スフォルツェスコ城のチケットの予約方法と買い方・入場料金・所要時間まで徹底解説【ミラノ】

ミラノの人気観光スポット「スフォルツェスコ城」のチケット購入・予約方法や入場料金、城内の回り方、見どころ、所要時間まで詳しく解説します。

スフォルツェスコ城とは?複合文化施設としての魅力

スフォルツェスコ城の外観と中庭

ミラノの中心部にあるスフォルツェスコ城は、壮麗な「お城」というよりも、歴史ある城跡を活用した複合文化施設です。中央の中庭を囲むように、複数の美術館や博物館が配置されており、これらの施設全体を総称して「スフォルツェスコ城」と呼びます。

有料で見学できる展示エリアには、ミラノ屈指の観光スポットらしく多彩な見どころが揃っています。

中でも注目は、ミケランジェロの未完の傑作が展示されるロンダニーニのピエタ美術館。さらに、レオナルド・ダ・ヴィンチが装飾を手掛けたアッセの間も必見です。

ロンダニーニのピエタ美術館とアッセの間

その他にも、以下のような多彩な美術館や博物館があり、芸術や歴史をたっぷり堪能できます。

  • 古代美術館
  • アンティーク家具と木工彫刻博物館
  • 絵画館(Pinacoteca)
  • 装飾芸術美術館
  • 楽器博物館
  • 考古学博物館

スフォルツェスコ城 古代美術館など城の美術館群

これらの展示エリアを巡るだけで、ミラノの歴史と芸術の深さを体感できるでしょう。

スフォルツェスコ城の歴史

スフォルツェスコ城は、14世紀半ばにミラノ公国を支配していたヴィスコンティ家によって要塞として建設が始まりました。

その後、15世紀にスフォルツァ家のフランチェスコ・スフォルツァが大規模に再建し、ルネサンス様式の優美な城に生まれ変わりました。

特に、ルドヴィーコ・イル・モーロ(ルドヴィーコ・スフォルツァ)の治世下では、レオナルド・ダ・ヴィンチやブラマンテなど当時を代表する芸術家たちを城に招き、城の装飾や都市計画を手掛けさせるなど、ミラノが文化的に最も華やいだ時代を築きました。

その後、軍事拠点や住居として利用される一方で、ナポレオン時代に一部が破壊され、19世紀後半に市民の手で再建されました。

スフォルツェスコ城は、もともと要塞や宮殿、軍事拠点として長い歴史を歩んできましたが、1900年に市立博物館としての公開が始まり、その後も幾度もの修復や整備が進められ、複数の美術館や博物館が揃う複合文化施設として現在の姿に発展しました。

スフォルツェスコ城の観光情報 - 営業時間・チケット料金

スフォルツェスコ城内の景観

ここでは、スフォルツェスコ城の営業時間とチケット料金についてまとめました。

営業時間

スフォルツェスコ城の営業時間は以下の通りです。城壁内の無料エリアは朝早くから開放されています。

スフォルツェスコ城
(城壁内 中庭などの無料エリア)

  • 07:00〜19:30(毎日開放)

美術館・博物館
(有料の展示エリア)

  • 10:00〜17:30(最終入場は17:00)

定休日:毎週月曜日、1月1日、5月1日、12月25日

チケット料金

スフォルツェスコ城のチケットは、すべての常設美術館と博物館、展示室への入場を含む共通チケットとなります。

共通チケット

  • 5ユーロ(大人)
  • 3ユーロ(18歳〜25歳の若者・学生・65歳以上)
  • 無料(18歳未満)

庭園など敷地内への入場自体は無料で、展示エリアに入る際にチケットが必要。

毎月第1日曜日、および第1・第3火曜日の14時以降は入場無料となります。

スフォルツェスコ城のチケット予約方法と買い方を紹介

スフォルツェスコ城の見学チケットはオンライン予約(事前購入)、または現地窓口で購入可能です。以下に予約・購入方法を3通りご紹介します。

  1. 公式ページで予約する(英語ページ)

    料金:5.0ユーロ

    スフォルツェスコ城の公式予約ページ「VIVATICKET」

    「スフォルツェスコ城」のチケットは、公式販売サイト「VIVATICKET(英語)」から事前予約が可能です。VIVATICKETはイタリア各地の美術館や宮殿のチケット販売を行う公式パートナーサイトで、表示は英語ですが、現地窓口と同じ料金(5ユーロ)で購入できます。

    予約完了後にダウンロードできるPDFの予約票をプリントアウトして、そのまま入場チケットとして利用可能です。

    チケットオフィスに立ち寄らずに直接見学エリアへ入場できるのが大きなメリットです。

    なお、予約時に入場時間を指定しますが、同日内であれば30分程度前後しても問題なく入場できます。JCBのクレジットカードが利用できない点や予約完了後のキャンセルができないのがマイナスポイントです。

  2. 現地窓口で購入する(英語・イタリア語)

    料金:5.0ユーロ

    スフォルツェスコ城のチケットオフィス

    スフォルツェスコ城のチケットは、当日現地の窓口で購入可能です。

    窓口は「ロンダニーニ美術館」入口付近と「城の美術館群」入口付近にあり、どちらも展示エリアへ進む途中で必ず通る構造になっています。

    特に「ロンダニーニ美術館」の窓口が場所的に最もわかりやすいため、まずはこちらを目指すのがおすすめです。混雑している場合は、「城の美術館群」の窓口を利用するなど臨機応変に対応すれば、待ち時間を減らせます。

  3. GetYourGuideで購入する(日本語ページ)

    料金:15.0ユーロ

    GetYourGuideのスフォルツェスコ城入場チケットページ

    英語ページでの予約に不安がある方は、「GetYourGuide(日本語)」の「ミラノ スフォルツェスコ城デジタル音声ガイド付き入場券ページ」からの購入も可能です。

    公式サイトより料金は高くなりますが、日本語ページで予約できる安心感や、24時間前までなら無料でキャンセルが可能というメリットがあります。

    ただし、現地窓口で予約確認書と引き換えにチケットを受け取る必要があるため、公式サイトのように「並ばず直接入場できる」というメリットはありません。

    料金も10ユーロ高くなるため、英語が苦手な方や、予定変更の可能性が高い場合以外は公式サイトや現地窓口での購入をおすすめします。

以上が「スフォルツェスコ城」の共通チケットの予約・購入方法です。ミラノの他の人気スポット「最後の晩餐」や「ドゥオーモ」なども効率よく見学したい方は「GetYourGuideの各種見学ツアー」を利用するのもお勧めです。

チケットは共通チケットのみの販売で、1枚あれば全ての美術館・博物館に入場できます。

予約は必要? スフォルツェスコ城の混雑具合と待ち時間は?

結論として、スフォルツェスコ城の見学に事前予約は不要です。

人気スポットではありますが、敷地が広くチケット売り場も複数あるため、通常はチケット購入に5〜15分程度並べば済みます。30分以上並ぶのは稀です。

口コミの中には「1時間ほど並んだ」という声もありますが、これはレアケースです。

30分以上の待ち時間が発生するのは、イタリアの祝日や夏休みのピークシーズン(特に8月15日前後)、あるいはツアー客や学校団体が集中して来場したタイミングに限られると考えてよいでしょう。

通常は10分前後でチケットを購入でき、その後はスムーズに見学エリアに入れます。

夏場のピークシーズンでも、混雑が集中する11時〜14時頃の時間帯を避ければ、スムーズに購入・入場できる傾向にあります。

筆者が事前予約して訪問した感想

参考までに、筆者は「公式販売サイト(英語)」で事前予約をして訪問しました。2月のローシーズン、午後12時頃の訪問でしたが、チケット窓口には5人ほど並んでいました。

事前予約しておいたおかげで、当日にチケット窓口に立ち寄る必要がなく、そのまま見学エリアに入れたのは非常にスムーズでした。

もし窓口で購入していた場合は、5人分の待ちでおおよそ10分程度のロスがあったと思います。筆者の様にタイトなスケジュールで回る場合は、こうした時間を節約できるメリットは大きいと感じました。

スフォルツェスコ城の行き方とロケーション

Cairoli駅(カイローリ駅)

スフォルツェスコ城は、ミラノ地下鉄M1(赤線)のCairoli駅(カイローリ駅)が正面入口に最も近く、徒歩わずか3〜5分でアクセスできるため、公共交通機関を利用するならカイローリ駅が最も便利です。

また、ミラノ中心部のスカラ座からは徒歩約10分、ドゥオーモ(ミラノ大聖堂)からは北西方向に徒歩約15分でアクセス可能で、街歩きの途中に立ち寄るのもおすすめです。ミラノ中央駅からも、地下鉄(M3からM1に乗り換え)で約10分ほどでCairoli駅までアクセスできます。

その他の最寄り駅は以下の通りです。

  1. ①「Cadorna FN駅(カドルナ)」地下鉄M1・M2が乗り入れる駅で、城の西側に位置します。国鉄や空港シャトルの停車駅でもあり、徒歩約5分でアクセス可能です。

  2. ②「Cairoli駅(カイローリ)」地下鉄M1の駅で、城の南東側、正面入口に最も近い駅です。徒歩約3〜5分でアクセス可能です。

  3. ③「Lanza駅(ランツァ)」地下鉄M2の駅で、城の北東側に位置し、徒歩約5分でアクセス可能です。

スフォルツェスコ城のロケーションについては、以下のグーグルマップも参考にしてください。

スフォルツェスコ城の入口は、ミラノ中心部側から進むと正面に見える赤レンガ造りの塔門(フィラレーテの塔)が目印です。

スフォルツェスコ城の入口

この中央の塔門の下の通路をくぐると、奥に広がる中庭へと進むことができます。

こちらが塔門の下の通路です。

スフォルツェスコ城 塔の下の通路

この通路の横手には「Info Point」がありますが、チケット窓口ではないので、特に立ち寄る必要はありません。基本的にはそのまま直進して進みましょう。

通路を抜けると中庭に出ることができ、そこから各博物館へアクセスします。なお、中庭まではチケット不要で無料で入場可能です。

スフォルツェスコ城の中庭

地図で解説!スフォルツェスコ城の見学ルートと美術館の位置

スフォルツェスコ城の美術館は、① ロンダニーニのピエタ美術館と、城の美術館群の2つのエリアに大きく分かれており、どちらも共通チケットで入場できます。

スフォルツェスコ城マップ 0階(地上階)

地図には地上階の美術館と施設のみ記載しています。

美術館や博物館は上階にも複数あります。

見学はとてもシンプルです。まずは中央左側にある① ロンダニーニのピエタ美術館からスタートするのがおすすめです。ここは、ミケランジェロ晩年の未完成作「ピエタ像」を展示する静かな空間で、所要時間は15〜20分ほどです。

続いて、地図のピンクで囲まれた城の美術館群に進みます。館内の案内に沿って順路を辿れば、城内の美術館や博物館を一通り見学できます。地図の黄色ルートで進むイメージです。

スフォルツェスコ城マップ 0階(地上階)と見学ルート

地図中央上のカフェ近くにある入口から城の美術館群の建物に入り、地上階の② 古代美術館A アッセの間B 武器庫などを順に見学します。

さらに、1階(日本の2階)に上がると、③ アンティーク家具と木工彫刻博物館④ 絵画館を順番に見学します。その後、城壁を渡って移動し、⑤ 装飾芸術美術館⑥ 楽器博物館へ進む構成です。

スフォルツェスコ城マップ 1階(日本の1階)

最後に、2階(日本の3階)は、⑤ 装飾芸術美術館の展示エリアの延長部分となっています。

スフォルツェスコ城マップ 2階(日本の2階)

次項では、実体験をもとに、順路に沿って見どころや展示の魅力をご紹介します。

見どころ1:フィラレーテの塔と武器の中庭

スフォルツェスコ城のフィラレーテの塔

スフォルツェスコ城の見学ルートのスタート地点ともいえるのが、城の正門にあたるフィラレーテの塔と、門をくぐった先に広がる武器の中庭です。城の壮麗さと防御の機能美を感じられるこのエリアは、訪問者を最初に迎え入れる、まさに「顔」といえる場所です。

塔の高さは約109メートルを誇り、スフォルツェスコ城のシンボルとして訪れる人々を出迎えます。

スフォルツェスコ城のフィラレーテの塔

設計を手がけたのは、15世紀に活躍した彫刻家・建築家のアントニオ・フィラレーテで、その名が塔に冠されています。

塔の中央には、ミラノの守護聖人として知られる聖アンブロージョ(聖アンブロジウス)の像が据えられています。

聖アンブロージョ(聖アンブロジウス)の像

聖アンブロージョは4世紀にミラノ司教として市民に深く敬われた人物で、城の門を守るように鎮座する像は、城が単なる軍事拠点ではなく、ミラノ市民の象徴的な場所であったことを物語っています。

かつて城の周囲には堀(モート)がめぐらされ、敵の侵入を防ぐ役割を果たしていました。

スフォルツェスコ城の中庭

城全体の設計は、当時のヨーロッパで流行した星型要塞の形式を取り入れ、堅牢な防御機能と美しい景観を兼ね備えています。

フィラレーテの塔をくぐると、目の前に広がるのが武器の中庭(コルティーレ・デッレ・アルミ)です。この中庭は、かつて城内で武器の保管や整備が行われていたことからその名が付けられました。

武器の中庭

現在の武器の中庭は、広々とした開放的な広場として整備され、赤レンガと白い壁が美しいコントラストを描くフォトスポットとしても人気です。

武器の中庭

中庭を囲む建物の一部には、かつての兵舎や倉庫の跡が残されており、当時の軍事拠点としての役割を感じ取れる場所でもあります。訪れる人々はここで一息つきながら、城の壮麗な外観や四方を囲む回廊の美しさを楽しむことができます。

「ロンダニーニのピエタ美術館」へアクセス

「武器の中庭」から「ロンダニーニのピエタ美術館」へのアクセスは簡単です。「フィラレーテの塔」を背にして左手側に歩いていきます。

スフォルツェスコ城の中庭からの見学順路

後は建物沿いに左手奥へ進すんで行くとすぐに「ロンダニーニのピエタ美術館」の入口が見つかります。

スフォルツェスコ城の中庭からの見学順路

チケットは、入口を入ってすぐのエリアにあるチケット販売窓口で購入できます。ここで共通チケットを購入すれば、そのままスムーズに見学を開始できます。

見どころ2:ロンダニーニのピエタ美術館

フィラレーテの塔をくぐり、武器の中庭を左奥へ進むと、「ロンダニーニのピエタ美術館」があります。

ロンダニーニのピエタ美術館内のチケット販売窓口

この美術館は、ミケランジェロが晩年に取り組み、亡くなる直前まで彫り続けた未完成の傑作「ロンダニーニのピエタ」を展示するために、2015年4月に開館しました。私も現地で、入口に設置された案内板を頼りに館内へと進み、見学をスタートしました。

当日はあいにくの雨でしたが、幸いなことに並ぶこともなくスムーズに入場。私は事前に公式サイトでチケット予約をして訪問したため、窓口でチケットを購入する必要もなく、チケット販売窓口を横目に展示室へ進みました。

ロンダニーニのピエタ美術館のチケット販売窓口

ロンダニーニのピエタ像(ミケランジェロ作品)

展示室に入ると静謐な空間が広がり、中央には、背中をこちらに向けたロンダニーニのピエタが、訪れる人々を迎えるように佇んでいました。

ロンダニーニのピエタ美術館の展示室

このロンダニーニのピエタは、高さ約195cmの大理石像で、十字架から降ろされたキリストと、それを支える聖母マリア、さらにはニコデモとされる人物が彫られています。

ロンダニーニのピエタ像

本彫刻は未完成でありながら、粗削りの大理石の肌と、完成部分の繊細な彫りが同居し、晩年のミケランジェロの苦悩や信仰が滲み出るような迫力を放っています。

作品全体には、キリストの受難とマリアの慈悲が力強く表現されており、荒々しさの中に繊細さが宿る独特の美しさに圧倒されます。

ロンダニーニのピエタ像の部分写真組み合わせで比較

この美術館の特徴は、ガラスケースや柵がなく、来場者が360度好きな角度から近寄って鑑賞できる点です。私が訪れた時は、地元の小学生たちが社会見学で訪れており、設置されている椅子は子どもたちで埋め尽くされていました。

ロンダニーニのピエタ美術館の展示室

展示室自体はこぢんまりとしており、全体を一周するだけなら10分もかかりません。しかし、私は何度も角度を変えて眺めながら、この未完成の作品が放つ深い意味や美しさをじっくり堪能しました。

台座や素描資料

ロンダニーニのピエタ美術館の小展示エリア

メインの展示は言うまでもなく圧巻の《ロンダニーニのピエタ》ですが、展示室の左手側にはいくつかの小部屋があり、ミケランジェロの芸術の背景を感じさせる貴重な資料が静かに展示されています。ここでは、《ロンダニーニのピエタ》の「物語」をより深く理解できる展示が楽しめます。

古代ローマの葬祭用祭壇

ロンダニーニのピエタ美術館に展示されている古代ローマの葬祭用祭壇

展示室の一角には、かつて《ロンダニーニのピエタ》の台座として長年使われていた古代ローマの葬祭用祭壇が置かれています。この祭壇は、1911年から2015年春まで、ピエタ像の下に設置され続け、作品を支えてきました。正面にはローマ時代の典型的な浮彫が残されており、歴史の重みを感じさせます。この祭壇がどのように作品の印象を形作っていたかを想像しながら見るのも一興です。

初期案の素描に関する資料

ロンダニーニのピエタの最初期案とされる素描に関する資料

別の展示スペースには、《ロンダニーニのピエタ》の最初期案とされるミケランジェロの素描についての資料も展示されています。未完成の彫刻の持つ力強さと対照的に、ここに残された線描からは構想段階での繊細な意図や、彼の構想がどのように変遷していったのかを読み取ることができます。晩年の苦悩や試行錯誤を伝える資料として、深く心に残る展示です。

展示室の本体だけでなく、こうした脇の小部屋にも目を向けると、《ロンダニーニのピエタ》という作品の歴史的背景や、完成には至らなかったもう一つの物語が、静かに語りかけてくるのがわかります。限られた展示ですが、訪れた際はぜひ時間を取って眺めてみてください。

見どころ3:ロッケッタの中庭と城の美術館群

「ロンダニーニのピエタ美術館」の見学後、順路に沿って門を抜けると、まず現れるのが落ち着いた雰囲気の「ロッケッタの中庭(Cortile della Rocchetta)」です。

ロッケッタの中庭

この中庭は、スフォルツァ家の城内生活の中心的な空間のひとつであり、かつては家族や近侍が集い、日常の活動が行われたとされます。四方を囲む回廊と素朴な壁面が特徴的で、当時の城の生活感を今に伝える静謐な空間です。 美しい石畳の床や、季節ごとに表情を変える植栽が、歴史的建造物に柔らかな印象を添えています。

赤レンガの床とアーチが続く回廊は、落ち着いた静けさに包まれた空間。雨の日でもゆっくり散策でき、柱や天井に残る装飾を眺めながら過ごすのにぴったりです。建物の外観の美しさだけでなく、こうした細部にこそ歴史建築の魅力が詰まっています。

ロッケッタの中庭の回廊

中庭の回廊を歩くと、頭上には美しいフレスコ画が残る天井が広がっていました。

中央に太陽をモチーフにした華やかな装飾が施され、細やかな星々の模様が優雅な雰囲気を演出しています。長い年月を経ても、この空間に息づく歴史の重みが感じられる一角です。

ロッケッタの中庭の回廊

次の見学ポイントに進むには、右手側から「ロッケッタの中庭」を抜けて「公爵の中庭」方面へ歩いていきます。

ロッケッタの中庭の回廊

カフェを通過した先に「城の美術館群」の入口が見えてきます。ここから館内に入り見学をスタートです。

城の美術館群の入口

中に入ると右手側に「チケット販売窓口」があります。ここから見学を開始する方はこのタイミングでチケット購入も可能です。

城の美術館群のチケット販売窓口と見学開始口

既に「オンライン」や「ロンダニーニのピエタ美術館」で共通チケットを購入済みの方は窓口の立ち寄る必要ありません。奥のスタッフにチケットを提示の上で、展示エリアへとに進みます。

参考までに、筆者訪問時にチケット確認があったのは、このタイミングと最初のロンダニーニ美術館入場時の2回だけでした。

古代美術館

城の美術館群の最初の見どころが、古代美術館(Museo d’Arte Antica)です。

古代美術館

ここでは、ミラノの長い歴史を物語る彫像や墓碑、騎馬像など、中世からルネサンス期にかけての貴重な美術品が数多く展示されています。

まず目を引くのが、ゴシック期の彫刻家ボニーノ・ダ・カンピオーネ作と伝わる、ミラノの統治者ベルナボ・ヴィスコンティの騎馬像です。

ミラノの統治者ベルナボ・ヴィスコンティの騎馬像 - ボニーノ・ダ・カンピオーネ作

荘厳な雰囲気の中、力強く馬上に立つ姿は、この美術館のシンボルとも言える存在です。

続いてこちらは、6世紀に制作された聖アンブロージョを描いたタペストリー(通称「ミラノのスタンダード」)です。ミラノの権力と信仰を象徴する品々が並びます。

 6世紀に制作された聖アンブロージョを描いたタペストリー「ミラノのスタンダード」

この荘厳なタペストリーは、ミラノの守護聖人である聖アンブロージョの姿を通じて、当時のミラノの信仰と権力の結びつきを感じさせます。

この「古代美術館」は、スフォルツェスコ城の旧居住空間を利用して設けられており、見学ルートには、スフォルツァ家が暮らしていた当時の「壁や天井装飾が残る歴史的な部屋」も含まれているほか「武器庫」も隣接しています。ここからは、見学ルートに沿ってそれらをご紹介します。

アッセの間

アッセの間の天井装飾

城内見学最大の見どころの1つ「アッセの間」は古代美術館の一角に位置しており、古代美術館の見学ルートの途中に通過する形になります。そのため、古代美術館の一部とみなすこともできますが、特別な装飾や歴史的背景を持つ別エリアと考えるのが適切です。詳細については、後ほど改めて詳しくご紹介します。

公爵の間

公爵の間(Sala dei Ducali)

この部屋は、スフォルツァ家の公爵たちが使用した重要な空間です。天井には、青い背景に大きな太陽とスフォルツァ家の紋章が描かれています。
紋章は一族の力や威信を示す象徴であり、この装飾からもスフォルツァ家が当時いかに裕福で強大な権力を持っていたかが伝わります。

公爵の間の天井装飾

青地に大きく描かれた太陽は生命力や力強さを象徴し、ヴィスコンティ家と後のスフォルツァ家の両方が用いたモチーフです。その周囲に配置された4つの盾には、冠(王冠)が載り、スフォルツァ家の権威の象徴である蛇(ビスコーネ)の紋章が描かれています。さらに、盾の中には皇帝のシンボルである双頭の鷲も描かれ、スフォルツァ家が神聖ローマ皇帝と良好な関係にあったことを示しています。

コロンビーネの間

 コロンビーネの間(Sala delle Colombine)

この部屋は、壁や天井に小さな鳩(コロンビーネ)が描かれていることから「コロンビーネの間」と呼ばれています。もともとは「公爵の間(Sala dei Ducali)」に隣接する接続部屋で、ガードルームや待機室として使われていました。部屋全体は赤く塗られ、布で覆われているかのように見える漆喰の装飾が施されています。壁や天井には光を放つ太陽のモチーフとともに鳩が描かれていますが、傷みが進んでいてはっきり確認できるのは一部のみです。

武器庫とメディチ銀行の門

 武器庫

このエリアは、スフォルツェスコ城の「武器庫(Armeria)」として知られ、歴代の公爵や兵士たちが実際に使用した甲冑、剣、槍、銃火器などの武器が多数展示されています。武器庫の壁沿いには精巧な装飾のガラスケースが並び、当時の戦術や技術、そして公爵家の軍事力の象徴としての武具コレクションを間近に見ることができます。

さらにこの武器庫のエリアには、ひときわ目を引くメディチ銀行の門(Portale del Banco Mediceo)が聳え立つように設置されています。

 メディチ銀行の門(Portale del Banco Mediceo) class=

この門は、15世紀にミラノで活動していたメディチ銀行支店のために制作された石造りの遺構で、当時のメディチ家の経済的・文化的影響力を伝える貴重なものです。作者は、城の建築にも携わったアントニオ・フィラレーテの工房とされ、ゴシック後期からルネサンス初期の意匠が随所に見られます。戦いの象徴である武器庫と、経済力を示す銀行の門が同じ空間に並ぶことで、当時のミラノの力の両輪が伝わってくるようです。

公爵の礼拝堂と「マドンナ・リア」

 公爵の礼拝堂

この部屋は、かつてスフォルツァ家の人々が城内で祈りを捧げるために設けられた礼拝堂です。小さな教会のような空間で、ガレアッツォ・スフォルツァによって建てられ、外に出ずに城内で祈れるように配慮されていました。

礼拝堂の一角でひときわ目を引くのが、絵画「マドンナ・リア(Madonna Lia)」です。

マドンナ・リア(Madonna Lia)

この絵は、聖母マリアが幼子イエスとともに描かれ、背景には当時のスフォルツェスコ城が見える構図になっています。マリアは胸元で青と黄色のマントを留め、赤い服をまとい、頭には聖人の証である光輪が輝いています。足元の幼子イエスは、優しくマリアを見上げています。

この作品はレオナルド・ダ・ヴィンチの弟子であるフランチェスコ・ガッリの作とされ、かつての所蔵者であるアメデオ・リアの名にちなみ「マドンナ・リア」と呼ばれるようになりました。アメデオ・リアがこの絵を寄贈した際、礼拝堂という空間が絵の宗教的な主題とよく調和するため、この部屋に展示されたと考えられています。

当初はレオナルドの作品とされていましたが、後にガッリの作と判明しました。画風が師であるレオナルドに似ていたことや、裏面に修復の際に書かれた「レオナルド」の文字が誤解の原因だったようです。

以上、古代美術館の紹介は終了です。

古代美術館の展示エリアを抜けると、映像鑑賞スペースがあり、更に進むと、赤レンガの壁に囲まれた静かな井戸のエリアに出ます。

赤レンガの壁に囲まれた静かな井戸のエリア

苔むした壁や水音が響くこの空間は、ひっそりとした趣があり、城の歴史の深さを感じさせてくれます。

井戸のエリアから一旦建物を出ると、目の前に開放感のある「公爵の中庭(コルテ・ドゥカーレ / Corte Ducale)」が広がります。

公爵の中庭(コルテ・ドゥカーレ / Corte Ducale)

白壁と赤レンガのゴシック様式が美しい中庭は、喧騒から離れた穏やかな時間が流れているようで、思わず足を止めて深呼吸したくなる空間です。ぜひしばしの休息をかねて、この優雅な中庭の雰囲気も味わってみてください。

次の見学エリアである1階(日本の2階)の「アンティーク家具と木工彫刻博物館」や「絵画館」には、古代美術館出口すぐ横手にある階段からアクセスできます。

2階の展示エリアへと続く

ただし、次項では一旦「アッセの間」について解説します。

アッセの間 - サラ・デッレ・アッセ
(レオナルド・ダ・ヴィンチ展示室)

アッセの間(サラ・デッレ・アッセ / レオナルド・ダ・ヴィンチ展示室)

「アッセの間(Sala delle Asse)」は、スフォルツェスコ城北翼に位置し、現在は古代美術館の見学ルートの途中に組み込まれた一角にあります。

古代美術の展示を見ながら進むと突然現れるこの部屋は、ルネサンス期の芸術的空間として訪れる人を驚かせます。

部屋の名前はイタリア語で「板」を意味する Asse に由来し、かつて壁が木板で覆われていたことから名付けられました。現在では、ルネサンス期の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチが手がけた壮麗な装飾壁画で知られています。

アッセの間の装飾

この装飾は、1498年にルドヴィーコ・スフォルツァ公がレオナルドに依頼し、部屋全体を「庭園のような空間」に変えることを意図して描かれました。壁には桑の木の幹が連なり、天井には無数の枝と葉が絡み合ってグリーンの天蓋(ペルゴラ)を形成し、まるで屋内にいながら木陰に佇むような感覚を味わえます。桑の木はスフォルツァ家の繁栄を象徴しており、意匠には公爵の威信が込められています。

レオナルドが描いたペルゴラは、当時一般的だった装飾とは異なり、桑の木だけで構成された革新的な作品で、彼の卓越した観察眼と自然表現のセンスが随所に光る傑作です。

スフォルツァ家の紋章

天井のほぼ中央にある円形の意匠は、スフォルツァ家の紋章です。デザインとしては、スフォルツァ家が当時用いていた「蛇(ビスコーネ)」や、ヴィスコンティ家から受け継いだシンボル、王冠、十字などのモチーフが組み合わされているとされています。これは部屋全体がスフォルツァ家の権威と栄光を示す空間であることを強調するために置かれています。

屋内でありながら豊かな自然を感じられるこの部屋は、古代美術館の見学の中でも特に印象深いハイライトのひとつと言えるでしょう。

修復作業中の可能性があります

アッセの間は現在も修復作業が続けられており、壁画に残るレオナルドの筆致や下絵の調査・保存処置が進められています。筆者が訪問した2025年2月時点でも修復は続いており、現地の案内によると作業は2026年までかかる可能性があるとのことです。2012年から段階的に進められてきた高度な修復のため、見学が制限されている期間が長くなっています。訪問を検討されている方は、見学ができない可能性がある点にご注意ください。

アンティーク家具と木工彫刻博物館

アンティーク家具と木工彫刻博物館

この博物館は、歴史的な家具や木工彫刻を専門に展示する施設です。ミラノの有力な貴族やコレクターから寄贈された品々を中心に構成され、他の美術館ではなかなか見られない独特な芸術性を楽しむことができます。

アンティーク家具と木工彫刻博物館 展示エリアの景観

館内では、中世から近代にかけての貴重な家具作品が時代順に展示されており、テーブルや椅子、キャビネット、飾り棚など、それぞれの時代の美意識や職人技が反映された品々が並びます。

特に印象的なのは、バロック期の金箔装飾が施された豪華な椅子や、緻密な象嵌細工が美しいキャビネット、そして色彩豊かな現代デザインの家具など、古典とモダンが共演する点です。

アンティーク家具と木工彫刻博物館 - 、バロック期の金箔装飾が施された豪華な椅子

また、木彫の宗教彫刻も多数展示されており、キリスト教美術の中で木工技術が果たした役割も感じることができます。特に木で表現された磔刑像や祭壇装飾は、他の美術館とは異なる温かみがあります。

展示は時代ごとに区切られ、20世紀以降のモダンデザイン家具まで網羅されているため、デザインの変遷や文化背景を感じながら見学できるのも魅力です。館内の解説はわかりやすく、訪れる人にとってミラノの歴史と芸術の奥深さを新たな角度から知る貴重な機会となるでしょう。

「アンティーク家具と木工彫刻博物館」の紹介は以上です。見学エリアを順路に沿って進むと、次の見学エリア「絵画館(Pinacoteca)」の入口が見えてきます。

絵画館(Pinacoteca)」の入口

絵画館(Pinacoteca)

絵画館(Pinacoteca

スフォルツェスコ城内にある絵画館(ピナコテカ)は、ミラノの名家が寄贈した名作や、長年にわたり収集された貴重なコレクションを展示する、美しいギャラリーです。

中世からルネサンス、バロック期までの作品が並び、画家ごとの作風や時代背景の違いを楽しむことができます。壁面いっぱいに飾られた宗教画や祭壇画が並び、見応えのある空間です。

訪れると、展示室ごとにテーマや時代が異なり、聖人や聖母を描いた作品、自然や神話の題材を扱ったものなど、さまざまな表現に出会えます。ここからは、特に注目したい3作品を紹介します。

エルコレとアトランテ

絵画館の注目作品1 - エルコレとアトランテ

ベルナルディーノ・ルイーニによるフレスコ画で、もともとはミラノの宮殿の中庭の壁に描かれていたものを、保存のために壁から剥がしてキャンバスに移し、城の絵画館に移設したものです。描かれているのは、ギリシア神話の英雄ヘラクレス(エルコレ)とアトラス(アトランテ)が巨大な天球を支える場面で、力強くダイナミックなポーズが印象的です。色彩を抑えたモノクロームの技法で描かれており、その陰影と造形の美しさが際立ちます。

サン・ロッコの祭壇画

絵画館の注目作品2 - サン・ロッコの祭壇画

ペスト禍の時代、聖ロッコを信仰する人々のために、サン・ロッコ信徒会が依頼してチェーザレ・ダ・セストが描いた祭壇画です。 上段には雲の中に描かれた聖人たち、下段には緑豊かな自然の中に立つ聖人たちが配され、金箔をふんだんに使った装飾とともに、荘厳でありながら人々の祈りが込められた温かな雰囲気を持つ作品です。もともとはミラノ市内の教会にありましたが、後に城の絵画館に移されました。

栄光の聖母子と聖人たち

絵画館の注目作品3 - 栄光の聖母子と聖人たち

アンドレア・マンテーニャの傑作のひとつで、中央に座るマリア(聖母)が幼子イエスを抱き、周囲を雲に浮かぶ無数の天使の顔(ケルビム)が取り囲む荘厳な構図です。マリアの赤い衣と青いマント、イエスの首にかけられた赤い珊瑚のネックレスが、彼の受難と死の暗示として描かれているのが特徴です。左右には聖ヨハネ(ジョヴァンニ・バッティスタ)をはじめとする4人の聖人が配され、鑑賞者に深い祈りの心を呼び起こします。

レモンやオレンジの木、飛び交う鳥など細部まで生命力にあふれ、マンテーニャの卓越した技量を感じさせます。

絵画館の展示作品は時期によって入れ替えや配置変更も行われるため、訪れるたびに新しい発見があります。ぜひ足を止めて一つひとつの作品に込められた物語を味わってみてください。

「絵画館内」の紹介は以上です。見学エリアを順路に沿って進み、奥の扉から城壁を渡って次の見学エリア「装飾芸術美術館」へ移動します。

「絵画」奥の扉

「装飾芸術美術館」は「絵画館」と同じ「1階(日本の2階)」に位置していますが、反対側の西側の建物内にあるため、城壁を渡って移動します。

スフォルチェスコ城 城壁からの景観

白い屋根の建物は敷地内にあるカフェで、見学後の休憩スポットとしてもお勧めです。

城壁の通路は基本的に一本道なので、道なりに進んでください。

スフォルチェスコ城 城壁からの景観

装飾芸術美術館

装飾芸術美術館(Museo delle Arti Decorative)

装飾美術館では、絵画や彫刻のような大きな芸術作品ではなく、日常生活の中で用いられながらも美しく装飾された食器、ガラス器、家具、陶器などが展示されています。歴史的な時代ごとに、人々の暮らしや美意識がどのように表れていたかを知ることができるのが魅力です。

装飾美術館の展示品示

展示室は広々としており、天井の木組みや柔らかい照明が落ち着いた雰囲気を演出しています。ガラスケースの中に整然と並べられた展示物は、まるで一枚の絵のように美しく、訪れる人の足を自然に止めます。訪問時も多くの人が足を止め、ケースに顔を近づけて細部まで見入っていたのが印象的でした。

中央のガラスケースには、時代や国ごとに異なるテーブルセッティングの展示が並びます。ルネサンス期のシンプルな食卓や、フランス式の華やかなディナーセッティング、魚料理用のオーバル皿やスープを保温するための蓋付きカップなど、当時の人々の暮らしぶりや美意識を感じ取れる見どころです。

装飾美術館のテーブル展示

さらに展示室の一角には、旅行用のカトラリーセットやワイン用のデキャンタ、豪華な金彩の陶器などが並び、豊かな暮らしと高い美意識が細部にまで表れているのが印象的です。来館者もそれぞれのテーブルに見入り、時代ごとの違いや共通点を楽しんでいました。

こうした生活に根ざした展示の流れの中で、ひときわ異彩を放つのがこちらの作品です。

装飾美術館の注目展示 - カニ型の壺

巨大な海のカニを模した陶器の壺で、フェルッチョ・メンガローニによって制作されました。青緑と白の釉薬で彩られた殻や鋏、脚がリアルに表現されており、裏側には花を挿すための穴が設けられるなど、装飾性と実用性が見事に融合しています。近くで見ると、殻の突起や質感まで丹念に再現されていて、作者の卓越した技巧に感嘆させられます。

また、少し分かりにくいですが、装飾美術館の一部として、階段を上がった先には別室展示室として「トリヴルツィオのタペストリー」があります。

装飾美術館のタペストリー展示室

ここでは、ミラノの名家トリヴルツィオ家が所蔵していた壮麗なタペストリーが展示されており、当時の織物技術や貴族文化を垣間見ることができます。

装飾美術館のタペストリー展示室

「装飾芸術美術館」の紹介は以上です。見学エリアを順路に沿って進み、次の見学エリアは「楽器博物館」になります。

楽器博物館

楽器博物館(Museo delle Arti Decorative)

楽器博物館は、スフォルツェスコ城の見学ルートの後半に位置し、歴史的な楽器のコレクションを堪能できる空間です。ここにはピアノ、ギター、フルート、ヴァイオリンなど、さまざまな時代・地域の楽器が展示されており、視覚的にも美しい装飾が施された貴重な楽器が並びます。

楽器博物館の展示品

展示室は、整然としたガラスケースが並び、楽器ごとにテーマを分けて配置されています。例えば、ヴァイオリンだけのケースや、ギターだけのケース、フルートや管楽器のケースなどがあり、それぞれが持つ音色や構造の違いを感じながら見学できます。

さらに、展示の中には楽器が完成するまでの製作工程や、内部構造がわかる部品や型枠を紹介するコーナーもあります。

楽器の製作過程を示す展示

こちらでは、ギターや弦楽器の木枠や部品が並べられ、職人がどのようにしてひとつの楽器を形作っていくのかを垣間見ることができます。楽器の美しさや音色だけでなく、その裏側にある緻密な技術や手仕事への理解が深まる展示です。

この博物館の基礎を築いたのは、楽器収集家として知られるナターレ・ガッリーニで、彼が集めたコレクションが城に寄贈されたのが始まりです。後に、ミラノの著名な弦楽器職人一家・モンツィーノ家によっても貴重な楽器が寄贈され、現在の充実した展示が形成されました。

館内のガラスケースには、イタリア・ロンバルディアで製作された楽器から、遠く離れた異国の楽器まで、多彩な作品が展示されています。いずれも、装飾が美しいだけでなく、当時の職人技と音楽文化を感じさせるものばかりです。

楽器博物館の展示品

一部の展示にはQRコードが付いており、専用アプリをスマートフォンにインストールしてコードを読み取ると、楽器の音色や演奏動画を見ることができます。静かな展示室で、視覚だけでなく聴覚でも音楽の魅力を楽しめるのは、ここならではの体験です。

以上でこの建物練の見学は終了です。見学エリアの奥に「USCITA(出口)」の案内があるので、ドアの奥に進みます。

展示エリアの出口案内

階段を下っていくと「城の美術館」のチケット販売窓口があるスタート地点に戻ってきます。

「城の美術館」のチケット販売窓口

筆者の訪問時は改装中で見学できませんでしたが、地下1階には「考古学博物館」もありますので、時間に余裕のある方は是非お立ちよりください。

スフォルツェスコ城 見学の所要時間目安

スフォルツェスコ城全体をじっくり見学する場合の所要時間は、約2〜3時間が目安です。

一方で、範囲を絞って見学する場合の所要時間は以下の通りです。

  • 外観と中庭のみ見学する場合
    無料エリアの外観やフィラレーテの塔、中庭を軽く散策するだけなら、約30〜45分ほどで見学できます。

  • ロンダニーニのピエタ美術館のみ見学する場合
    ミケランジェロの未完成作「ピエタ像」が展示されているロンダニーニのピエタ美術館のみを鑑賞する場合は、15〜20分程度が目安です。

  • 城の美術館群だけを見学する場合
    少数派だと思いますが、古代美術館、絵画館、楽器博物館など、城の美術館群だけを回る場合は1時間半〜2時間程度。展示をじっくり楽しみたい場合は2時間ほどみておくと安心です。

なお、全エリアを駆け足で、大きな見どころ以外は立ち止まらずに回った場合でも、所要時間は最低1時間半ほどかかります。もちろんペース次第では、もっと短縮できる可能性はあります。

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