡を描いた、ルーベンスの大作です。
イグナティウスは祭壇の前に立ち、その周囲には奇跡を目撃する大勢の人々が描かれています。大きな画面に多数の人物を配置し、劇的な動きと光によって宗教的な奇跡を表現した、ルーベンスらしい迫力のある作品です。
豆の王様の祝宴
公現祭の時期に行われた「豆の王様」の祝宴を描いた、フランドルの画家ヤーコブ・ヨルダーンスの作品です。祝宴では菓子の中に隠された豆を引き当てた人物が、その日の「王様」となり、人々と酒や食事を楽しみました。
ヨルダーンスはこの祝宴を何度も題材としており、本作でも酒を飲み、大声を上げて楽しむ人々の姿が画面いっぱいに描かれています。17世紀フランドルの庶民的な祝祭の雰囲気を感じられる作品です。
凸面鏡の自画像
「凸面鏡の自画像」は、イタリアのマニエリスムを代表する画家パルミジャニーノが、20歳前後の若さで描いた異色の自画像です。
凸面鏡に映った自分自身を描いているため、画面手前の右手が大きく、顔や背景が湾曲して見える独特な構図となっています。さらに作品自体も凸面鏡を思わせる丸く膨らんだ板に描かれており、若きパルミジャニーノの高い技術力を示す作品として知られています。
ちなみにパルミジャニーノは美男子として知られ、この自画像でもかなり整った顔立ちで描かれています。
ディアナとカリスト
ローマ神話に登場する狩猟の女神「ディアナ」と、彼女に仕えるニンフ「カリスト」を題材にした作品です。カリストは純潔を誓っていましたが、ユピテル(ジュピター)によって身ごもり、その事実がディアナに知られる場面が描かれています。
ティツィアーノはこの主題を複数回描いており、1559年にはスペイン国王フェリペ2世のために別バージョンを制作しています。美術史美術館の作品は、その後に制作された別バージョンです。
ベルヴェデーレから見たウィーン
イタリア出身の風景画家ベルナルド・ベッロットが、上宮ベルヴェデーレからウィーン中心部を眺めた景観を描いた作品です。
画面にはカールス教会やシュヴァルツェンベルク宮殿、下宮ベルヴェデーレなどが描かれ、その奥には城壁に囲まれていた当時のウィーン旧市街が広がっています。18世紀のウィーンの姿を詳細に伝える貴重な都市景観画です。
ベネデット・ヴァルキの肖像
ヴェネツィア派を代表する画家ティツィアーノが、フィレンツェの歴史家・人文主義者「ベネデット・ヴァルキ」を描いた肖像画です。
ヴァルキはトスカーナ語やフィレンツェ史の研究で知られ、美術理論に関する著作も残しました。1536年から1540年頃にヴェネツィアへ滞在しており、その滞在中にティツィアーノがこの肖像を描いたと考えられています。
ニンフと羊飼い
ティツィアーノが晩年に描いた作品で、横たわる裸婦と、その傍らで笛を持つ若者が描かれています。
作品の正確な主題については現在も完全には解明されておらず、神話上のニンフと羊飼いを描いたものなど、さまざまな解釈があります。荒々しい筆致と幻想的な風景は、ティツィアーノ晩年の画風をよく示しています。
ロザリオの聖母
「ロザリオの聖母」は、カラヴァッジョが手がけた大型の祭壇画です。画面上部には聖母マリアと幼子イエス、下部にはロザリオを人々へ配る聖ドミニコの姿が描かれています。
左側で両手を広げている人物は寄進者で、右側では聖ペテロ殉教者が幼子イエスを指し示しています。暗い背景から人物を浮かび上がらせる劇的な明暗表現は、カラヴァッジョを代表する特徴の一つです。
この作品は後にアントワープのドミニコ会教会へ寄贈され、18世紀にハプスブルク家のコレクションへ加わりました。
荊冠のキリスト
キリストが磔刑に処される前、兵士たちによって茨の冠をかぶせられ、嘲笑と暴力を受ける場面を描いた作品です。「荊冠」とは、キリストにかぶせられた茨で作られた冠を意味します。
カラヴァッジョは場面を非常に近い距離から描き、暗闇の中に浮かび上がるキリストの身体と、周囲の人物の激しい動きによって強い緊張感を生み出しています。光が金属の甲冑に反射する表現も見どころです。
ゴリアテの首を持つダビデ
旧約聖書に登場する少年ダビデが、敵軍の巨人ゴリアテを倒した後の場面を描いた作品です。ダビデは後にイスラエル王となる人物として知られています。
勝者であるダビデは誇らしげな表情ではなく、切り落としたゴリアテの首を静かに見つめる、どこか物思いに沈んだ姿で描かれています。英雄の勝利を単純に称えるのではなく、その後の複雑な感情まで感じさせる作品です。
見どころ③ 2階のコインコレクション
見どころ④ クンストカンマー・古代ギリシャ・ローマ・エジプト・近東コレクション
地上階から半階分ほど階段を上がった0.5階には、「クンストカンマー」「古代ギリシャ・ローマコレクション」「エジプト・近東コレクション」があります。
1階の絵画ギャラリーとは展示内容が大きく異なり、ハプスブルク家が収集した豪華な工芸品から、古代ギリシャ・ローマ、古代エジプトやメソポタミアの美術品まで、幅広い時代と地域の作品を見ることができます。
クンストカンマー(美術工芸品コレクション)
「クンストカンマー」では、ハプスブルク家の歴代皇帝や大公たちが収集してきた約2,200点の美術工芸品を見ることができます。金細工や彫刻、ブロンズ像、時計のほか、象牙や珊瑚、ダチョウの卵など珍しい素材を使った作品も展示されています。
中でも必見なのが、ベンヴェヌート・チェッリーニ作「サリエラ」です。

「サリエラ」は、イタリア・ルネサンスを代表する芸術家ベンヴェヌート・チェッリーニが、フランス王フランソワ1世のために1540〜1543年に制作した作品です。金やエナメルなどを用いた豪華な卓上用の塩入れで、美術史美術館を代表する工芸作品の一つです。
向かい合う2人の人物は、海を象徴するネプトゥヌスと、大地を象徴するテルス。単なる食卓用具ではなく、宇宙や自然を象徴する寓意的な作品として作られています。
古代ギリシャ・ローマコレクション
「古代ギリシャ・ローマコレクション」では、約3,000年にわたる古代美術を紹介しており、常設展示だけでも約2,500点にのぼります。ギリシャ陶器、ローマ時代の彫像や胸像、モザイク、カメオ、古代末期から民族大移動時代の宝飾品など、多彩な作品を見ることができます。
特に有名なのが、ローマ皇帝アウグストゥスを称える大型カメオ「アウグストゥスの宝玉(ゲンマ・アウグステア)」です。
アウグストゥスの宝玉(ゲンマ・アウグステア)
2層のサードニクスを彫り分けた古代ローマのカメオで、上段には神のような姿で表されたアウグストゥス、その周囲にはローマやティベリウスに関係する人物が描かれています。
プトレマイオスのカメオ
ヘレニズム時代のエジプトを支配したプトレマイオス朝の王族を表した大型のカメオです。異なる色の層を持つ石を巧みに彫り分けることで、人物の横顔や装飾を立体的に表現しています。
アマゾネスの石棺
戦うアマゾネスたちを描いた華やかな石棺で、古代ギリシャ・ローマコレクションを代表する作品の一つです。
エウトロピオス
エジプト・近東コレクション
「エジプト・近東コレクション」では、古代エジプトを中心に、ヌビア、メソポタミア、アラビア半島などから集められた膨大な美術品や考古資料を見ることができます。
展示内容は、石棺やミイラ、王族の彫像、レリーフ、墓の副葬品、パピルスなど多岐にわたり、展示室そのものも古代エジプトを思わせる独特な装飾で彩られています。
歩くライオンのレリーフ(バビロン)

このライオンは、古代バビロンの「行列道路」を飾っていた彩釉レンガのレリーフです。新バビロニア王国のネブカドネザル2世時代(紀元前604〜562年)に制作されたもので、ライオンは女神イシュタルを象徴しています。
見どころ⑤ 世界一美しいとも称される「カフェKHM」
1階の絵画ギャラリーの中央、大階段ホール上部の円形ドーム下にあるのが「カフェKHM」です。豪華な大理石や装飾に囲まれた空間は、世界一美しいカフェの一つとも称されるほどで、美術館そのものの建築美を楽しみながら休憩できます。
メニューにはコーヒーなどのドリンクのほか、ケーキや軽食、朝食メニューなどがあります。美術館内のカフェということもあり価格はやや高めですが、観光途中の休憩場所として利用するにはおすすめです。
特に大階段ホールを見下ろすような開放感のある空間は印象的なので、時間に余裕があればぜひ立ち寄ってみてください。
本記事でご紹介する美術史美術館の見どころは以上です。観光の基本情報やチケット予約・購入方法について知りたい方は、以下の記事なども参考にしてください。
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