鏡の間〈鏡の回廊〉とは – 特徴と装飾を詳しく解説【ヴェルサイユ宮殿】

ヴェルサイユ宮殿 パリ
ヴェルサイユ宮殿 鏡の間

本記事では、ヴェルサイユ宮殿見学で最大の見どころである【鏡の間】の特徴や装飾について詳しく解説致します。

ヴェルサイユ宮殿の「鏡の間(鏡の回廊)」とは

鏡の間

ヴェルサイユ宮殿の【鏡の間(鏡の回廊)】は、フランス国王「ルイ14世」が、1678年から1686年にかけて造らせた、全長約75mの美しい鏡張りの回廊です。

この大回廊の建造目的は、フランス国内におけるルイ14世の権力の強大さを示すだけに留まらず、フランス国家の政治的、経済的な覇権を世界中に誇示するものでした。

なぜなら、鏡が高級品であった当時、これだけの鏡を惜しみなく使用できるのは、余程の財力がない限り不可能だったからです。

各国からの使者たちは、左右に宮廷人たちが並ぶ中、必ずこの回廊を通り、奥にある王の玉座に向かったそうです。使者たちは、当時の強大なフランスの国力を思い知らされたに違いありません。

完成後の【鏡の間】は、主に公的行事や外交の場として利用され、それ以外の日中や夜は、祝宴、宴、仮面舞踏会などの会場として利用されました。舞踏会の時などは、シャンデリアと燭台に3000本もの蝋燭(ろうそく)が灯されていたそうです。

また、当時の【鏡の間】は王の部屋に通じていたため、毎朝礼拝堂に赴く国王を一目見ようと宮廷人達が集まっていました。中には、その場で王に嘆願を行う者もいました。

歴史的に重要な外交の場としては、1686年のシャム(タイ)大使団の歓迎レセプションや、1715年のペルシャ大使団の歓迎レセプション、1919年に調印された第一次大戦を帰結する「ヴェルサイユ条約」なども、この【鏡の間】で行われました。

【鏡の間】は現在も、フランス外交の場として幅広く利用されているほか、通常は一般公開されており、ヴェルサイユ宮殿随一の人気スポットとなっています。2004年から2007年にかけては修復も行われ、その美しさを今に留めています。

鏡の間の特徴と装飾を徹底解説

鏡の間

ヴェルサイユ宮殿内で、最も絢爛豪華な場所と言われる【鏡の間】の長さは約75m、幅は約10m、高さは約12mもあります。

フランス貴族のセヴィニエ侯爵夫人は「王家に相応しい世界でも唯一無二の美しさ」と、この広間を表現したそうです。

【鏡の間】は、元々テラスだった場所を、1678年から約8年の期間をかけて、ルイ14世の主席建築家「ジュール・アルドゥアン=マンサール」が、国王の居室と王妃の居室を結ぶ回廊として改造したものです。

主に【鏡の間】全体の設計は「マンサール」が担当し、装飾に関しては、ルイ14世の第一画家であった「シャルル・ルブラン」が手がけました。

マンサールとルブランの肖像画

ジュール・アルドゥアン=マンサールとシャルル・ルブランの肖像画
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庭園に面する壁側には、17組の巨大な窓が置かれ、その対面には、357枚もの鏡が壁に埋め込まれています。1グループの鏡に、21枚の鏡が使用されているので、17グループ × 21枚 = 合計357枚という計算です。

鏡が嵌め込まれた壁面と庭園側の窓

【鏡の間】で使用されている全ての鏡は、鏡・ガラス製造メーカー『サンゴバン』製です。

鏡の間の鏡

『サンゴバン』は、現在では350年以上の歴史を誇る老舗で、当時フランスの財務総監であった「コルベール」が、国内産ガラスを製造するために、王立(国立)企業として創業させました。

これには、国産ガラスで財政を改善する目的と、当時旺盛であった「ベネチアン・ガラス」に対抗する目的がありました。苦心の末、国内産に成功したフランス製のガラスは、それまで市場を独占していた「ベネチアン・ガラス」を凌ぐ人気となりました。

参考までに、現在のルーブル美術館のガラスのピラミッドや自由の女神にも、サンゴバンの鏡が使用されています。

全ての鏡と窓を挟む様に、両側にはランス産大理石のピラスター(付け柱)が埋め込まれています。このピラスターの柱頭は、古代の建築様式をフランス独自の様式にアレンジして「ルブラン」がデザインしたものです。

壁に埋め込まれた付け柱(ピラスター)と柱頭
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頭上の1000㎡を超える空間は「ルブラン」が手掛けた天井画で埋め尽くされています。

鏡の間の天井画

この時代、装飾や芸術作品は、古代の神々や英雄を題材にするのが常識でしたが、【鏡の間】の天井画は、オランダ戦争とフランドル戦争を題材に、ルイ14世の政治と軍事面での偉業が描かれています。

鏡の間の天井画
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この様な天井画が全部で30シーンも描かれており、正にルイ14世の自己顕示欲の象徴と言える部分です。

天井画の下には、精巧を極めた24個のシャンデリアが輝いています。当時はシャンデリアが54個もあり、天井画を見る際に邪魔となるので、必要に応じて取り外していたそうです。

鏡の間 クリスタルのシャンデリア

回廊に沿って左右に並ぶ「飾り大燭台」も、ルブランが手掛けたもので、全80体あります。

鏡の間

燭台下の台座の像は、2パターンあり、それぞれ「ニコラ・フィリベール・フォリオ」による「子供の像」と、「ピエール・エドム・バベル」による「女性の像」になります。

大燭台の台座を飾る彫刻

現在も【鏡の間】には多くの調度品が飾られていますが、これらはオリジナルではありません。

鏡の間の調度品

初期に「ルブラン」がデザインした純銀製の調度品のほとんどは、1689年に戦費調達を目的に溶解されてしまいました。

溶かされた調度品には「大燭台」「小型円卓」「燭台用テーブル」「オレンジの木を活ける花瓶」などがあり、全て一流の金細工職人によって精巧な彫り込み細工が施されていました。

現在見る事ができるシャンデリアや大燭台(だいしょくだい)も、18世紀後半に行われた、ルイ16世とマリーアントワネットの成婚の際に、残っていたオリジナルを元に、復元新調されたものです。

それ以外の多くの調度品に関しては、フランス革命の際にほとんどが失われ、後の19世紀に新たに製造されたものです。

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【鏡の間】は、ヴェルサイユ宮殿内部の見学施設なので、営業時間やチケット料金なども、ヴェルサイユ宮殿に準じております。見学情報やヴェルサイユ宮殿について、詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。